第4話ヴェレーノ侯爵
ヴェレーノ・ベレト侯爵、ジョンブリアンの髪とオリーブの瞳の優しげな男である。
ドルセイド王国国王の王弟であり、優秀な宰相閣下でもある。
そんな彼の目下の悩みは、実兄と甥の悪趣味である。
エイジプレイをマルガリータに強要しようとしていた、これを知った時ヴェレーノは頭が痛いどころか呆然とした。
マルガリータ嬢、本来はヴェレーノの婚約者だったがそれをあの馬鹿王が横取りしたのだ。
それでも当時は、歳の近い相手の方がいいだろうと身を引いたのだがそれがいけなかった。
あいつらはこともあろうか魔法薬、それも劇薬に分類されるものをマルガリータ嬢に飲ませた。
義姉上から相談を受けた頃には、マルガリータ嬢は錯乱状態で洗脳されていた。
あの傲慢馬鹿王子を優しいと錯覚していた。
可哀想なマルガリータは今も混乱しながら夜な夜なうなされている、薬が完全に抜ければ落ち着くだろうがそれももう少しかかる。
…
「いやぁぁぁっ、」
夜中になるとマルガリータは飛び起きることが多い、薬が抜けかけてきているせいか忘れかけていた記憶が蘇っているのだろう。
まあ、叫ぶだろうな。
オムツと涎掛けを付け、おしゃぶりを咥える第二王子など悪夢以外の何ものでもない。
「侯爵様、」
「怖がらなくていい、俺がそばに居るから。」
ヴェレーノは泣きじゃぐるマルガリータをベッドに運び寝かしつけながら、あの馬鹿親子への制裁に思考を巡らせた。
マルガリータは真っ暗な闇の中にいた、背後から誰かが歩いてくる。その顔に見覚えがあった、オムツをつけおしゃぶりを咥える第二王子と国王。
マルガリータは恐怖のあまりドレスの裾をたくしあげ走った、近づく足音に怯えマルガリータは涙を流しながら叫んだ。
「ヴェレーノ様っ、」
そこで目が覚めた、目の前には恐ろしい二人ではなく優しい目の婚約者がいた。
「また、怖い夢でも見たのか?大丈夫だ、おいで。マルガリータ」
誘われるがままマルガリータはヴェレーノの腕の中に収まった、ヴェレーノの心臓の音が心地良い。
恐怖心は消えていく、温かな腕の中なら怖いものは何もない気さえした。
…
「はぁ、全く。父上もあいつも碌なことしないな。ぼかぁ、忙しいんだけどなぁ」
相変わらず間の抜けたような喋りをする第一王子ミカロスは冷たい視線を国王と第二王子に向ける、第三王子のグレーヒットも忌々しいものを見るような視線を向ける。
「罪なき乙女にした数々の仕打ち、その身で償われるが良いでしょう。」
ヴェレーノ・ベレトは「毒泉」と呼ばれ恐れられている、それは彼のユニークプネウマからきている。
彼のユニークプネウマ「毒の泉」、彼は自身の体液を自在に毒に変えることができる毒人間である。
そして、彼の毒は解毒不可である。
第二王子と国王を見下ろし禍々しい凶悪な微笑みを浮かべ、ヴェレーノは「処刑宣告」を言い渡す。
「さぁ、覚悟はいいな」
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