第2話 卵と親鳥
意思も希薄な子供のころを幻視する。
暑い夏。暑い、暑い夏。
子供のころの、まだ幸せであったはずの夏。
子供のころ。
幸せであるべき時代。
愛されて、苦労もない。
怖いことはあるかもしれないけど、そんなものからは親が周囲が大事に大事に守ってくれる。
生温かい、ぬるま湯の中で。
ゆらりゆらりと波に揺られ、幸せでなければならない時代。
幸せを中に詰めて優しさの殻で覆った卵。
幸せなはずなのに、幸せなはずなのに。
あぁ、外の喧騒が聞こえる。
笑い声が聞こえる。
呼ぶ声が聞こえる。
ここよりも幸せなところなんてあるはずないのに。
あぁぼくは、
惹かれてやまない。
だから、
雛鳥は世界の殻を破り、世界へ生まれていく。
そしてきっと雛は壁に出会う。
材質不明な壁。
雛はその壁を知ろうとする。
いつかその壁を理解したとき。
雛はどうするのだろう?
壁の切れ目を探し、当てもなく歩きはじめるのだろうか?
それとも、
その未成熟な翼と嘴で壁を越えようとするのだろうか?
選択は雛自身がする。
正解なんてない。
だけどだからこそ、
隣に誰かがいて欲しくなる。
その選択を支持してほしくなる。
だがやはり、それがだれかということも、
雛の選択の結果であるはずだ。
選択を拒むことはできない。
もう居心地のいいは壊れてしまったから―――
――――雛自身が壊してしまったのだから。
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