第29話 邪神降臨
邪神エイワスの姿は『奇妙な化物』としか言いよう無い奇怪な姿をしていた。
全長は8m程で、その体は宙に浮いていた。
そして足に当たる部分にはいくつもの腕が折り重なって形作られた球体があり、その胴体はあばら骨が浮き出るほどのやせ細った男性の物だが、肩から先に腕が付いていない代わりに私の身長より大きいそれぞれ赤、青、緑、茶、金、黒の6色に彩られた手が宙に浮かんでいた。
そして、その頭はまるで山羊のような見た目をしており、率直に『悪魔』と表現するのがピッタリと来る見た目をしていた。
『オ、オオオォォォォォォォ!! なんだ、この不完全な肉体は! これでは、矮小なる人類とさほど変わらぬ出力しか無いではないか!!』
邪神がそう吠えた事で、『もしや私にも勝ち目があるのでは?』と希望を持った私は透かさず邪神エイワスの力を把握するべく『
邪神エイワス Lv.999
(能力情報)属性:星・神 疲労度:― 疲労補正:0%
体力:299,700/299,700 魔力:90,000/90,000
攻撃力:44,955 魔法力:49,950
防御力:39,960 俊敏力:34,965
(状態)
【疲労無効】【全状態異常無効】【弱体無効】【神域】
そうして基礎的なステータスを確認する事は出来たものの、魔法やスキルは全て文字化けしていて確認する事が出来なかった。
(強い……けど、戦えない程じゃない!)
覚悟を決めた私は直ぐさま『
だが、私の一撃を防ぐように宙に浮かぶ邪神の手(6つある中で赤い色をした物)が割り込んでくると、突然現れた目に見えない障壁のような物で私の一撃はあっさりと防がれてしまう。
(今の、たぶんそう言う事だよね)
冷静に状況を分析しながら私は直ぐに『
すると、やはり案の定金色の手が直ぐに魔法を防ぐように移動し、先程と同じように見えない障壁で魔法を打ち消してしまう。
(やっぱり! あの手の色に対応した属性の攻撃が無効化されるんだ! それに、ユリちゃんから聞いた話じゃ本来『邪神の右腕』ってボスがいるみたいだし、あの手もそれぞれ個別のモンスターだったりするのかも)
そう考えた私は先程『
邪神の左腕 Lv.999
(能力情報)属性:星・神(眷属) 疲労度:― 疲労補正:0%
体力:30,000/30,000 魔力:2,000/2,000
攻撃力:26,000 魔法力:32,000
防御力:27,000 俊敏力:24,000
(状態)
【疲労無効】【神域】【
(やっぱり思った通りだ。でも、こっちは本体に比べてだいぶ弱い! でも、(状態)に気になる名前が2つあるなぁ。とりあえず、予想が付く【
空中に浮いている6つの手の内2つがこちらに向けてそれぞれの属性に対応していると思われるビームを撃ってきたので、私はそれを回避しながら自身の考えが正しいかどうかを検証するために『
直後、既に黒色になっている1つを除いて5つの腕が光を放ち、一瞬でその色を黒へと変じる。
そして、放たれた闇の羽は闇属性への耐性を手に入れた6つの手だけで無く、本体に向かった物すら目に見えない障壁に阻まれて消えてしまった。
(うん、当然ながらこっちの属性に合わせて対応属性を変えてくるよね。それに、こちらの攻撃をあの手で防いでおきながらさっきは普通に本体への攻撃も無効化されてたし、たぶんあの手を全部倒さないと本体にダメージが入らないパターンなんだろうなぁ。そしてそう言うパターンの敵って、手を倒しても一定時間とか特定条件で何度でも復活してくるのがお約束だよね)
そう分析を続けながらも私は邪神から放たれる魔法を躱し、時々こちらへ襲い来る手の物理的な攻撃を神刀『三日月』や【戦技】スキルの『流水』で受け流していく。
(でも、この6属性対応の耐性って、私にはあんまり意味ないんだよね)
邪神の攻撃を何とか躱しきり、6つの手が本体の近くに戻ったところで私は邪神の全身をカバーする範囲で『エリアバースト』(指定範囲に魔方陣を展開し、上空に向かって魔力を撃ち出す技)を発動する。
しかも、(特殊技能)は本来任意の属性を付与することが出来る(私だけかも知れないが)のだが、その属性を指定せず無属性のまま発動し、当然ながら無属性への耐性を持たない6つの手どころか本体にもダメージが入る。
『ヌウゥゥ、小癪な!!』
憤怒の叫びと同時に振るわれた1つの手を『流水』で受け流しながら距離を取ろうと後ろに下がるが、それを見越していたように振るわれたもう一つの手により私の体は派手に吹き飛ばされながら1万ほどの体力を削り取られる。
そして、何とか勢いを殺しながら体勢を整えようとしたところを更に2つの手が襲い来た。
そのため、『
だが、先程の『エリアバースト』と合わせてかなり強力な技を打ち込んではいるものの、その6つの手もかなり高いステータスを持つためなかなか落としきれない。
(うーん、やっぱり一人だと手数が厳しいかな。でも『
そう決断した私は敵の攻撃を躱しながら【HP自動回復(極大)】で少しずつ体力を回復しつつも『
そして、視界に映る敵の体力ゲージがあと少しと言った状態になった所で再び『エリアバースト』を発動し、6つの手を同時に撃破しながら本体にも多少のダメージを与える。
『クッ、我が眷属を一時的に退けたところで無駄だ!』
邪神がそう叫んだ直後、6つの手が消滅した付近に空間の歪みが生じる。
そして、その歪みから大量の天使、しかも王城に辿り着くまでに相手した者より異形に近い形をしたものが大量に吹出してくる。
「なっ!? いくら何でも多過ぎでしょ!」
『さあ、我が
その号令と同時に大量の天使が私に襲い来る。
そのため、私は直ぐさま『
(やっぱりこの天使、道中で戦った個体より明らかに強い! 天使達の攻撃じゃ大したダメージを受けるわけじゃないけど、全くの無傷ってわけじゃないからこの数だし完全に囲まれるときついかも!)
私は背中に冷や汗が伝うのを感じながら、出来る限り魔力を温存しながらも次々と襲い来る天使達を排除していく。
だが、既に王城の上階は消し飛んでいるので王都の上空全てが戦場となっているとは言え、100を超える天使の群れに苦戦を強いられ邪神本体になかなか近付くことが出来ない。
(と言うか、この数の天使を対処するのに手一杯で本体を見失いそう!)
心の中で泣き言を漏らしながらも私は必死に天使達を対処して行くが、倒した数が30を超えた所で突然嫌な気配を感じて反射的に『蜃気楼』を発動する。
直後、いつの間にか本体の眼前に展開された複雑な魔方陣から一条の光が放たれ、夜闇に包まれる王都を昼間のような閃光が照らし出す。
そして、その光が収まると同時に凄まじい威力の衝撃波が発生し、閃光が通過した直線上の地上に存在する建物が尽く吹き飛ばされていった。
(あの威力…『蜃気楼』を発動してなかったら私でも一瞬で消し飛ばされてたかも知れない)
背筋がゾッとする感覚を味わいながらも、まだまだ相手にしなければいけない天使は沢山いるので直ぐに気持ちを切替えて戦闘を再開する。
だが、先程の攻撃がいつやって来るか分からない状態なため、天使達の相手をしながら本体の警戒も続けなければならず、私の精神力はジワジワと削り取られていく。
(ほんと、1体1体の強さは大したことないのに、この数はきつ過ぎる! 『ドラゴンブレス(極大)』とかフルチャージの『エナジーブラスト』を撃つだけの時間が稼げれば一気に数が減らせるのに! それに、本体に近付ければ専用魔法『
様々な思考と次々に襲い来る天使、それにいつ放たれるか分からない本体の大技に気を取られ、私はもう一つの脅威を完全に失念していた。
そのため、気付いた時には側面から凄まじい勢いで飛来した物体に殴り飛ばされており、そのまま勢いを殺せずに王城付近まで吹き飛ばされ、ようやく食らったダメージの4分の1ほどが回復しそうだったのにそれ以上のダメージを受け、残り体力を半分程まで削り取られる。
「ゴホッ! まさか…もう、復活したの!?」
私が視線を向ける先には先程倒したはずの6つの手が浮かんでおり、更に私に追撃を加えるべくその掌に魔方陣が浮かんでいるのを確認する。
そのため、私は直ぐさま『蜃気楼』を発動してその攻撃を回避するが、その時点で再度『蜃気楼』を発動出来るだけの技巧値を下回ってしまう。
そして、まるでそのタイミングを見計らったかのように本体の眼前に再び複雑な魔方陣が展開され、それは真っ直ぐに私の方向へと向けられていた。
(避けないと! でも、技巧値が無いなから『
もはや残された選択肢は『不屈』により一撃で命を落とさずに済む可能性だけだが、それでもその後来るであろう天使達による追撃を防ぎきることは不可能だろう。
そう私の心を絶望が支配した直後、再び一条の閃光が魔方陣から放たれ、私の視界を太陽の如き極光が埋め尽くす。
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