第11話 デペカニスとウトキとフラエ

 「おーーーーい!おいってば、おい!!起きろー」


 「うーん、ウトキー、フラエー、むにゃむにゃ…」


 「ジョチエスさまー、コイツ全然起きる気配がないよー、もうどうしたらいいのですかー」


 「気にしないのチーソン、ゆっくりお茶でも飲んでいればいいのよぉ、しかしほんとに懐かしいは、四聖の拡張エリアね、これが各四聖の特性を決めるのよー、いいわー、どうなるのデペカニス、ほらどうなるのー」


 (うんうん四聖と女王、ふたつの偉大な役目を数百年もやっていると、きっとストレス溜まるよなぁ、でもでも壊れてるジョチエス様も素敵だ、このチーソン、ずっとあなたを推していきますよー)


 今から20年前、当時ラマゴス王国最強の剣士イナリ・チャンクリイが魔族大戦で殉職したのち、その跡目は空白のままにされていた。ラマゴスでは代々最強剣士はチャンクリイ家が継承するもの、そうなっていたからだ。


 「こらー、ウトキ様ダメですよ!降りて下さい、危ないですし、今日は施設の皆んなと剣術のお稽古に行く日なんですよー」


 「いやだ、いやだ、稽古は行きたくない、あいつら僕のことイジメるんだ、絶対にいやー」


 「もうウトキ様ったら、いつまでも弱音を吐いて逃げていたら、チャンクリイ家の名に傷が付きます!そんな事では王国一の剣士にはなれませんよ!」


 「いいんだ、僕は剣士なんてなりたくない、ずっと家で寝て過ごしてる方が幸せなのー、あっかんべーっだ」


 「きーー、まったく誰に似たのやら…イナリ様とは、とても似ても似つかない陰キャ傾向、隙あらば寝転び、お菓子と漫画で怠惰に過ごすニート予備軍、どうすればいいの…」


 フラエが困っていると、そこに大きな体躯をした男が現れた。


 「フラエ、どうした?またウトキが弱音を吐いておるのか」


 「あっ、デペカニス様、助かります!毎週迎えに来ていただきホントにありがとうございます」


 「イイのさ気にするな、チャンクリイ一族がしっかりしてくれなければ、この国の治安は終わりだ、つまりウトキが立派な剣士にならねばならぬというわけだろう?」


 「はい、この国は不思議とそのように出来ているのです、政治は王家が執り行ない、軍事力及び武力の行使はチャンクリイ家が掌握。完全に政治と軍事は切り離された構図が王国の発祥から続いております」


 「ふん、それが今崩壊の危機、ってわけだ、ウトキがあのざまじゃそらそうなる、ただ…そのお陰もあって、俺が王国一の剣士を名乗っても誰にも文句は言われないんだけどな」


 魔族大戦後、争いに疲弊した各国は平和を求めて世界無戦争宣言を締結、この時全世界は奇跡的な無戦争状態にあった。

 その貴重な無戦争期間にデペカニスはラマゴス王国一の剣士を名乗っていたのである。

 

 『空白のチャンクリイ』と、後に言われる期間がこの時期である。

 そして、およそ三年半、最強剣士デペカニスの時代は続くのであった。


 「よーし、ウトキーーー!!!なーに逃げてる、すぐに捕まえてやるぞ、覚悟しろよーー!!」


 「いやーーーーーー!デペカニスなんてキライだーーーーー」


 「ふふ、元気がいいなあー、男の子は」


 なんだかんだ三人の仲は良好のようです。

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