夜道に光った道端の

草に落ちたガラス玉

いいや、それは紅のキャップか

拾ってみれば指に沁みる

冷えた指にも心はもえる

鏡台に向かい紅を出し

赤みの増しゆく唇を

湯呑を傾け視線をやれば

薄紅に染まる見慣れたえくぼ


底冷えのする夏の夜に

道端に落ちた模造石

いいや、それはセルロイドか

拾ってみれば指に沁みる

冷えた指先に懐かしい音

カリカリと紙擦れて

月夜の色の近況報告

煙をくゆらし横目に見れば

口から覗く赤い舌


明かりの減った夏の夜を

湿気った風が頬を撫でる

明かりの絶えた夏の夜を

周りに溶けた家路につく

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