木曜日
廊下を歩きながら手帳をぱらぱらさせるセーラー服が一人。透き通るような白い肌と、カラコンを入れていないとは思えない緑の瞳。真面目に手帳をつけている様子は一目置かれていた。皆はその子を「マワリちゃん」とか「マワリさん」とか、好きなように呼ぶ。
「生物の復習と、進路希望調査の提出と……」
確かに、傍から見れば勤勉な学生そのものだろう。やっぱりマワリさんは真面目ね、マワリちゃんはかっこいいね、とイメージをふりまいていく。今どき手帳でスケジュール管理というのも珍しい。しかし、人が思うよりもマワリは提出物を出し忘れるし、朝になって課題を急ぎで終わらせるというのもよくある。だから「学校用」とタイトルをつけた手帳を持ち歩く。この手帳はマワリにとって命の次くらいには大切なものだ。むしろこれがなければ社会的に生き残れない。つまり、手帳を使うのは単に脳でタスクを覚えていられないだけなのだ。
「も〜、なんでさっさとやらなかったの!」
しかも、面倒ごとを後回しにする癖がある。タスクの管理を試みるだけ真面目ではあるのだが、なぜかいつもこうなる。積み重なった「やるべきこと」を前にして、過去の誰かさんに恨み節を吐くのは日常茶飯事だ。昨日や一昨日にできなかったことが今日になればすらすらできるということがあるわけもない。少なくとも、マワリにおいてはない。だが、気まぐれなマワリにも今日こそやってやると思う日くらいある。今夜死ぬ気でやる。やるしかない。
「どーせすぐ死ぬんだから、死ぬ気でやるぞ!」
命短し励めよマワリ。生命というのは儚いのだ。人間の寿命というのはマワリが思うよりもずっとずっと長いのだが。
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