第8話 デペカニスと四聖ロイシ
遡ること数十年前…
世界は魔族大戦末期の断末魔の極地、ラマゴス王国もその渦中にあった。
「デペカニス!デペカニスよ出て来るんだ!」
しゃがれた声の脂の乗った男、四聖ロイシである、今日は少し気がたっているようだ。
「そこにおるのはわかっておる、いつまでそうしているのだ、日が暮れては出発できんぞ」
「うっ、う…」
「なんだなんだ、泣いているのか…いいか?開けるぞ」
そう言って台所の奥にある倉庫の戸を開けると、幼いデペカニスの無垢な涙が床を濡らして、一面びしょびしょになっていた。
「まったく、お前は何をやっているんだ、さぁ行くぞ」
「うっ、う、はぁい」
ロイシとデペカニスの男二人の旅路。
お世辞にも楽しそうとは言えない二人の関係性ではあるが、それでもお互いの存在にそれなりの意味を見出しているようで、心底仲が悪いということはない、不思議な仲なのである。
「デペカニスよ、見えるか、あれがラマゴス王国だ」
「うわぁー、すごくキレイだ!」
青々とした山々に囲まれ、緑多く肥沃な大地に育った有り余るほどの穀物。
戦禍の国々や村々を旅して回る、今までの生活からはまるで違う世界が、そこには広がっていたのだ。
「ねぇ、ロイシ様、ここは天国なの?」
「天国か…違うな、桃源郷…いやそれ以上さ」
山々谷川を越え、漸く辿り着いたラマゴス王国、少年の眼はきらきらと輝いていたのであった。
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