第14話 未だ自由は無く、然れど不満は無し
教皇様との面談以降、とうとう私は待ちに待ったレベル上げに着手する事を許されたのだが、それでもクロード神父の付き添いが可能な場合だけと言う制限の影響でそこまで急激にレベルが上がると言った状態にはならなかった。
クロード神父は思いの外多忙、と言うより4月からガブリエルさんがいなくなった上に後任もやって来ないので、現状かなりブラックな環境で業務に勤しんでおられるのだ。
そもそも、教会の業務が村の何でも屋と言った状態のため通常業務である周囲の魔獣警戒や危険な魔獣が発生した時の討伐と言った業務に加え、突発的に起こる村の問題可決も行わなければならない。
その上基礎学部へ通学が出来ない私に勉強を教えなければならないのでそこまで時間的な余裕が無いのだ。
しかし、最初の頃は当然ながら周辺警戒や危険な魔獣討伐に私を同行させる事でレベル上げをさせてくれるはずだから、ある程度頻繁に魔獣と戦闘を行えると考えていた。
だが、事はそう簡単には進まない。
そもそも、当然ながら周辺警戒はクロード神父1人で行うわけで無く、村の中でもそこそこ戦えるメンバーで結成された自警団(大体55レベル前後で最高が62だったと思う)が同行するのだが、勿論ながらこの自警団に所属するメンバーも私の事を薄気味悪がって同行を拒否されたのだ。
と言うか、この自警団メンバーはそこそこ戦えるからこそ余計私の異常性をハッキリと理解出来、他の村民より余計に私を恐れている節がある。
だが、それも仕方の無い事だろう。
そもそも、本来私くらいの年齢ではほとんどの場合が1レベルで全てのステータスが1桁なのだ。
そして、自警団に所属するメンバーは村の中ではそこそこ強いと言っても50レベル中盤での体力や魔力以外の平均ステータスは250くらい(魔法力は魔力適性の低い平民であるため高い方でも150くらいらしい)だと言う。
そん中で私のレベル上げ解禁時点、つまり8歳になったばかりのステータスで
レベル24 ※(+)は神刀『三日月』装備時の上昇分
体力:128 魔力:1,050 技巧値:200
攻撃力:376(76)+1,200 魔法力:1,126(826)+720
防御力:382(82)+240 俊敏力:428(128)
なのだ。
正直、自警団のメンバー1人と装備品である『戦神の祝福』のステータスがあまり大差無いどころか神刀『三日月』の上昇値より圧倒的に低いのだ。(ただ、ある程度の武装を行えば流石に自警団メンバーのステータスが上になるのだが。)
それに加え、普通は無属性と適性のある1属性しか魔法を覚えられないはずなのに私は光と闇の最上級魔法を扱い、基本4属性のどの属性にも変化できる見た事も聞いたことも無いような魔法が使えるし、習得しているスキルについても誰も知らない異質な物が揃い踏みだ。
もはやこれで恐れるなと言う方が無理な状態であり、そこについては私も逆の立場だったら絶対に近寄りたくない存在であるため諦めている。
だから、私のレベル上げは基本的に週1(しかも突発的な問題が発生すればキャンセルになる)しか行うことが出来ず、その1日分についても当然ながら終日と言うわけにもいかないので午前か午後に4時間だけと言った縛りが付いてしまったのだ。
当然この状態に私も思うところはあるが、それでも私はこの状態を受け入れざる得ない理由がある。
そもそも、今の私は未成年で職を得ることが出来ない(18で成人だが基礎学部卒業後、つまりは16になる年から働けるが)ため、完全にクロード神父に養ってもらっている状態だ。
まあ、一応魔獣を狩って魔石を集め、それを売る(魔石は魔道具の動力としてそこそこの値段で買い取ってくれる場所が有る)事で収入を得る事も不可能では無いと思うが、魔石の売買価格はかなり安い(魔石(小)で10円、(中)で50円、(大)で300円、それ以上の規格は専門の研究機関に持ち込みになるのでブルーロック村では売却不可能)ため、これだけで生計を立てるのはかなり厳しいだろう。
そんなこんなで始まった私のレベル上げだが、内容としては個人的に結構満足がいく物となっていた。
理由としては、クロード神父の指導が丁寧で分かりやすく、短時間でも効率的にレベルが上がるようにしっかりと計画が組まれているからだ。
レベル上げを始めた最初の日、私が連れて来られたのは村から徒歩数分程度の場所にある小さな森で、そこで発生する魔獣はどれもレベルが低くて脅威にならない代わり、経験値も1とか2しか入らない非常に効率の悪い狩り場だった。
だが、その森に発生する魔獣は非常に種類が多く、安全に戦いながら対人戦とは異なる魔獣の姿による動きの変化やそれぞれの特徴によって効率よく戦うにはどのように立ち回るのがベストかを指導され、それと合わせて魔獣の種類によって物理攻撃をすべきか魔法攻撃をすべきかと言った基礎知識を習得することが出来た。
そして、そこで得た知識を基に次は私のステータスを考慮して50レベル以上の強い魔獣が発生する狩り場に移り、更に高度な魔獣戦についての知識を学びながら短時間で効率良くレベルを上げ、そうやってどんどんと高レベルの魔獣と戦うことで12月になる頃には約6万ほどの経験値を稼ぎ52までレベルを上げる事が出来た。
正直、もう少しレベル上げの時間を取れればもっと一気にレベルが上がったのではないかとちょっとだけ残念に思うところもあるが、それでも4ヶ月と言う短時間にこれだけレベルを上げられたのはレベルに見合わない高ステータス、つまり装備のおかげだと言う事らしい(普通、高ステータスの装備は相応の重量があるため、基礎ステータスが低いと重みで動け無くなり凄い勢いで疲労度が上がるらしい)ので、普通では考えられないようなハイペースでレベルが上がっている点は素直に喜ばしい状態だった。
それと、そのレベル上げを行っていく中で色々と分かってきた事もある。
先ずレベルアップによるステータスの伸びだが、どうやら魔力がレベルごとに300の上昇が固定で、その他のステータスはランダムで決まるか何らかの要因で変動値が決まるようなのだ。
具体的に言うと、この28レベルで攻撃力と防御力は110程度増えているので平均的には4くらい増えている計算になり、俊敏力はパッシブスキルの『縮地』が影響しているのかそれよりも若干伸びが良く、魔法力は他と比べてダントツに伸びが早い。
ただ、この伸び率の差はもしかすれば魔法力の伸びが高いのでは無く私の肉体年齢が低い影響で他の伸びが悪いのかも知れないため、今後成長によってどう伸び率が変わるかしっかりと観察を行う必要が有るだろう。
それともう一つが私が持つ武器、神刀『三日月』についてだ。
この武器、どうやら装備者の体格に合わせて大きさが変動するだけで無く、レベルに合わせてステータスの上昇値が変動するようなのだ。
その証拠に、24レベル時点で攻撃力+1,200、魔法力+720、防御力+240だったのがレベルが上がるごとに攻撃力が50、魔法力が30、防御力が10上がっていき、52レベル現在では攻撃力+2,600、魔法力+1,560、防御力+520の補正が付くようになっていた。
正直、現状では私のレベルアップによるステータス上昇より神刀『三日月』の成長の方が早いと言うのは複雑な気分だが、きっといずれ私の上昇率がこれを上回ってくれるのだと我慢するしか無い。
まあ、前に見たプロメテウスさんのステータスから考えると恐らくそこまで急上昇する事は無さそうでは有るのだが。
そして、最後に判明した事実は【特殊】スキルについてだ。
私は、『
魔力を750消費して『
そして、それが【特殊】スキルのレベルを最大まで上げるために膨大な魔力が必要だと言うことを示しているのを悟り、このままレベル1のままで放置するか重点的に上げるかの選択を迫られることになる。
正直、『
しかも、作り出した箱は10秒ほどで消えてしまうし、敵の攻撃を防ぐ盾にするには強度は十分でもそこまで大きくないので使い勝手が悪く、結局相手に向かって飛ばして遠距離攻撃に使う以外の使い道が無いと言う微妙な性能の魔法だったのだ。
だが、私の性格的にレベル1のままで放置するのは我慢できず、結局一か八か大化けする可能性に賭けて『
すると、スキルのレベルが上がるのと同時に魔法のレベルも上がり、それに応じて作り出せる箱の大きさが大きくなり、同時に2つまで生成出来るように進化したのだ。
こうして、このスキルの可能性に賭けてレベルを上げ続けた結果、7,500の魔力(25レベル分の魔力)を消費し、私はついに『
【パッシブ】
【戦技】
1つ目のパッシブスキルは材料さえ揃っていれば技術や施設が無くてもアイテムを錬成できるスキルで、2つ目の戦技は一時的に水を酸に変換したり紙を鋼鉄に変えたりなどその物質が持つ特性を異なる性質に変換出来ると言った強力なスキルだった。
そして、スキルと同時に上がり続けた魔法の効果は無機物で簡単な構造の物で有れば最大10個まで同時に作り出せるようになり、生成してから消えるまでの時間も1分程度まで延びて消費魔力も360まで削減されたのだ。
こうして私は今後も積極的に【特殊】スキルを習得していく方針に決め、更なるレベル上げの意欲を高めて行く。
そして12月に入り、私は幸運にも数日間だけ思う存分レベル上げを行えるチャンスを掴むことになるだった。
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