第10話 デペカニスと四聖ロイシ。。

 モーウィン大森林の僅かな木漏れ日が、聖剣ウタマロを照らす穏やかな午後、紅茶を啜るジョチエスはにこやかに微笑んでいる。

 

 「おーーーーーーい、おいってば」


 「ロ、ロイシ様、むにゃむにゃ…」


 「ジョチエスさま〜、本当にこいつで大丈夫なんですか??突然寝込んで、全然起きる気配がないですよー」


 「安心しなさい、彼は四聖に適応するため覚醒幻旅かくせいげんりょの最中なの、あぁ、懐かしいは、私にもこんな初々しい時があったはね…ふふふ、ふふ、ぶわっしゃしゃー」


 (うわー、またジョチエス様お得意のお一人様のお遊びが始まった…けど僕はそんなジョチエス様も好きだな、チーソンは一生ジョチエス様推しです!)


 〜四聖とは陰と陽、天才と凡人、生と死、表裏一体のその両面の境界上で、この世に出現する〜

 

 『創造主セクウスは、無を入れる空に存在するが形は無い、交信はできるが声は聞こえない、命なきところで生きて我々を導くのである…』



 「よいかデペカニス、これから私が伝えることは決して他言は無用だ、もしこれが漏れでもしたらこの世のバランスは崩れ世界は破滅する、覚悟しろ」


 「はい!光栄にございます!」


 「よし、では後ろを向いて服を脱ぎなさい…」


 「えっ、服ですか…まさか、あの夜のようなことを…」


 「バカを吐かすな!!!これはそのような破廉恥なことではない!いいから脱ぐんだ、これは命懸けの儀式なんだ」 


 「はい!承知致しました!!」


 いつになく真剣なロイシに圧倒されたデペカニスは、言われるままに服を脱いだ。


 「うむ、では目を瞑りなさい」


 「はい…」


 ギュッ、ギュッギュッ、後ろからロイシは抱きついた。


 「はっ、ロ、ロイシ様、これは…」


 「いい、なにも言うな、感じるんだ、ただ感じろ」


 (うわー、デペカニス君の肌気持ちいいー、ヤバいこれ、癖になるかも…いや、ダメだあかんあかん違う違う、明鏡止水だロイシ、俺は四聖なんだ、間違いなど侵さん)


 (大丈夫かな、これってただ自分の欲望の為にロイシ様が楽しんでるんじゃないのかな、なんだかお尻の辺りに硬いの当たるし、やっぱり変態だなこの師匠)

 

 「よし、ゆくぞデペカニス!!」


 「はい!ロイシ様」


 ギュッ、ギュッギュッ、更に強くデペカニスを抱きしめたロイシは心で念じていた。


 (デペカニス君、だーいすき!大大大大だーいすき!!!!!)


 「ロイシ様、感じました…なんと尊い、なんと神々しい、なんと畏れ多き御心が私の魂に触れました!」


 「そうか、よかった、これでお前に伝える事は全て伝えた、この戦争も近いうちに終わる、そうなれば私は行かねばならぬ場所ところがある、そこにお前を連れて行くことは決して出来ぬのだ、だから今のうちにお前に伝えておこうと思ってな…さぁ服を着なさい」


 「そうだったのですね、とうとう別れが来てしまうのですか…」


 (よし!これで自由だ、やっと変態四聖から解き放たれるよー、しかもさっきになにも伝わってないし、ちょろいなコイツ)


 「うむ、恐らく来週には終戦の報が世界に告げられるだろう、そうしたら何も言わず私は出て行く、デペカニスお前はまずラマゴスに残り王国一の剣士なりなさい、そしていずれは諸国を巡り見聞を広めなさい、そうすれば眼に見えない大事なモノがこの世界にあることに気付くだろう、お前は賢く強く優しい子だ、必ずこの世の為になる剣士になる、俺が約束する」


 (ううう、デペカニス君めっちゃ悲しんでくれてる、おいたん嬉しいよ〜、別れたくないな、デペカニス君と一緒に暮らしたいのにー)


 互いの相容れない想いが、交錯し過ぎて絡みあったという、奇跡の瞬間であった。

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