第6惛/輝 姿形

 ───なぜだ。

 確かに、我の攻撃を尽くを避けられたにしては、まるでように逆上して放った斬撃であったが、只人ただびとが耐えられる斬撃ではなかったはず。

 それなのに、なぜ、胸に大きな傷を負う程度で済んでいる……? それに、その胸の中にあるモノは……


「グギギギ……」


 間違いない───魔石……

 先程、あの只人を切った瞬間に見えた光はあれの力か……

 ───只人という評価は改めよう。あれは正しく、我がここで倒すべき敵。


「グギャァァァァァァアアアアアッ───!!!!」


 かかってくるがいい、少年の姿形をした魔法少女。ここからは、全力でお相手しよう。

 の驚異になるようなら───排除する。





 許せない。

 少女が命を懸けて戦い、果てに命を散らせなければならないこの世界が許せない

 許せない。

 少女を兵器のように扱い、命をかけさせ、挙句の果てに使い捨てるようなこの世界が許せない。

 許せない。

 そんな世界に抗う力もなく、ただ、誰も命をかけなくていい世界を望むばかりで、何もできない自分が許せない。

 許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない───

 魔法少女が憎い。魔法省が憎い。

 憎い。

 命をかけた挙句、何も守ることが出来なかった■凛を殺した世界が憎い。

 ───■凛……?

 まぁ、いいか。

 あいつが……■凛が死んだから、魔法少女も魔法省もSOも憎いんだった。

 憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い

 俺に力を。復讐のための力を。


 ───ココロのツルギが、鈍く、昏く……くすんでいく。

 そうだ、この力が、あの時の俺にあれば……


 ───■■ことが■■■のに。■■たちを■■■しまう前に……


『それ以上はダメだよ、■■■』





「───ッは?!」


 どうやら気を失っていたらしい。背中に硬いコンクリートの瓦礫の感触がする。

 何か、悪い夢を見ていた気がする。どんな夢だったかは思い出せないが、何か……そう、ような……そんな夢。

 何かを殺したくなるなんて、普通じゃない……SOの攻撃を受けて、死の間際でうらみでも募ったのだろうか。

 ───ってそうだ、SOは?!

 体を起こし、周りを見渡すが、それらしいものはいない。

 もう既に討伐されたのだろうか……いや、ならなぜ俺はここにいる?

 SOが討伐されたなら、そこに居た───つまるところ一般市民は、検査のために専門の病院へと搬送される。俺がそのままここに放置されているわけが無い。

 というか、胸に大きな傷を負い、気を失っている一般市民を放置するわけない。

 ───と、そこまで考えて気が付いた。そうだ、気を失う前、俺はSOに切られ、胸に大きな傷を負ったはずだ、それこそ絶対に助からないであろう程の傷だった。

 ───恐る恐る、目線を下に向ける。

 見えてきたのは、傷───ではなく、どこかを思わせるような衣装───

 

 金青の衣服に腰から膝ぐらいまで伸びたマント、白銀の胸当てに手甲、脛当て、そして俺が無意識で握り続けていた金色の宝石から削り出したような抜き身の直剣。更に、俺の最悪の推測を裏付けるような───年端も行かぬ女の子のような姿形。


「な、な、な……」


 間違いない。この姿は紛れもなく……


「なんじゃこりゃあああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ───!!!!」


 ───魔法少女、と言うに相応しい姿だった。

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