第6話 希望

 闇深き漆黒の森、モーウィン大森林、このラマゴス最大の森林地帯には数多くの生物が息づいている。


 今、彼もまたその一人になって久しいのであった。


 「フラエ!なぜ!なぜだ!」


 バサバサと半狂乱で、なりふり構わず剣を振り回し、木々や草花を斬り倒すこと三ヶ月。

 

 デペカニスも突発制の精神疾患を患っていたのである。

 

 (俺はフラエのなんだ?フラエは俺のなんだ?昔のアイツは今のアイツと別人か?この瞬間もあんな事をしているのか?)


 やつれ切った顔に、陰湿なエネルギーがみなぎっている。


 そのエネルギーに引き寄せられた森の妖精が一匹、近くの巨木に隠れて様子を伺っていた。


 (まったく危ない奴だな、これじゃ近づけないな〜、早くしないとあの方に何されるかわからないっていうのに、もうこうなったら、危ないけど行くしかないな…えいっ!)


 「おい、そこの君!」


 「うん?誰だ、うむ…何も見当たらないな、気のせいか…」


 「やい、ここだよ、ここ!君の頭の上だよ!!」


 「なに!!何も見えんぞ、とうとう私も死が近いのか…」


 「おいおい、寝ぼけているのかい、頭の上に目はないよ。ヨイショ、コレで見えるだろ?」


 「おお、珍しいな、妖精か」


 「はー、またか…君達は勝手にそう言うけどさー、僕らは珍しくないから、君達の方が後から生まれた存在なんだからね!まったく」


 「ふん、何をかすか!先の魔族大戦の際はなんの協力もせぬまま、傍観しておっただけではないか」


 「はー、ほんとに君達ときたら…戦いほど無益な事などないって、いつなったら分かるのやら…」


 「ふん、知るか。それで腑抜け妖精がなんのようなんだ」


 「はぁ…はいはい、仕事だからやりますけど…君に天命が降ったんだよ、君みたいなヤツに天命がね」


 「なに、天命だと!創造主セクウス様の神勅!それが俺に降ったというのか」


 「そうなんだよ、僕だって信じたくないけど、どうやら間違いはないんだ…君は選ばれたんだ、四聖シセイロイシの後継者にね」


 「な、なに!四聖シセイロイシ!!まっ、まさかお亡くなりになったのか…」


 「死んではない、とはいえもう先は長くないだろうね…そして君が選ばれたんだよ、ロイシの後継者にね」


 「な、なんと…ロイシ様の跡をわたしが…」


 そう言って、デペカニスはゆっくり目を瞑り、俯いた。

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