第24輝 激痛
今日の授業が終わり、魔法省に顔を出してから帰るか───大抵顔を出すだけでは終わらない───と帰りの支度を進めていると、周りのクラスメイト達のスマホと学校のスピーカーがけたたましく鳴り始めた。
───SOだ。これは魔法省に顔を出したら最後帰れないかもな……なんて思ったが、魔法省に行くよりやるべきことができた。
スマホでSOが現れた場所を見ると、海の方、それも輸入品やらを一時保管する倉庫が立ち並んだ一角に現れたらしい。
───ここなら監視カメラも少ない。状況を正確に把握できるまで、魔法省の魔法少女も来ないはず。
訓練相手には絶好の物件だ。
「なぁ」
「はい。行きますか?」
周りに気付かれないように白猫に話し掛けると、白猫はすでにこちらを向いており、臨戦態勢ですと言わんばかりにシャドーボクシングをしていた。似合わねぇ。
「行きたいのはやまやまだが、俺、魔法少女への変身の仕方知らないんだけど」
そもそも昨日の1度しか変身したことがないし、その変身も意識がない時にいつの間にか……だ。
魔法少女に変身するには魔晶石を使うらしいとは知識レベルに知っているが、昨日変身を解除した時にそんなものは出なかったし、そもそもそれをどうやって使うのかも分からない。
変身中なら求めた知識が思い出すように頭に浮んだが、今はそれもない。
「───なら、人気の無い場所に行けますか? ここでは目立ちすぎるので」
「分かるのか?」
「えぇ、私はセイのサポートフェアリーですので」
そうか、ならちょうどいい。実戦経験を積むためにも、今からSO狩りと行こう。
どうせ明日まで使うことはないだろうと、ノートパソコンが入ったカバンごと個人ロッカーにぶち込み、走り気味に教室を後にする。
───途中、拓海に「愛しの芽衣さんのために頑張れよ〜」と言われたが、アイツは後でシバく。
◇
学校から出て向かったのは居酒屋が立ち並ぶちょっとした路地裏だ。
時刻は7時過ぎ。どこかの店の客になるであろう草臥れたリーマンも、まだこの時間は少ない……のか? それなりにいるな……まぁ、いいや。どうせ駅周辺は帰る人で溢れてる。駅とは反対側のこっち側の方が人が少ないのは確実だ。
人がいなさそうなところを探しながら幾つかの居酒屋の前を通り、店と店の間にある細い道を見つけた。
「あそこでいいか?」
「えぇ、大丈夫だと思います」
室外機と壁の間をすり抜けて、奥の方へと進んでいく。
変身したら真上から出た方がいいな。壁伝いに登るか? あや、普通に跳べばいいか。
「んで? 変身の仕方は?」
周りに
───白猫って呼びずらいな。なんか名前ないのか? こいつ。
「十字の下が欠けたような見た目の何か、持っていませんか?」
「十字の下が欠けたような? 逆にしたT字型ってことか? そんなの持ってな───」
と、言いかけた瞬間、手元に収まるように、刃のない
魔法少女への変身に必要なのは魔晶石じゃないのか……? これは……魔晶石には見えない。見た目は宝石と言うよりも金属製みたいだ。
「セイ、それの欠けている方をを胸に押し当ててこう唱えてください。『
「───『
言われた通りに唱えた瞬間、欠けた剣が胸に刺さるように張り付く。
「ッ───?!」
「あ、言い忘れていました」
胸に刺さった剣が、琥珀色の剣身と共に勝手に抜け始めるのと同時に、俺の全身に激痛が走り始める。───なんだよッ……聞いてねぇぞっ!?
「少し痛いと思いますけど、我慢してくださいね」
「ッぐ、あぁぁあああぁあ!!!!」
抗議の声をあげる暇もなく、俺の意識は何かがちぎれていくような激痛にかき消されてしまった───
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます