第3話 フラフレは白いふかふかを経験する
「うぅぅぅん……」
もう何日も昏睡していたような気がする。
いつも寝起きはボケーーっとしている私だが、今回ばかりはすぐに目が醒めた。
「きゃーーーーっ痛い痛い痛い痛い!!」
「少し我慢したまえ、これは栄養補給の針だから!」
「そんなこと言っても……」
見たこともない場所で見たこともない太い針を私の左腕にプスッと一発おみまいされていた。
我慢しろと言うのは無理がある。
ここは地獄でこれが針地獄というものなのだろうか。
「はいはい、落ちつきなさい。しばらくすれば少しは元気になるよ」
「は……はぁ。あなたは?」
「リバーサイド王国の王宮直属主治医だが」
「おうきゅうちょくじょくしゅじー?」
難しすぎる言葉に思わず聞き返した。
すると、白衣を着ているお方がクスクスと笑みを浮かべてくれた。
どうやら、悪い人ではなさそうだ。
針はものすごく痛かったけれど。
「うむ、その可愛らしい瞳が見せられるなら正気はあるな。もうしばらく寝ていれば大丈夫だろう。このまま休みたまえ。陛下にも伝えておこうか」
陛下?
一体、どうなってしまったのだろうか。
私は確か、ハーベスト王国の王都近くの荒野で野垂れ死にをしそうなところで意識を失ったはず。
さっきのお方は、リバーサイド王国と言っていたような気がする。
陛下と言っていたけれど、リバーサイド国王陛下のことだろうか。
考えていても仕方がない。
改めて意識して横になってみると、地下牢で横になっていた感覚とはまるで違う。
「気持ち良いーー!! ふかふかーー!!」
何なんだこの白い布切れみたいなものは。
何なんだ身体の上に被さっているこのあたたかい物体は。
どれも馴染みのないものだがとても気持ち良い。
まるで眠気を誘うかのような居心地良さとふかふか感。
さっきは地獄かと思っていたけれどむしろ天国だ。
「むふふふふっふふ~~~~♪」
白いふかふかの上でごろんごろんしながらニヤニヤしていて、さっきの白衣のお方とは別のお方が私の側に来ていることに気がつかなかった。
「目を覚ましたようだが、これは何だ……? 変な薬を与えていないだろうな?」
「はっはっは……。ずいぶんとくつろいでいるようですな」
「ほえ!?」
見たところ年齢は私と同じくらいかちょっと上。
今まで見たこともないような、国宝級といっても良いくらいに整ったお顔立ち。
身長も私の顔一つ分は高そうで、やせ型ではあるものの、ピシッとした服装から盛り上がった筋肉が神々しく見える。
髪も綺麗な金色で無造作な前髪が一段と男前を引き出している。
さぞおモテになっていることだろう。
私はこれほどおモテになりそうなお方と、白衣のお方にとんでもない姿を見せてしまったようだ。
気まずい。
「気分はどうだ?」
「え、えぇと……、とてもふかふかで気持ち良いです」
「……そうではなく、キミの体調のことを聞いているのだが」
またしてもトンチンカンな答えをしてしまったようだ。
私は顔を真っ赤にしながらもう一度答える。
「そういえば……、吐き気は治っていますし、かなり楽になったような気が」
「ならば良かった。焦ったぞ。キミは一人荒野で倒れていたのだからな。その上何日も眠ったままだった……」
「もしかして、あなたが拾って助けてくださったのですか?」
「口の利き方に気をつけなさい。このお方はリバーサイド王国の王、フォルスト=リバーサイド国王陛下であらせられるぞ」
白衣のお方が少しばかり険しい表情で私に教えてくれた。
いきなり国王と言われても、理解が追いつかなかった。
他国の国王陛下が一体どうして私なんかに話しかけてくれているのだろうか。
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