第19話 素晴らしき愛をもう一度 アドバイス3
所変わって、再び病院。愛海がおじいちゃんのお見舞いに来ていた。
「おじいちゃん」
「おおー、愛海か、元気かの」
「うん、元気だよ。おじいちゃんは」
笑顔で駆け寄る愛海。愛海はおじいちゃんっ子なのだ。
「元気じゃとも、今すぐにでも退院したいわい」
そう言って、力こぶを見せる仙人。
「うん、早く一緒にまた山で遊びたいね」
「そうじゃのー、やはり仙人は山におらんと誰も信じてくれん」
山の脱出ゲームは愛海の変わった性格をいち早く危惧した仙人が考えて作ったものなのだ。これでいて仙人はお金持ちである。
「おじいちゃんは立派な仙人なのにね」
愛海はふへへっと笑っている。
「どうも、失礼致します。仙人様、血圧測って宜しいですか」
美樹が定期巡回でやってきた。まだ仙人の血圧が測れていなかったようなので、測りに来ている。
「ああ、美樹さんか、どうぞ」
仙人が笑顔で迎えた。
「美樹……ってあっ」
見覚えのある言葉と声に看護師の顔を凝視する愛海。
「えっ、あっ愛海さんでしたっけ」
二人はひょんな再会をした。
「ああー、うん。看護師さんだったんですね」
愛海は少し気まずそうに話す。
「秀彦さんのご家族の方だったんですね」
「わしゃ秀彦ではない、仙人じゃ」
うっかり秀彦と言ってしまい、仙人が激怒した。
「ああー、仙人様怒らないで、血圧が上がっちゃう。また、後で測りなおしですね」
美樹が気を落としながら機器を片付ける。
「おじいちゃんは仙人様だよ」
愛海が仙人と一緒に抗議した。愛海も度々聞かされていたのだ、みんな仙人のことを仙人扱いしないと言うことを。
「あっはい、すみません。そう思って接しているのですが」
美樹は申し訳なさそうにそう答える。
「虐めてないでしょうね」
愛海がきっと睨んだ。
「とんでもない。虐めてなんていませんよ」
美樹が手を振って否定する。が、
「どうしました」
最悪のタイミングで最悪の人物が来た。咲だ。
「この人がおじいちゃんを虐めてるんです」
愛海が話を歪曲して伝える。
「えっ、いや虐めてなんか」
否定するも、
「どういうこと、美樹さん」
当然の追及を受けてしまう。
「みんなわしのこと虐めてくるんじゃ」
仙人も混じってくる。
「こう言ってるよ」
愛海が咲に訴えかけた。
「ご家族からと本人からの訴えがあるみたいだけど」
「それは、仙人様の思い込みで」
美樹は必死に言い訳をする。
「思い込みなどではない」
仙人が怒鳴り、
「おじいちゃんを怒らせないで」
愛海も怒鳴った。
「ごめんなさい」
勢いもあって、美樹は謝る。
「この件は上に報告しますね」
咲が残酷な宣言をした。
「こんな出来損ないと付き合うなんてみーちゃんも見る目ないわね」
美樹は何も返せなかった。
「じゃあ、もう帰る。じゃあね、おじいちゃん」
愛海は笑顔で仙人にそう言った。
「おう、元気でな」
仙人の穏やかな声が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます