第72話 爆撃機が来ます

「師団長、空爆です、爆撃機が来ます。」


 2部長がそう言うと、3部長が


「レーダーに実機は映っていない、流石に考えすぎじゃないか?実施規定では実機をもって攻撃に替えるとなっているから、空爆想定です、では規定違反で無効化出来ると思うが。ましてや彼らが空軍と調整出来るとも思えない」


「違います、あの火炎放射器かえんほうしゃきは実の放射です、軽微ですが火災が発生しているのです、師団の防空指揮所の座標が評定されているのです、防空指揮所に砲撃が来ます。」


「いや、敵の砲兵は、まだ第一堡塁前縁だいいちほうるいぜんえんにかからない位置で待機中なんだぞ、それを砲撃なんて無理だろう。」


 そこに、新たな無線が入ってくる


「こちら防空指揮所、現在敵の砲撃ほうげきにより攻撃を受けています。」


 2部長の予感が的中した。

 しかし、三枝軍は、この1時間、一度も無線の電波を発射していない。

 師団は無線内容は傍受ぼうじゅ出来ていないが、2部の監視によって、無線の電波発射回数は把握されていたのである。


「一体、どうやって防空指揮所の位置を送っているんだ。」


 3部長があわてて確認作業を進める。

 師団長が苦笑いを浮かべる。


「なるほど、良い作戦だな。」


 2部長も気付いていた、センサー同士の戦いにおいて、なぜ本物の火災を発生させる必要があったのか、それは、防空指揮所の位置を遠くからでも煙で知らせるためである。

 彼らが仮に座標を評定していたとしても、砲撃の兆候を師団に知られれば意味が無いということだ。

 つまり、この後、更に何かが来るのである。


「こちら第3堡塁ほうるい、対空レーダーにかん機影きえいがこちらに向かって来ます。到達予想時刻、約10分」


 これにはさすがに司令部内も驚きを隠せなかった。


「やはりか、間に合わなかった。」


 2部長が悔しさをあからさまに表現した、なぜなら十分に予想出来ていたにもかかわわず、間に合っていないからである。


「3部長、大至急、陣前の部隊を要塞内ようさいないへ返してください、爆撃、来ます。」


 3部長も直ぐ察した、察したが、もはや間に合うはずもなかった。


「陣前突撃部隊は、速やかに要塞内へ引き返せ」


 陣前の部隊は命令の意味が解らないまま、城内へ引き返す準備を始めたが、時既ときすでに遅かった。

 三枝軍の航空機は、正確に陣前の部隊を捕捉ほそく投爆とうばくが開始された、もちろん本物の爆撃ではないが、システム上であってもこの爆撃はなかなかの迫力があった。

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