第34話 海よりも深い愛を探して いた、白馬の王子様4

「美少女戦士ことかがみんとは私のことよ。日室鏡です。宜しくお願いします。趣味は見ての通りコスプレです」


 美少女戦士のコスプレをした女性が一人。


「こ、こんにちは、坂下良子です。趣味は読書です」


 地味そうだが、堅実そうな女性がもう一人。少し緊張しているようだ。


「世界のヒロイン月城愛海です。白馬の王子様を探してます。趣味といった趣味はないけど、仕事で戦隊のショーをやっています」


 年が経っても変わらない愛海の発言に昴は苦笑いをする。


「山下赤司です。特撮ヲタです。特に好きなのは戦隊ものです」


 愛海と気が合うんじゃないかと思って、昴が誘った男性だ。美佐雄の合コンの時にもいた。


「白星拓也です。趣味は読書です。宜しくお願いします」


 白髪の青年だった。愛海のとしては少し抵抗があるようなないような微妙な気持ちになる。


「木村昴です。僕のことはいいですね。とにかく今日は楽しみましょう」

「「「「「「かんぱーい」」」」」」

「今回は多種多様な人選だね」


 赤司が昴に言った。


「ああ、前回は喧嘩になってたからな、その教訓だ」


 赤司と昴は大学の同期である。つまり赤司は桃(とう)大(だい)出身の超エリートだ。


「愛海さん、特撮やってるんですね、感激です。握手して下さい」


 赤司の目がキラキラしている。


「えっ、ああ、いいわよ。特撮というかショーだけどね」

「へえー、どんなショーなんですか」

「ミネラル戦隊って言う戦隊のショーよ」


 愛海がそう言うと、赤司が絶句する。急にしゃべりを止めた赤司にみなが注目した。


「感激です。本物のミネラル戦隊と出会えるなんて。道理で見たことあるなと思ってたんです。僕、ファンです。大ファンなんです。もう一度握手して下さい」

「あら、そうだったの。いいわよ。ところで、貴方はヒーローになりたくない」

「へっ、ヒーロー」

「私は私のヒーローになってくれる人にしか興味がないの」

「僕が、愛海さんのヒーロー・・・・・・」

「興味あるって言ったらどうなるんですか」


 と、黙っていた拓也が乱入してきた。


「それは――」

「ちょっと待って、二人とも愛海さんが良いわけ。私たちの立場はどうなるのよ」


 鏡も乱入してきた。


「た、拓也さんは読書好きなんですよね。話が合うと思ったのに・・・・・・」


 良子ももじもじしながら残念そうである。


「あ、いやいやいやたまたま愛海に話題が集中しただけで、そういうことではないよな。まだ始まったばかりだし」


 と、昴が場を仕切り直した。


「えっ、あっ、うん」


 赤司は頷く。


「いえ、どうなるのか興味があったので」


 拓也も昴の音頭に従った。


「じゃあ次は私の話、私は見ての通りコスプレイヤーよ。どう、今日のコスプレは」


 鏡が立ってポーズを取る。ミニスカがひらひらとして、普通の男なら目を奪われる光景だ。


「か、可愛いです」


 赤司が言う。ゴクンと唾を飲み込む音も聞こえてくるようだ。


「素敵だと思うよ。他にはどんなコスプレするの」


 拓也が聞いた。


「えっとね、ウサ耳猫耳犬耳何でもやるよ」


 鏡が手を頭につけてウインクする。


「へぇ―凄いね」


 拓也は興味があるのかないのか微妙な返事をした。


「お、男の人の服装もやるんですか」


 良子が質問する。


「あー、男物は範囲外ね。女の子限定かな」

「わ、私男の人のコスプレしたことあります」


 と、良子が意外なことを言い出す。


「おっ、まじか」

「コスプレなんかするのか」

「へぇー、見てみたい」


 男性陣から驚きの声が上がる。


「何、あんたもレイヤーだったの」


 鏡が話題を取られて少し不機嫌になっている。


「れ、レイヤーというか、コスプレ好きの友達に付き合って一度だけ」

「写真はあるの」


 昴が促す。


「はい、これです」


 携帯に映っているのは、某銀河大作アニメのヒーロー二人だった。目の前のおどおどしている良子からは想像出来ないほど生き生きとしている姿が映し出されていた。


「わお、男前」

「へー良く出来てる」

「格好いい」


 男性陣から感嘆の声が上がった。


「ふーん、た、確かに、なかなかね」


 明らかに自分よりしっかりしたコスプレを見て鏡はたじろいだ。


「そう言えば、良子さんは読書好きなんだよね、何読むの」


 拓也が聞いた。


「あっ、はい。わ、私は恋愛小説をよく読みます。あの、拓也さんは何読むんですか」

「あっ、僕。僕は何でも読むよ。ライトノベルが好きかな」

「ライトノベル。じゃあ異世界転生とかですね。私も読んだことあります」


 自分の好きな話題だからか、おどおどした感じが消えている。


「あっ、そうそう。色んな種類あるけどどれも面白いよね」

「俺、本読まないから全然ついていけない」


 赤司が話題に入るタイミングを見るが、見つからずにぶーぶーいう。


「さて、と。そろそろ頃合いかな。今日のお座敷は何と、マッチング機能がある机を選んでます。皆さん目の前のボタンを見てみて下さい」


 昴が皆にマッチングの説明を始める。見ると、それぞれの前には三つのボタンがあり、それぞれ1、2、3となっている。


「数字が書いてあると思います。合図があったら数字を押して下さい。数字の人はそれぞれ、1が赤司と愛海、2が拓也と鏡、3が俺と良子になっています。気になる異性の数字を押すだけです。すると矢印が男性の方から伸びていき、半分を過ぎたところで女性の矢印が出てきます。お互いの矢印がぶつかったら、晴れてマッチング成功です」


 そう言って、昴がスイッチを押すと、軽快な音楽と共に開始の合図が流れた。


「では、どうぞ」


 それぞれがそれぞれの思いでボタンを押す。


「ではまず一番、赤司から」


 昴がそう言うと、矢印が動き出した。矢印の方向はどうやら愛海に向いていた。半分のところで赤司の矢印が止まる。しかし、赤司に向かう矢印はなかった。


「赤司君、残念。次は拓也」


 拓也の矢印も愛海の方へ向いていた。半分のところで矢印が止まる。すると、愛海からの矢印と良子からの矢印が向かっていった。良子の方は半分のところで止まり、×マークが付き、愛海の方は拓也と交わってハートマークが点いた。


「おお、おめでとう。拓也と愛海でマッチングだね。さて、最後に俺だけど」


 昴の矢印は良子に向かっていく。そして、半分のところで止まり、今度は鏡の矢印が昴の方へ向かっていった。


「まあ、こうなるよな。ということで、マッチングは愛海と拓也の二人だけでした」

「宜しくね、愛海さん」


 拓也がにっこりと笑って言った。


「白馬の王子様になりたいという貴方を信じるわ」


 愛海は一方で真剣な様子で言った。

 このあと、もう一度だけ残りの四人でマッチングして、鏡と赤司、昴と良子がマッチングした。そして、頃合いを見てその場はお流れとなった。

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