第7話 妖精女王

 モーウィン大森林に住む生き物は多種多様だ。

 昆虫や鳥類、大小様々な動物達、川や水源には魚類も生活している、ここには永遠かけても数えきれない程多くの種類の生き物が生活している。

 

 それらを統べる役目というか、最古参というだけか、理由は諸説あるのだが、この大森林は長い間、妖精達が治めているのであった。


 「デペカニス君!な〜に日和ってるのさ、起こったことは前向きに受け入れておくれよ、なにか困ったことでもあるのかい?」


 「ふん、こんなガキに心配されるとはな…俺も昔はラマゴス最強の剣士と言われた男だ…やってやるよ、俺が新たな四聖になってやる!」


 「ふーん、なかなか物わかりがいいんだね、では早速始めようか!…と、その前に…」


 妖精は小さな杖でクルッと円を描くと、大きな楕円の鏡を現した。


 すると、その鏡からぼんやりと浮かび上がったのは、華麗なドレスを纏った何ともいえぬ美しい女性であった。


 「ご苦労様、チーソン。よくぞデペカニスを見つけてくれた、あとで褒美を遣わさそう、楽しみにしておれよ…」


 「やったぁー、ご褒美っご褒美嬉しいなー、ジョチエス様のご褒美だー、うへーい」


 「こら、チーソン、いい加減にしなさい。これからが本題なのよ、さぁデペカニスこちらへ来てごらんなさい」


 ジョチエスの声音と威厳のあるその高貴な振舞いにデペカニスは抗うことができず、呆然と姿見へと近付いた。


 「は、貴方様は一体…」


 「わらわはジョチエス、そなた達の言うところの妖精界の女王であり、四聖の一人でもある、とはいえ、四聖の仕事はここ数百年まったくしていなかったわね」


 「左様でございましたか。であればロイシ様とも親しき仲でございましょう…しかして、何故なにゆえこの私目を新たな四聖にとセクウス様はお考えになったのでしょう。」


 「そうね、それは貴方自身が一番理解出来ているはずよ。ロイシと貴方の関係を知らないとでも思ったのかしら?そうは思わないはずよね」


 「ん、ぐふっ…」


 デペカニスは糸の切れた操り人形のように両膝をついて、呻いた。


 「ふふん、どでかい図体の割に可愛いのね」


 モーウィン大森林の雑多に蠢く虫たちの生命の音は、デペカニスの耳には寂しき音色の抒情曲に聴こえたのであった…

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