ある踊り子の語り


「お嬢さん、ちょっといい? そう、そこの琥珀の瞳の君。

ボク? ボクはただの流浪の踊り子。今日この町を発つつもりだから、最後に君と話したかった。

どうしてか気になるって顔してる。それは君の肩を見たから。そう、その印。同じようなものがボクのお腹にもあるでしょ? これは君とボクと、どこかにいる皆との盟約の印。

……クルーヴァディアの、ね。

クルーヴァディア、きっと君は知らないね。……そこは忌まわしき灰色の大地、或いはボクらの大地。彼らがゼロに戻してしまったけれど。

君の国はこの国……そう、それもまた一つの正解。でも、それは君だけのもの。彼女のものではないし、ボクの中にはいくつもの正解がある。

おっと、少し難しい話をしてしまった。君に伝えたいのはもっと別の話。この国では大きくなったら皆修行のために家を出るんでしょ? その時に探してほしい、同じような印を持った者を。もう一つの正解はそうやって思い出すはず。

……さあ、ボクは北へ行かなくては。探している人がいるからね。……どんな人かって? 優しい人だよ、二千年経っても忘れられないくらい。

それじゃあ、またいつか。取り戻して、今度こそお別れしよう。

……ボクらのクルーヴァディアと」

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