第32輝 吉凶

「それで? セイ、ここからのプランは?」

「ん? ……あぁ、行き当たりばったりだよ」


 やっべ完全にコイツのこと忘れてた。いや、忘れてたとか言ったらまた拗ねるから言わないけど。


「───もしかして忘れてた? とか言いませんよね?」

「いやぁ! まさか!」

「えっ、なにこわ」


 ジト目でリーテタンザナイトにツッコまれてしまったが、あれ? もしかして妖精のこと見えてない?

 朝のリンの説明だと、俺が変身していないときは、男の近くに妖精とか精霊とかいるわけないから、そこを逆手にとって思考誘導してるみたいなことを言っていた。

 なら、何故今この子達はリンが見えない?


「まだ思考の誘導を?」

「───えぇ、そういうことです」


 怪しい……が、まぁいいか。今考えることじゃないしな。


「精霊……?」

「うん、そう。どうやら皆からは見えないようにしてるみたいだけど」


 と、リリーアメシストの驚愕したような声に返答し、改めてレイドジェードに意識を集中させる。

 恐らく、同じ近接型で、単純なパワーだけで言ったら御しやすいのはレイドジェードだ。ちょうど対角線上にいるリリーアメシストはそんなに強い魔法をこちらに放てない。


「リン、私から離れないようにしがみついてて」

「はい」


 女の子らしい話し方も練習しなきゃな……帰ったらやろ。帰れたら。


「───では失礼して」

「ん……ん?!」


 近づいてきたリンが、肩にでも乗ると思っていた俺は、掴みやすいように動きを止めてていると、リンは俺の衣装の胸当てを軽く引っ張り、それと胸の間に入ってきた。


「ちょ!? どこに入ってるの?!」

「いえ、ここが1番振り落とされないかなと」

「ひやぁっ!」


 だからってそこに入ることは無いだろ! 変な声出たんだが?! だぁ! 動くな! ふさふさして変な感じになるんだよッ!


「───くそ……覚えてろよッ」

「なにやってるの……?」

「あんまり関わっちゃだめだよバルク」


 かわいそうなやつを見る目で見るなッ、そこの新人の二人!

 ───あとでリンはお仕置きだ……妖精にどんなお仕置きが効くのかは分からないが、そこは後で考えることにする。


「はぁー……よし」


 猫のふさふさが変なところに入ったことで高まった鼓動を落ち着け、改めて気持ちを切り替えていく。


「もういいのか?」

「───あぁ、待たせたよね」


 律儀なやつだな、レイドジェード。攻撃するチャンスはいくらでもあったのに、わざわざ待つなんてな。

 っし、軽い手合わせ程度の気持ちで行こう。負けてもなんとかなるだろ。

 いつもの軽く考える癖が、ここで凶と出るか、吉と出るか。

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