幕間7 Stella


「……ねぇね……?」


「……だ、……大丈夫、だから、ね。痛くないよ、……ほんとだよ」


「ご、……ごめんなさい……アタシ、が……」


「違うの。違うの、イノちゃん。きっとみんな……返ってきただけなの」


「か……?」


「そう。……みんな、科学のせいなのね、きっと。イノちゃんから空を、フルールお姉ちゃんから希望を、……エトムント様から、命を。みんな……」


「ぅ……」


「……魔導科学はね、みんなが平等になるためのものだったんだって。魔法が使える人も使えない人も、不自由なく生きていけるために」


「でもね……今はそんなこと、ないね。煙と埃で汚れた空も、殺される竜も、ボロボロのクルーヴァディアも……。こんなことのために今までお勉強してきたわけじゃないのに」


「ねぇね……」


「……本当はね、もっともっとお勉強して大きくなったらね、お空を取り戻すための研究をしたかったの。お空だけじゃない、草も木も、綺麗な空気も……何百年もかけて壊しちゃったものをみんな。でも……」


「……どうすればよかったのかな。きっと……どうにかできたはずなの。魔法とその代用品が、どこかで交わる道があったはずなの。一人の力じゃ無理だったとしても、みんなで手を取り合えば。……どこで間違えちゃったんだろうね。……ごめんね、難しい話をしちゃったね。忘れてちょうだい」


「……アタシ、は……ねぇねが、いきてくれれば、それでいい、の……みんな、なくなっちゃっても、いいの……。ね、……いきようよ……いっしょに、いきてよ……」


「……ごめんね。でもね、また会えるの。嘘じゃないよ。イノちゃんにとってはきっと、そんなに長い時間じゃないから。次に会う時までには、そうだなあ……翼を貰ってくるからね、そしたら一緒に飛ぼう?」


「ほんと?」


「ほんと。これまでに一度だって、お約束を破ったことがあった?」


「……ううん」


「そうでしょう。だから、ね……」



「待っててね、ステラのこと」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る