第5輝 感覚
「はっ、はっ───」
息を切らしながら暫く走ると、ついさっき見た無惨な姿のコンビニが見えてきた。
日頃運動していない俺は日ごろの運動不足を呪いながら、上がった息と共にコンビニの敷地の中に入っていく。
こんなことなら毎朝ジョギングでもすれば良かった。───そんな時間はなかったし、今更言ったところで後の祭りなんだが。
「あいつは追ってきてるか……?」
走りながら、SOの様子を確認しようと後ろを見た。
そういえば、背中を向けて走っているのに、1度も攻撃されていない。逃げている獲物を追うのが趣味なのか、それとも───
「なッ?!」
───そもそも、俺の背後にSOの姿はなかった。
もしや、そもそも追ってきていなかったのかと思ったが違う。走り始めた時、確かに奴が追ってくる足音が聞こえていた。
ならなぜ、今後ろに居ない?
後ろから追ってきているはずのSOが居なくなっていたことで、俺は思わず足を止めてしまった。
───それを待っていたかのように、紫の炎が俺の方に放たれる。
「っぐ───?!」
また、あの感覚だ。奴がお前を狙っているぞと、そこにいると危ないぞと、誰かが俺に囁くような、そんな感覚。その感覚に従って、横に体を投げ出す。
───すると、さっきと同じように、俺が寸前までいた場所の空間が切り取られる。
なんなんだ、この感覚は……それに、その感覚に反応して動ける体にも違和感を感じる。特別何かスポーツをやっている訳でもなく、少し走ればさっきみたいに息が上がる俺が、あんな一瞬の感覚に反応して体を動かせるわけが無い。
「ッ!」
また、紫の炎が俺の方に放たれ、それを俺は感覚に従って避ける。
この感覚に助けられているのは確かだ。これがなかったら今頃サイコロステーキだろう。
とりあえず、今はこの感覚に頼らせてもらおう。この謎の感覚については、ここから生き残ったら、帰ってからにでも考えればいい。
そう考えて、囁くような感覚に耳を傾けるように感覚を研ぎ澄ました瞬間。
「グギャァァァァアアアアアア」
「くッ───」
放った攻撃の尽くを避けられて逆上したのか、SOは大声を上げながら、その両腕のハサミを振り回し、紫の炎をこちらの方に連続で飛ばしてくる。
さっきのでも避けるのに精一杯だったのに、俺を囲い込むように放たれた斬撃になすすべもない。俺の体は見るも無惨な姿に刻まれる───
「かはッ……」
こんなにあっさり終わっちまうのかよ……ちくしょう───
薄れ行く意識の中、俺が最後に見たのは、切られた傷口から覗く琥珀のような宝石と、そこから放たれた暗い紺色の光だった。
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