第26話 海よりも深い愛を探して 白馬の王子様を見つけるために

深い深い愛を知るため

私の冒険始まった

深い深い海の底来て

愛の塊見つけたけども

最初は気付かず知らんぷり

他にも見つかる愛は偽物

私はもう一度戻ってきて

その塊を持って帰った

大事に大事に持って帰った


  障害者ってなんだろう。愛海は時折そんなことを考える。なぜなら、自分自身が時折障害者だと言われてきたからだ。でも、自分じゃ周りの人との違いはわからない。わからないのに、他と違うってされてしまう。愛海にとっては訳のわからない言葉だった。

白馬の王子様を公然と追いかけていた時は、良くガイシャかよって言われてきたが、ここ最近では言われなくなった。最近はあまり口にしなくなったからだ。

つまるところ、そこが分岐点なのか。そんなことを思う。正直、愛海にとっては意味がわからないものだ。言わなくなっただけで、心の中で想いはしているからだ。つまり自分の本質は変わっていない。なのに口に出したか出さないかで決まるその言葉に、愛想を尽かしていた。


「きゃー助けてー」


 いつもの仕事、いつもの風景。そこはショーの舞台だった。愛海はいつも通り助けを呼んだ。しかし、そこには前のような覇気は無い。半ば棒読みになっていた。


「お前を切り刻んで味噌汁のだしにしてやるー」


 怪人の口調が少し厳しいのはその愛海の演技に対してだ。


「「「「そこまでだ」」」」


 そう言って、戦隊達が飛び出してくる。


「なんだなんだ」


 と、その前に怪人がお決まりの驚きを見せる。そしてレッドが入ってきた。


「愛と平和の使者ミネラルライト」


 今回はイメチェン回だ。


「地球を守る青い稲妻ミネラルビッグライト」


 ブルーである。


「明るい未来を守るミネラルスモールライト」


 イエローだ。


「新緑の浄化ミネラルグリーンライト」


 グリーン。


「恋愛探偵屋ミネラル真実はいつも一つ」


 そして愛海である。相変わらず棒読みだ。


「「「「「「五人揃って、ミネラル戦隊ウオーター」」」」」


 そう五人で叫ぶと(一人は叫んでいないが)爆発音が鳴るのだった。


「な、何だってーって待てーい」


 いつも通りの怪人の突っ込みが始まる。


「悪しき怪人め、成敗してくれる。覚悟」


 レッドが襲いかかる。


「ちょ待てって」


 怪人が一蹴する。


「どうした。何故闘わないんだ」


 ブルーが言う。


「おかしいからだ」


「どこがおかしいのよ」


 イエローが聞く。


「どこもおかしくないわ」


 グリーンが続ける。


「そうよそうよ」


 愛海が便乗する。・・・・・・棒読みで。


「まずお前からだな、よし。全部だ。全部おかしい。だがまずはお前がおかしい」


 怪人が愛海に向かって言う。


「どこがおかしいのよ」


 愛海はもっさりと真顔で言う。


「何だそのテンションは。お客様に対して失礼だろ」


 怪人が突っ込む。


「しょうがないじゃない。テンション上がんないんだから」


 愛海が言い訳する。


「お前はそれでもプロか。何があったか知らんが、しゃきっとせい」


 と、怪人が愛海のお尻を叩く。


「ちょっと痛いじゃない。セクハラよ」


 愛海が怒って抗議する。


「じゃかわしい。その元気を出せ、元気を。次は胸揉むぞ」


 怪人が愛海に襲いかかる。愛海は胸を守りながら。


「わかったわよ。元気出せば良いんでしょ、元気出せば」


 愛海はやけになってそう言った。


「悪しき怪人め、成敗してくれる。覚悟」


 レッドがまた襲いかかる。


「まだおわっとらーん」


 レッドが一蹴される。


「なんだまだあるのか」


 ブルーが言う。


「しつこい男は嫌われるよ」


 イエローだ。


「豚骨ばっか食べてるからそうなるのよ」


 グリーンが言う。


「余計なお世話だ」


 怪人が反発する。


「いいから早く言いなさいよ」


 愛海だ。


「うん、良いだろう。お前らその格好なんだ」


 怪人が格好に突っ込む。見ると、それぞれスーツは来てなく、基本的にライトを持っている。


「探検家だ」


 とレッドが言う。


「照明係」


 続いてブルー。


「のび子ちゃん」


 イエロー。


「信号機」


 グリーン。


「探偵屋よ」


 愛海が言う。


「おかしいだろう。どう見たって正義の味方じゃないだろう。なんだ探検家って」

「探検家が正義に味方だと悪いのか」


 レッドが抗議する。


「いや、まあ。探検家はまだ許せる。なんだよ照明係って。モブキャラ全開じゃないか」


「照明係がヒーローになっても良いだろう」


 ブルーが怒る。


「良くなくはないが、まあいい。なんだっ、のび子は。主人公ではあるが、ヒーローじゃないだろう」

「映画だとヒーローになるときもあるわ」


 イエローが説明する。


「何が映画だとだ。で、もう人じゃないんだが。信号機君よ」

「信号機ちゃんよ」


 グリーンが言う。


「なんか言い訳せぇや。で、お前は何だ。お前だけライト持ってないじゃないか。仲間はずれじゃないか」


 そう言われて愛海は持っている虫眼鏡を強調する。


「だからそれは虫眼鏡であってライトじゃない。なんだ、間違えたのか」

「きゃ」


 愛海は顔に手を当てて恥ずかしそうにする。


「アホかおんどりゃ。こんなヒーローか馬の骨かわからん奴らと戦えるか」


 怪人はそう言い放った。


 目を合せる戦隊達。


「じゃあどうすればいいんだ」


 レッドが聞く。


「もっとヒーローだってわかる格好をしろ。この前の赤青黄色でよかったじゃないか」

「もっとヒーローらしくすれば良いんだな」


 ブルーが言う。


「もっとヒーローらしくね」


 イエローも。


「わかったわ。首を洗って待ってなさい」


 グリーンがそう言った。


「今度は間違えないわ」


 愛海が言う。


「よし、変なことすんなよ。じゃあな」


 怪人がそう言ってショーが終わった。

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