第33輝 傾動
改めて構え直した宝石の剣をレイドジェードに向けて、高らかに宣言する。
「魔法少女クレイアンブロイド。そこを
「魔法少女レイドジェード以下3名。お前の身柄を拘束する」
戦闘の開始を合図する宣言が終わるのと同時に俺とレイドジェードは地面を蹴り、互いの距離を一気に縮める。───っていうか以下3名て、戦闘開始宣言の省略とかありなの?
俺は剣を横に大きく構えながら。対してレイドジェードはフェンシングのように細剣を胸の前で地面と水平に構えながら互いに向かって走る。
恐らくレイドジェードは速さで俺を仕留めに来る。それを上回る"願いの魔法"の速さと力でねじ伏せればいい。
軽く目に魔力を纏わせ、レイドジェードの動きを視ようとすると、その後ろに回り込んだバルクガーネットがこちらに銃口を向けているのが目に入ってきた。
「えっ?!」
バルクガーネットの驚いた声がこちらに届くよりも前に、低めの位置で1つに纏めた特徴的な
「『光よ』!」
宝石剣を盾にしながら、剣を持っていない方の左手でレイドジェードに光を向ける。数瞬の目眩し程度の光だ。失明の心配は無い。
剣を盾にした瞬間、剣身のシルエットが若干ブレた気がしたが、そんなことを気にしている暇は無い。今は元に戻っているし。
レイドジェードが思わず目を瞑ったのを見て、その横を一気に走り抜け、レイドジェードを背にする。───その後ろでは、リリーアメシストがこちらに放とうとした魔法をキャンセルしていた。そのまま放てばレイドジェードを巻き込むからな。
走り抜けた勢いそのままに、今度はバルクガーネットの方に距離を詰める。
「セイ───!」
「あっぶッ?!」
胸の間から顔を出したリンの叫びを聞き、進んでいた体を一気に止めて、剣で体をガードしながら後ろに飛ぶ。───まただ、また剣身がブレた。
俺がそのまま進んでいたら通過していたであろう場所には刀を振り下ろしたリーテタンザナイトが佇んでいた。そのまま行ってたら危うく真っ二つだったんだが? 殺す気なの?
最初の俺を4人で囲むような配置は崩れたが、代わりに倉庫の出入口がある俺の前後に2人ずつで挟み込まれるような配置になってしまった。
横は壁に穴を開けない限りは逃げられないし───出れるとしたら上の穴だけか……出ようとした瞬間にバルクガーネットとリリーアメシストに撃ち落とされる未来しか見えないけど。
現状リリーアメシストが俺の方に魔法を撃っていないのは、俺が他の3人を背にして戦っているため
バルクガーネットも資料にあったような魔力を乗せた弾丸はまだ使っていない。味方を気にしてか、単純に心優しさ故に俺を撃てないのかは分からないが、その優しさに助けられているのも確かだ。───そんな優しい子に思いっきり攻撃を仕掛けたんですけどね。俺は。
軽く自己嫌悪に陥ろうとした思考を頭を振って打ち消す。
行き当たりばったりじゃダメだな、しっかり1人ずつ無力化するしかない。それに、さっきから宝石でできた剣の刃の形が歪んだり戻ったりするのも気になる───
出し惜しみしてる場合じゃないな……使うか。
まだ魔法少女になって2日目どころか1日目の戦闘初心者の俺と、少女とはいえ死なないために訓練をこなした魔法少女……受け身になれば、不利になるのはこちらだ。
軽く息を吐き呼吸を整え、剣を地面に突き立てて今1度願いを紡ぐ。
「『
本日3度目───リリーアメシストに壊された分も含めると4回目の俺の願いが体を駆け巡る。
「ここからの速度は、桁違い……だよ」
安定しない女の子口調を語尾に取って付けながら、俺は地面から抜いた宝石の刃を軽く撫でた。───俺がたった今思いついた仮説が、正しいのかを確認するために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます