今まであまり仲良くなかったはずの幼なじみと何故か突然イイ感じになっちゃいます!? ~かしこかわいくてちょっと変な美少女タツミさんと付かず離れず青春ラブコメディな日々~
12月24日(土)イブは酔わせるタツミが絡む
12月24日(土)イブは酔わせるタツミが絡む
12月24日が何の日か知っているだろうか?
そう、我ら『ブラザーフッズ』の『二学期終了記念クリスマス・イブパーティ・ザ・カラオケ納会』の日だ。
午前十一時、我ら『ブラザーフッズ』は一人も欠けることなく、予約していた駅前のカラオケ店『カラオケドーム』のパーティルームに集合した。
もちろんフリータイムだ。午後七時まで計八時間、飲んで食べて歌って騒いでのてんやわんやとすったもんだとなんじゃもんじゃで楽しく気ままにやりたい放題できるわけだ。
とは言っても、そこはたかが高校生のお遊び、世間の風に晒され擦り切れ草臥れた大人たちとは違って、ハレンチな乱痴気騒ぎになどなるはずもない、至って健全な若さと青春の爽やかなパーティになる……と、俺は入店時まで思っていたのだが、
「じゃじゃ~ん! これ、なぁ~んだ?」
そう言って、タケウチが背中のやたら大きなリュックから取り出したのはまさかの
「おいおい、そんなもんマズいだろ……常識的に考えて」
俺は別に『良い子ちゃん』というわけじゃないが、さすがにそれはコンプラ的に問題があると思い、率先して諌めようとした。
ところが、
「おいおい、マツザキくんよぅ、最近テストの成績が良くなってるかと思ったら、あんた頭の中までお利口ちゃんになっちまったのかい? たかが
挑発的なタケウチ。そんな言われ方をされると、ちょっとムッとくる。俺は言い返そうとしたが、
「まーまーまー、マツザキよ。たかが
「そーそーそー、マツザキさ。たかが
イシカワコンビは俺を宥めつつタケウチを擁護する。
「いや、でもなぁ……」
チラッと女性陣を見た。驚くべきことに、誰も
「たまにはちょっとくらい悪いこともいいじゃない?」
なんとあの学力学年一位の真面目女子で清楚なトキさんまでもがタケウチに賛同しだした。
「今日初めて飲むわけじゃないし、外国じゃ、16でやるのも普通のことよ?」
ウンノはやっぱりウンノだし、
「マツザキくん、大丈夫だって! 冬休みなんだし、ちょっとくらいハメ外しちゃおうよ?」
タツミもやっぱりタツミだった。
俺はため息をついた。多勢に無勢、これ以上反対したところで勝ち目はない。『ブラザーフッズ』は意外とワルな集まりでした。
ま、俺だって別に『良い子ちゃん』じゃないわけだし?
というわけで、皆のコップに
「かんぱ~い!」
タケウチの音頭で乾杯した。皆一斉にグイッと
「ジュースみたいで美味しい」
トキさんが意外そうに言った。一口飲んだだけで、その頬が既に赤くなっているのは俺の気のせいだろうか? それとも寒い外から温かい室内に入ったせいか?
ちなみに
「うん、なかなかいいわね」
ウンノはなかなかペースが早い。女子高校生にしてそこそこ飲み慣れているらしい。末恐ろしい女の子だ。
「だろ? 親父のギッてきたかいがあったぜ!」
タケウチはにっこり、しかしその目がじゃっかんとろんとしてしまっている。こいつは意外と弱いらしい。
「ウマイウマイ」
「イケルイケル」
イシカワコンビも既に上機嫌。
「おいしーねー、マツザキくんも飲みなよ」
タツミは急須のお茶を飲むようなまったりと落ち着いて飲んでいた。
「飲んでるよ。たしかに美味いな」
俺はもう一口飲んだ。ほとんど
「じゃ、不肖タケウチ、一番槍を務めさせていただきます!」
タケウチは元気よくリモコンで曲をセットした。コップ半分しか飲んでないのに、既にその目とテンションが怪しかった。やつが入れた曲は俺たちが子供時代に流行ったアニメの曲で、誰もが知っていてノリが良くて、はしゃげるおバカなやつだ。
曲が始まり、タケウチが異常なテンションで熱唱、皆がワイワイ合いの手を入れる。楽しい時間の始まりだ。
一時間後、生き残っているのは俺とタツミの二人だけだった。後の五人は、たったコップ一杯の
俺とタツミは並んでソファに座っている。俺も多少は酔っているが、まだまだ全然平気だ。
隣のタツミは結構
「むぅ……私もうダメかも~」
そんな甘えた声を出したかと思うと、タツミは唐突に俺の肩に寄りかかってきた。遠慮会釈無く、俺に全体重を預けてきた。
「た、タツミさん……?」
ドキリ、と胸が高鳴る。皆がいるとはいえ、五人は泥のように眠っている。もはや二人きりみたいなもんだ。手を伸ばさなくても届く距離にタツミがいる。いや、距離なんて無い。完全なゼロ距離だ。タツミの体温すら感じられるし、何ならその鼓動すらわかりそうだった。
「マツザキ、くん……」
とろんとした目で俺を見る。艶っぽく唇が動いた。
「……ッ!」
あまりにイヤラシいタツミに、俺は思わず手を伸ばした。
そのとき、ふと、いつものタツミの笑顔が脳裏に浮かんだ。いつも可愛いタツミ。いつも優しいタツミ。いつもなんだかんだで俺のことを気にかけてくれるタツミ。いろんなタツミが俺の頭の中でフラッシュバックした。
いかん! いかんぞマツザキ! そんな可憐なタツミを、宵に任せて己が毒牙にかけて良いものか!? 否、断じて否! いいわけがない! 目覚めろ、俺!
もう一人の冷静な俺が、今の馬鹿げた俺を叱咤した。ハッとなって俺の手はタツミからわずか一センチの距離で、彼女に少しも触れることなく俺の膝に落ちた。
……危うかった。一抹の理性が残っていて助かった。もし、俺が
本当に何もしなくてよかった。ありがとう俺の理性!
ふーっと息を吐きながら、俺は自分で自分を褒めてやった。急に酔いも覚めてきた。その代わり、嫌な冷たい汗が背中に浮いた。
そんな俺の葛藤も知らずにタツミは、急に俺の肩に預けていた頭をずるずると滑らせて、そのまま俺の膝の上に着陸した。膝枕の形だ。そして薄目で俺を下から見上げ、
「どぅしたの? マツザキくん?」
なんて言いやがった。どうしたもこうしたもない。お前のせいで、俺がどれだけヤバかったと思ってんだ。危うくお前を傷つけるところだったんだぞ? ま、そんなこと言っても仕方がないな。そもそもそれは俺の理性の問題なんだから。ただタツミにも自己防衛はして欲しいものだが。
「……なんもないよ」
「ふぅん、そっかぁ……」
タツミはそう言うと、俺の膝の上でごろんと頭を回し、俺のリトルリョースケの方へ顔を向けた。
「おいおい、酔ってるのか?」
タツミは答える代わりに、思いっきり俺のリトルリョースケへと顔を埋めてきた。
「お、おいおいおいおいおい……!?」
規則正しく熱い吐息がズボン越しに吹きかけられる。俺の一部がホットホット! リトルリョースケが喜びに震え、力強く立ち上がろうとするのを俺をなんとか気合で抑え込む。ズボン越しとはいえ、硬く大きくなったリトルリョースケをタツミの顔にぶつけたりするわけにはいかない。
というわけで、強制離脱を選択した。俺はタツミの肩を掴んで無理矢理引き剥がそうとした。
「だ~め~……!」
が、タツミは舌っ足らずに言って、何故か俺にしがみついてきた。おかげでタツミの顔からリトルリョースケが離れたのはいいが、今度は身体同士が強く激しく密着している。柔らかいタツミの身体の特に柔らかいな膨らみが俺にぴったりみっちりがっちりと濃厚接触。
「お前、酔ってるな……!」
「ぜーんぜん、酔ってないですよーだ」
タツミの呂律が怪しい。なのに離れない。全然離れない。がっちりと俺をホールドしてくる。
「おいおい、離れろよ……!」
俺の口のすぐ横にあるタツミの耳元へ小声で言う。タツミとの濃厚接触は天国のような心地よさだが、そんなものに浸っている場合でもない。今は他の五人が死んだように眠っているからいいものの、起きてきてこの状況を見られたらなんて言われるかわかったもんじゃない。
「いーやーだー! はーなーさーなーいー! 私ーのーもーのー!」
酔ってるくせになんて力だ。本気で引き剥がそうとすれば怪我するかもしれないのでこっちとしては本気になれないのがジレンマだ。ある意味油断だらけ隙だらけのタツミは俺の膝の上に騎乗する形で抱きついて静止した。
リトルリョースケからタツミの顔面を引き剥がすという目的は一応達成しているが……。
と、瞬間、タツミの腕から力が抜けた。俺の耳元で熱い吐息混じりにタツミのウィスパーボイスが聞こえた。
「マツザキくん、来年は二人っきりで過ごしたいね……?」
そう言って俺に抱きついたままタツミは目を閉じ、くったりとなってしまった。健やかな寝息が俺の耳元でかすかに鳴っている。
「お前なぁ、人の気も知らないで……」
やれやれ……いや、本当にやれやれだ……。結局タツミは俺の膝の上に騎乗したまま眠ってしまった。しかし酔うとこんなことになってしまうのか……。全く、相手が理性的な俺じゃなかったら大変なことになってたぞ? そこんとこちゃんとわかってくれよ? タツミさん?
「お前は忘れてるだろうけど、その言葉、ちゃんと覚えておくからな」
お父さんに甘える女児のような格好で眠るタツミの背を、俺はポンと軽く叩いてやった。
「それと、後でちゃんと説教してやるからな」
もはや聞こえていないだろうが、一応それだけ宣言しておいて、タツミを皆と一緒にラグに寝かせてやった。俺も少し疲れたのでソファの上でぐったりとなった。
「あ~……」
深く息をついた。フリータイムはまだまだ残っている。開始早々全員お眠りになってしまったが、ま、こんなクリスマス・イブもたまにはいいんじゃないか、な……?
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