第35輝 脅迫
「よし」
願いの魔法が体にいい具合に流れたことを知覚し、そろそろ動くかと軽く肩を回しながらリーテタンザナイトとバルクガーネットの方を向く。それと、2人の後ろの扉の方にな。
俺の後ろではレイドジェードとリリーアメシストが何か話しあっていたようだが生憎ここからでは会話の内容までは聞き取れなかった。
「どこからでもかかってきなよ」
「今度は外さないっ!」
軽く剣を2人の方に構えると、それに合わせてそれぞれの得物をこちらに向けてくる。
後ろから微かに魔力の揺らぎを感じたから、リリーアメシストが魔法を無効化する魔法の用意でもしているのかもしれない。
「後ろの2人に何か動きがあったら教えて───動くよりも前に終わらせるけど」
「了解です」
「じゃあ……行くよ」
軽く胸に収まったリンと打ち合わせしてから、移動。今度はさっきのSOの時よりも強めに願っている。あまり長時間は使えないが、この後にする行動か終われば直ぐに軽めのものに変えるし、元よりそんな長時間使う気はない。
「ッ───?!」
高速を超えた光速で、まずはバルクガーネットに近付く。遠距離攻撃は逃げる時に邪魔だし、何より人じ───ご協力願うのに、この4人の中じゃ最適そうだからな。
剣の腹を相手に見せるように体の正面で水平に構えながら剣身の魔晶石を撫でる。───俺の仮説が正しければ……いや、正しくあれ!
魔晶石とは魔法少女の心、そのものである。
なら、その心の持ち主たる俺がそう願えば、想えば、信じれば───望めば。きっとコイツは形を変え、俺の望む形へと変わるはずだ。
さっき俺がこの魔晶石でできた剣を盾にした時、コイツの剣身がブレたのは、俺がコイツに俺を守る盾となれと望んだからだと思う。自覚は無いが、実際2回とも俺は剣で攻撃を防ぐように構えたからな。
走り出してからこの間わずか0.2、3秒。刀を俺がいた場所に向けたままのリーテタンザナイトの横を閃光が如く駆け抜けてから、僅かに速度を緩めながら宝石剣の
───巻き付けッ! ……あっ、怪我させないように!
「えっ?!」
「ごめんね、ご協力お願いするよ」
一瞬でバルクガーネットの腕を縄のようになって拘束した剣から手を離して、腕の力が抜けた彼女が持つ銃をふんだくってから後ろに回る。
魔法少女の武器である魔法具は、他の魔法少女の物を借りたりしても問題なく使えると聞いている。───捕まえる側の武器を盗んで脅して……
「動かないで!」
───まぁ、誰も傷付けてないから許して欲しい。
「さぁ、私をここから逃がしてもらうよ。私もこの子を傷付けるのは本意じゃないんだ」
そうバルクガーネットのこめかみに銃を当てながら、他の3人に聞こえるように言うのだった。───どうか魔法少女たちのトラウマにならないことを願いながら。
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