第14話 忍び寄る魔の手
「よし!準備はいいかいデペカニス」
「ふん、生意気な、望むところだ」
「えーい、おりゃー、くらえー!!」
「どうした?まったく効かんな、そんな事では、チャンクリイ家の名が廃るぞ」
勢いに任せ力尽くで、ウトキは剣を振るう、知っている剣技は出し尽くした果てだ、その様子はもはや剣士としての戦いではなくなっていた。
「でぇーい、えーい」
「おいおい、俺はまだまだ半分も力を出していないぞ」
「はぁはぁ、これからだ、僕だってこれから本気を出すんだ」
「よし、それでこそラマゴスの剣士だ。ウトキよ、ひとつ教えてやろう…
己の内側から湧いてくるイメージのまま剣を振るってみるんだ、簡単だろ」
「内側から湧いてくるイメージ…」
ウトキは言われた通りにイメージに身を任せて剣を振るった、一振り二振り三振りと回を重ねるごとに、剣と自分が一体となり、世界が小さくも大きくも無く存在するまま、ただそこに在るという感覚になってゆくのがわかった。
「ここだ!!えーい」
下段から上段へ、稲妻が地面から天へ登って行くが如く、激しい光速の剣筋がブゥンと音を立ててデペカニスへ襲いかかった!
しかし、そこはデペカニスである、剣を一瞬で水平に傾けると、カキーンとウトキの剣を止めた。と思った次の瞬間。
「わちゃー!!!」
ウトキは、大きな掛け声と共に、止められた剣を真横にずらし、身体を前方へ踏み込み移動させると、その慣性の力と筋肉の収縮を合わせて増幅させたスピードとパワーで、デペカニスの喉元へ目掛けて渾身の突きを浴びせかけた。
(マ、マズイ、やられる!)
しかし、シュッ、とデペカニスの喉元の既のところで、剣はピタリと止まった。いや、止められたのだ…
まさに、青天の霹靂だった、ウトキの背中に一本の矢尻が刺さった。そのままウトキはデペカニスに抱き付くように倒れ込んだ。
「誰かー!誰か居らぬか!!!医者だ医者を呼んでくれ!!」
ウトキはなんとか一命を取り止めたが、全く意識は戻らず、三月が過ぎた。
その間、犯人はデペカニスの部下で、チャンクリイ家に怨恨を抱く者の仕業であると判明した、即処刑されたが、それでウトキが意識を取り戻すわけではない。
そして、この状況を重くみた国王トイフ・ラマゴス14世は、現最強剣士デペカニスを呼び寄せたのだった。
「デペカニスよ、チャンクリイの若いのはどうなっている?」
「は、未だ意識は戻りませぬが、
「そうか、だといいがな、しかしあまり考えたくはないが、意識が戻らないこともあろうと、朕は考えるのだが、その時はデペカニス、この国の治安は崩れ、目を覆うような現象が起こる運命なのじゃ、分かるな?これは起きてはならないことじゃ、確かお主の師匠は四聖ロイシ様と聞いておるが、ロイシ様によき智慧をお借りしてはどうじゃろうな」
「は、確かに目覚めないことも考えられなくはありません。しかしまだ幾つか目覚めの術がございます、まずはその術を試すのが得策かと」
「確かにそうだな、その目覚めの術とやら試してみるがよい。しかし、それでも助からぬ場合は、デペカニスよロイシ様のところへ行ってくれるな?」
「…は、はい、その時はそのように致します…」
「うむ、頼んだぞ」
デペカニスは、ロイシと聞いただけで気が滅入った。もう二度会うことはないであろうと思っていたからだ。
陰鬱な雰囲気を纏い、王の間を後にした。
「トイフ様よろしいのですか、ウトキ・チャンクリイが亡くなればこの国の治安がどうなるか…」
「案ずるな、死にはしない、チャンクリイの一族はそんなにやわじゃない」
ラマゴス城のバルコニーから、小さくなるデペカニスを見つめ、トイフ・ラマゴス十四世は頬杖をついていたのであった。
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