第23話 保険
そういえば、レイド先輩は新しい魔法少女に治癒魔法をかけて貰ったって聞いたっけ。
光系統の属性か……どんな子なんだろう。
自分の部屋のベットでゴロゴロしながらスマホで光系統の魔法少女について調べる。
───治癒魔法も使える光系ってことは、とても明るい優しい子なんだろうか。
スマホで調べた記事では光系統の魔法少女はみんな明るい子だったり、優しい子だと紹介されていた。
それと、先輩たちが苦戦したカニのSOが放った魔法を魔晶石で切ったとも聞いたっけ。治癒使いなのに? 意味がわからない。っていうか魔晶石って武器にできるんだ……
───1回会ってみたいなぁ。
芽衣さんが言うには、もう既に3等級程度の実力はあるらしい。魔法少女になってすぐにそれほどの力を持ってるのは珍しいらしいとも言っていた。
───魔法少女のだいたいのことは心に由来する。
使える魔法もそうだし、魔晶石の色とか形とか、それと単純に、魔法少女としての強さも。
一体どんな想いで、願いで、魔法少女になったんだろうか。聞いてみたいことは沢山ある。どうしたら、そんなに強くなれるのか、とか。
「はぁ……」
このまま晩ご飯までお昼寝でもしようかな……ご飯食べれなくなっちゃうかな。
外も薄暗くなってきた中、ベットの上でゴロゴロとスマホをいじったり、ゲーム機を付けてみたりしていると───それは突然鳴り始めた。
───ウゥゥウウウウ……
「SOだ」
急いで財布とスマホをカバンに詰め込み、魔晶石を身につけていることを確認して部屋の外へ飛び出す。
「お母さん! 早く逃げてね!」
魔法少女は基本4人1組。2人いない以上、多分、今日私と加蓮ちゃんが出動することは無いだろう。
それでも、魔法省にいれば、映像とかで見れるかもしれない。
レイド先輩とリリー先輩を助けてくれた新しい魔法少女の姿を───
◇
「え、レイド先輩? リリー先輩? なんで?」
家を飛び出してすぐに人気の無い場所で変身して、魔法少女の力で走って魔法省についてすぐ。
目に入ってきたのは、芽衣さんと出動待機室でブリーフィングを受けていたレイド先輩とリリー先輩だった。
2人はまだ入院中のはずじゃ……
「バルク。早かったね」
「リーテ?」
2人を困惑しながら眺めていた私は、入口のすぐ横で立っていた
「早かったねって?」
「あぁ、いや、ボクの電話も芽衣さんの電話も出なかったから」
「えぇ?!」
スマホよ出ろ! って念じ、変身前に身につけていたバックの中からスマホを出す。画面を確認すると、一面の着信履歴とメッセージの通知……
「変身してたから気づかなかったみたい……」
「まぁ、そんなこったろうと思ってたよ」
おでこを手で支えながら溜息をつく加蓮ちゃんに、ははは……と乾いた笑いで返しつつ、もう一度先輩たちの様子を見る。
「───レイド先輩は今回の作戦に参加するみたいだよ。ボク達も」
「え? でも、レイド先輩って入院してたんじゃ……」
「検査のためだったからね、もう退院したって。特に問題なかったらしいよ。むしろ古傷が治ってたから前よりも戦えるって言ってた」
新しい魔法少女の治癒魔法……か。
治癒魔法は聞いていた通りの、すごい魔法らしい。
「それで、なんでレイド先輩が? さすがに検査って言っても退院してすぐは戦闘には参加できないはずじゃ?」
「戦闘には参加しないって聞いてるよ」
「……どういうこと?」
「この前のカニのSOと魔人。あれの姿を見たのがボク達だけだから、何かあった時に戦闘中の魔法少女にすぐに連絡できるようにってことらしいよ。なんでも今回SOが現れた場所にカメラが無くて、本部からじゃ様子が分からないだってさ。ドローンは飛ばすらしいけど」
確かに、昨日あのSOたちを見たのも私たちだけだったって聞いた。住宅街で入り組んでいたし、監視カメラもそこまで多く設置できていなかったから、状況を把握できなかったらしい。
カニのSOや魔人が現れた時に危険性を直ぐに知らせることが出来る私たちが現場に行くのは当然といえば当然。
「だけど、退院してすぐのレイド先輩まで行かなくても……」
「なんだ、心配してくれるのか?」
いつの間に近くまで来ていたのか、少し高めの位置から掛けられた声に驚きつつ、そちらを見上げる。
「ホントに行くんですか? レイド先輩」
「まぁ、作戦だからね……大丈夫、私たちが戦うことは無い」
そういうことじゃないんですけど……と口に出さずに睨む。
そもそも検査だけだったとはいえ、退院してすぐのレイド先輩が出るのはおかしい。
直ぐに逃げた───けど、私だって見てた。カニのSOも、イルカの魔人もしっかり覚えてる。それにリーテだって見てたはず。なのにレイド先輩まで来る必要は───
「私が……弱いから?」
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