第12話 イルジキタ川の橋の上
ビュンビュン、カンカン、エイやー、オイさーっと、剣技は三年の鍛錬によって磨かれ、ウトキはデペカニスに次ぐ実力を身に付けていた。
「よし、今日はここまでだ」
「えー、まだ足りないよ、もう少しでなにか掴めそうなんだよ!デペカニスお願い、もう少し付き合ってよ」
「ダメだ、今日は用事があるんだ、すまないがまた来週だ」
「ちぇっ、どうせ怖気付いたんでしょ、最近僕がスゴイ強くなって、倒されるのが怖いんだ」
「ばーか、そんな口車には乗らないぞ俺は。しかしな、強くなったのは認めるぞ、でもあとひとつ足りないモノがあるな〜、それが一番の難題だ、ウトキに分かるかなぁ〜、ワハハ」
「くーーー!絶対分かる!!来週は絶対に一本取ってやるからな!」
「ほー、生意気な口叩きやがる、来週1本も取れなかったらウトキは一生俺の子分だぞ、約束できるか?」
「できる!!じゃあ僕が一本取ったら、デペカニスから最強剣士の座を頂くからね!」
「いいだろう、男の約束だ」
他愛のない口論に聞こえるかも知れない、しかしそれは違う。
二人は剣士だ、剣士同士の約束に偽りはないのだ、二人は剣先をピタッと合わせると、魂の底から誓い合ったのだった。
「フラエ〜、待たせてごめんなー」
「もうー、デペカニス遅いよー、なにしてたの」
「いやー、ウトキがしつこくてさー、なかなか離してくれなくてさ、逃れるための要らぬ約束までしてしまったよ、フハハ」
「そっか、でも間に合ってよかった、今日はその遅刻の原因ウトキ様の、誕生日プレゼントを引き取りに行くんだからね」
ラマゴス王国はいつだって活気がある、色とりどりの食物や品々を見て回るデペカニスとフラエ、年頃の男女が二人で一緒に街中を歩けば、楽しいに決まっている。
夕方のイルジキタ川の橋の上、用事を終えてひと段落した二人は、夕陽を眺めていた。
何を話していたろう、もう忘れてしまったし、思い出せなくてもいい、でも、二人は初めて口づけを交わした、それは絶対に忘れない。絶対に。
イルジキタ川 チャポンと魚は飛び跳ねて 波紋さらさら夕陽色
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