第4話 フラフレはお腹がすいている
「王……様!?」
「主治医よ、気にせずとも良いのだ」
「ははっ仰せのままに」
お二方のやりとりを聞いていると、本当のようだ。
フォルスト国王陛下と呼ばれたお方は私のほうをじっと見ている。
その美しい容姿で視線を向けられるのはかなりキツい。
見惚れている場合ではない。
私も名乗らなくては。
「え……えぇと、助けていただきありがとうございます。私はフラフレといいます」
少し沈黙が続いた。
フォルスト陛下はなにかを考えているような表情をしていたが、やがて口を開く。
「……ふむ。改めて、私はフォルスト=リバーサイドと申す」
「先ほどから失礼なことばかり申し訳ありません」
「気にすることはない。国王とは名ばかりで周りの者達に助けられている新米だ」
フォルスト陛下の優しい言葉を聞いて、心の重荷と緊張がスッと軽くなった。
ジャルパル陛下だったらこうはいかず、少しでも問題があればすぐに制裁が待っていたのだ。
「ところで、キミはフラフレと言ったな。なぜあのような場所で倒れていたのだ?」
「えぇと……」
正直に言ってしまって良いものか迷う。
私は多くの人たちから恨まれている。もしかしたらこれは誰かの罠かもしれない。
この二人は決して悪い人じゃないとは思う。
それでも国王陛下ですよ、はいそうですかと信じることは難しい。
実はここがまだハーベスト王国内で、口を滑らせるか確認してる可能性すらある。
答えられずに困っていると……。
「もし言いづらいのであれば無理に答えなくても良い」
「お気遣いありがとうございます」
「ただ、これだけは答えてもらいたい。食事は摂れそうか?」
「へ?」
「腹は空いていないかと聞いているのだ」
言われた瞬間にお腹が、『ぐぅぅぅぅうううう~』と大きな音を立ててしまった。
私のお腹よ、勝手に返事しないでくれ!
「ふむ、食べられそうか。ならば食事の支度をしよう」
「助けていただいた上に食事まで良いのですか?」
「もちろんだ。ちょうど夕食時だから一緒に食べていきたまえ」
「夕食時? 私などが食べても良いのですか……?」
「……当たり前だろう」
私は、まるで別世界に来てしまったかのような環境の変化っぷりに驚いた。
先ほど心配していたことが、思い過ごしだったのではないかと思うくらいの優しさを感じる。
「あ、あの……フォルスト陛下」
「何だ?」
「ありがとうございます!」
「……なあに、当然のことだよ」
フォルスト陛下が私の顔を見ながらニコリと笑ってくれた。
この笑顔は、疑心暗鬼を全て吹き飛ばす不思議な力があった。
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