第46話:怒りの日
「生まれた! 生まれました! お館様! 元気な男子にございます!」
「おおぉ! ラインミール! 頑張ったなぁ! そうか、男子の世継ぎが、生まれたんだなぁ!」
「はぁ、はぁ……ありがとう。生まれてきてくれて……」
「ラインマーグ、男子が生まれたらそう名付けると決めていた。ラインマーグ! 大地のような、どっしりと、誰かを支えられる男になれよ!」
僕は怒鬼族でも武闘派の族長の子として生まれた。生まれてすぐは、父も母も、産婆も、僕の異常には気づかなかった。
僕が1才になって、父の人間の友が、僕の家に訪ねてきた時、僕の異常は分かった。父の友は、赤ん坊の僕を見て、固まった。呼吸が荒くなり、顔を紅潮させた。そして父の人間の友は、僕に襲いかかろうとしたらしい。
父と母は、この時、僕に強い魅了の呪いの力があることをすぐに理解したらしい。父は友を止め、落ち着かせて、事情を話した。
怒鬼族は、時折、強い魅了の呪いを持って生まれてくる者がいると、友に説明した。
そして、そうした魅了持ちは、必ず天賦の才を持っているのだと。父は嬉しそうに友に語ったと言う。だから父は期待した、僕が立派な武人になることを。
僕が3つになると、武人としての教育が始まった。最初、父は年相応の試練を僕に与えた、しかし、僕はそれを軽々と乗り越えてしまう。だから、もっともっとと、父はより過酷な試練を僕に与えた。
だけど、どんな試練も僕を立ち止まらせることはなかった。4つで獣を殺した。大きな牙を持つ地竜、大人でも狩るのに危険がつきまとうそれを、僕はあっさりと殺した。
6つで父を超えた。父どころか、僕の住んでいた集落に、僕より強い人は、もういなかった。
7つで家を追い出された。父は僕の世話係をしていた侍女のトランダークを旅のお供としてつけた。お前が成長するには外の世界に出るしかないから。それが僕が家を追い出された理由だった。
あの時の僕は正直、戦うこと以外はまるで知らなかったから、トランダークがいてくれて助かった。
僕が旅立つ時、父から仮面を貰った。目の所が赤い宝石で出来ていて、仮面を着けた状態だと、人からは奥にある瞳は見えない。逆に着けている側はちゃんと見える。遠くまではっきりと見えた。父は早い段階で、僕が家を出なければ力をつけられなくなると分かっていた。だから外に出て、怒鬼族と出会っても、問題なく生活できるようにと、仮面を用意してくれた。かなり高価なものだったらしい。
旅立って最初、僕は父と母と姉達が恋しくて泣いていた。だけど、侍女のトランダークがいたからなんとか耐えられた。
そう7つ、僕はほとんどの時間を父と母でなくトランダークに育てられた。殆ど親のような感じだった。親と子、というだけの関係性ではなかったけれど、僕を支えてくれた大切な人だった。
僕の旅は強者を求める旅だった。強い魔物がいればそれを倒しに行くという旅だった。特に誰かの依頼で魔物を仕留めに行くでもなく、単純に力を求めて戦いにいった。
強い魔物は大抵、人々を襲い、迷惑をかけていたから。結果的に感謝されることも多かった。
ある時、盗賊団と傭兵団の戦に巻き込まれた。強い竜がいると聞いて、山へ倒しにいった時のことだ。山にいたのは竜ではなく盗賊だった。強い竜がいるというのは、盗賊が人々を怖がらせてアジトに近寄らせないために流した噂だった。
盗賊のアジトでは盗賊とそれを討伐しにやってきた傭兵団が戦っていた。
「あの~強い竜がいるって聞いたんですけど~」
「な、なんだこのガキ? 帰れ帰れ! 竜は盗賊がみんなをビビらせるためについた嘘だ。危ないからさっさと帰りな!」
髭面の豪快な顔をした男に話しかけてみた。他の傭兵よりも重装備で、凝った装飾のある男だった。
「え!? 嘘なの!? そんなぁ……結構歩いたのに……でもいいか。人がどんな戦い方をするのか見るのも勉強になるし」
「ああ!? 話聞けよ! クソっ、死んでも知らねぇぞ!!」
ぶっちゃけ、傭兵団も盗賊も大して強くはなかった。だけど、彼らが扱う技は興味深かった。陣形を組み、常に動き続け、瞬間的に生まれる多対一の状況を利用して、一気に一人を叩いたり、人影に隠れて奇襲したりだとか。盗賊も傭兵も動きはほぼ同じで、技も同じものが多かった。練度は傭兵団の方が高かったけど、圧倒的な差はなかった。
「この盗賊って……傭兵崩れなのかな? どうおもう? トランダーク?」
「そうですね。確かにただの盗賊がここまで練度が高いのは異常ですから、やはり元傭兵か、騎士でしょうね」
と、話していると、盗賊がトランダークに襲いかかってきた。多分人質にしようとしたんだと思う。僕は反射的にその盗賊を殴り殺してしまった。
「ええええええええ!? 頭がっ、弾けた!??」
さっきの豪快な傭兵の男が、目玉が飛び出すような勢いで目を見開き、驚いていた。近くにいた他の傭兵も盗賊も、僕を見ていた。
「手が血で汚れちゃたな。まぁでも、大体分かったし、そろそろ終わらせようかな。盗賊って、腕に赤い布巻いてる人でいいんだよね?」
僕は手を勢いよく振り、手についた血を飛ばし、剣を抜いた。僕は彼らの動き、人影に隠れて視界の外から一気に奇襲を仕掛けるを実戦してみた。結果は大成功、盗賊は誰も僕の奇襲を読めなかった。まぁ、奇襲が分かったとしても、彼らに避けるだけの素早さはなかったわけだけど。僕は盗賊を全滅させた。
「なっ……なんだこのガキ……化け物か? というか、もしかして……武神がガキに化けてんのか?」
「武神? そんなんじゃないよ。僕はちょっと強い怒鬼族の子供だよ。武神はきっと僕なんかと比べ物にならないほど強いはずだよ。戦神ガオガオの伝説しってる? 街を飲み込むような、滅茶苦茶でかい狼を倒したんだよ? 僕にはとてもそんなことできそうにないよ~」
「ほんとか? なんかそれぐらい出来てもおかしくなさそうだけどな……お前。お、おい……その、俺らは盗賊の討伐依頼を受けてここに来たんだけどよ。お前が殆ど倒しちまったから……けど、ここに来るまでに結構金かかっててよ……その6:4、いいや7:3ぐらいで依頼報酬を分けるっていうのは……駄目か?」
「え? 分け前? いいよそんなの」
「坊ちゃま! ダメです! お金は大事ですよ!? お金があれば、良い食、良い装備、良い寝床、全て揃えられます。どれも強くあるために大事なことですよ?」
「うっ……わかったよトランダーク。じゃあそれでいいよ。なんだっけ? 7:3だっけ? じゃあその3をもらおうかな」
「いや違ぇよ! お前が7だ馬鹿! オメェがほとんど盗賊倒してんだろうが!!」
僕は傭兵団の人たちと一緒に街へ戻り、盗賊の首と盗品を受け渡し、報酬を受け取った。そして、僕はこの傭兵団に勧誘された。
「おらぁ、ダンスマンってんだ。一応この傭兵団の頭な! 坊主、お前、俺の傭兵団に入らねぇか?」
「えぇ? でも僕強いヤツと戦うために旅してるからなぁ……おじさん達弱いし、一緒にいてもあんまし、強い相手と戦えなさそう」
「ぐはあああああ!? 確かにお前からみりゃ、弱いわな……けどな、強いヤツとは戦えるはずだぜ? 近々でっけぇ戦争があんのよ。その戦争には世界中から強者達が集まるはずだ、それこそお前が出会ったこともねぇ、英雄みたいなヤツだっているだろうよ」
「わかった! じゃあお世話になろうかな。あ、でも侍女のトランダークに色気出さないでよ?」
「出さねぇよ……お前がもっと弱っちかったら考えるやつも出るだろうが、そんなもん、自殺行為だ。ていうか、その侍女だって相当つえーんだろ? 目つきがカタギのそれじゃねぇ……」
僕はこうしてダンスマン傭兵団の世話になることを決めた。戦争が始まるのは早かった、僕が傭兵団に入って二週間、大戦争が始まった。
この戦争はある国の王妃と他国の王子が不倫したことがきっかけで起きたらしく、妻を取られた王が怒って、王子を殺そうとしている。
まぁ正義だの悪だのと考えるのも馬鹿な話だった。さっさと終わってほしいと民達は思っていたことだろう。僕からすると、どっちに手を貸しても大差ないから戦いやすかったかもしれない。
大将首を落とせば一先ずその戦場の区切りがつくとのことなので、僕は敵の大将だけに狙いを絞り、戦場をかけていった。まだ子供で体も小さかったから、敵兵達の間をくぐり抜けるのも楽だった。
「大将首とったぞ~~!」
最初の戦場は始まって3分で僕が終わらせた。敵大将に近づいて一振りでその首を落とした。敵も味方もあまりにも早い決着が信じられず、大将首が落ちてもしばらく戦っていた。
一つの戦場を終わらせ、次の戦場へと向かう。しかし、中々強者と会うことはない。だけど、強者がいるという情報は耳に入ってくるようになった。
「岩断ちのゴルドン? その人が強いの?」
「ああ、ラインマーグ、お前と同じく一人で戦場を終わらせちまうような化け物らしい。ただお前との違いがあるとすりゃ、その凶暴性だな。ゴルドンは戦場をすぐに終わらせられる状況でも、戦いを終わらせない。敵全員を皆殺しにしようとすんのさ。そんで、皆殺しをやり遂げちまう。敵は全滅するが、味方の被害も大きいらしいわ。まぁ、ゴルドンは一応味方陣営だから戦うこともなさそうなのが救いだな」
「へぇ~じゃあさ! ダンスマン! 味方する陣営、鞍替えしようよ! 僕、ゴルドンと戦ってみたいし」
「しょ、正気か!? お前、ゴルドンに負けたらお前だけじゃなく俺らダンスマン傭兵団全員が死ぬの濃厚だぜ?」
「でも、僕は一人でも鞍替えしてゴルドンと戦いに行くよ。その時みんなと戦いたくないから言ってるんだよ」
「はぁ……お前と戦場であっても別にお前は、大将首すぐに落としにいくから、俺らもそんな被害は受けなさそうだがよ……しゃあねぇな。みんなで鞍替えするか、その代わり、お前がゴルドンを殺したら分け前もらうからな」
「うん!」
僕たちは王子の陣営に鞍替えした。そして、ゴルドンのいる戦場の情報を集めた。ゴルドンは長く戦いを楽しんでいたから、僕たちは王子陣営に加勢する形で戦場へ乗り込むことができた。
「でっか……」
ゴルドンは遠目から見てもかなりの巨体だった。巨人ではないけど、ふつうの人間の二倍はあった。僕がゴルドンに殺気を向けると、ゴルドンはすぐに僕の存在に気づいた。こんな風に、すぐに反応がある敵は初めてだった。他とは違う、こいつは……強い。
ゴルドンは大ジャンプで僕のところへひとっ飛びでやってきた。凄い跳躍力だ。
「知ってるぞ? お前、仮面の鬼、ラインマーグだろ? おらぁ、お前を殺すために鞍替えしようかと迷ってたんだ。けど、お前が先に鞍替えしたから、その必要もなくなった」
「僕は君と戦いたくて鞍替えしたんだ。強いって聞いたからね」
「狂ったガキだ。じゃあお望み通り、殺してやる」
ゴルドンは大きなメイスを僕に振り落とした。僕は攻撃の回避に成功したけれど、ゴルドンのメイスは地面をえぐり、土の中にあった岩や石を飛ばした。その岩や石、土はメイスを避けた僕を追撃した。僕は咄嗟に防御態勢をとってダメージを最小限に抑える。
ゴルドンはそのまま間髪入れず二撃目を振るった。僕はそれに合わせて抜刀し、一気に間合いを詰め、ゴルドンの股下に潜り込む。ゴルドンは攻撃を中断し、バックステップで距離を取ろうとする。
だけど、バックステップが始まり、ゴルドンが飛んだ瞬間に僕はゴルドンのふくらはぎを切りつけた。ゴルドンのふくらはぎから大量の血が出ている。
僕は驚いていた。僕はゴルドンの足を切断するつもりで剣を振ったのに、ゴルドンの足は切断されず、ゴルドンにはまだまだ余裕がありそうだったからだ。
「なるほど、つえー。命の危機を感じたのは久々だぞ? 本気出さねぇと、こりゃ死ぬな」
ゴルドンの目つきが変わる。
「ぬおおおあああ!!」
ゴルドンが雄叫びと共に、背中から一本の腕を生やした。マントで隠してたのか……背中の腕はサソリや昆虫のような感じでかなり長い、指は6本で両端に親指がついている。折り畳んだりできるみたいだ……
ゴルドンは背腕で地面を殴り、先程よりも素早い動きで、跳躍する。
────ガシイイイン!!
「ほう! 力で耐えるのか! チビの癖に!」
「──っ、避けられなかった!?」
防御、僕はゴルドンが繰り出した背腕による加速が加わったメイスの打撃を剣で受けた。吹き飛ばされそうだったけど、なんとか耐えられた。もし吹き飛ばされたら、回避も防御もできず、直撃を貰っていた……そしたら……僕は、死んでいた?
「……ゴフっ……!?」
血の味がする。口の中が血でいっぱいだ……剣を受けて引き飛ばされなかったのはいいけど、衝撃を逃がせず、体の内部を破壊されてしまったみたいだ……
死ぬ……死ぬ……ゴルドンは僕より強い……今の僕よりも強いんだ。ははは、初めて会った……僕よりも強い人。
「は、はははっ! こうでなくっちゃ、家を追い出された甲斐が無いよ!」
僕は笑っていた。死ぬかもと思っても、口から出るのは弱音ではなく、闘争を望み、挑むための己への鼓舞だった。
家を出てから3年、僕は10歳になった。3年間、この時を待っていた。自分にとって未知の領域の強者との戦い。父は言っていた、真に力を試されるのは、己よりも強き者と戦う時だと。限界を超え、さらなる高みを目指すには、死線を超える必要があると。
「休む暇なんてねぇぞ? 仮面の鬼ぃ!!」
メイスによる打撃は止まらない。至近距離の乱打、僕はその全てを躱していく。やはり加速さえなければ避けられる。だけど……今は背腕のよる攻撃もある。単純に殴打を狙った攻撃だけど、とんでもなく早い……
──マズイっ!? 服を掴まれた!? ッ!!
背腕に掴まれたのは腕部分の布だ。僕は咄嗟に剣で服の腕部分を切り離した。こんな精密な動きまでできるのか……!
頭を使うんだ。じゃなきゃ、勝てない、相手の方が力も技の練度も上なんだ。僕が勝ってるのは回避能力ぐらい……有効打を与えるためにダメージ覚悟で殴り合いをしたら確実に負ける。
……でも、ゴルドンは背腕を使って動きを増やしたり、加速したりしてるんだ。工夫をした結果、僕より上を行ってる。だけどゴルドンが背腕を使い出す前は、僕と大きな差はなかった。
それはつまり、僕も何か工夫をすれば、彼に追いつけるってことだ。もっと、もっと速く動ければ──ゴルドンに掴まれたことで切り離した服が地に落ちているのが目に入った。ははっ! そっか、そうだった! こんなに簡単なことだったんだ!!
「──!? 気でも狂ったのかよ……」
「──ははっ! 追いつくにはこれしかなさそうだったからね!」
僕は鎧と上着を脱ぎ捨てた。そして、武器も全て捨てた。体が軽い!
ゴルドンがメイスを振り下ろす。僕はそれを回避して、メイスを足場代わりにゴルドンをよじ登っていく。メイスから腕へ、腕から肩へ、そしてそのまま、僕の腕をゴルドンの右目に突っ込んだ。ゴルドンの目玉をえぐり取った。
「ぐわああああ!?!? クソがぁ!? 許さねぇえええ!!!」
怒り、発狂するゴルドン。僕はゴルドンの右目を奪ったその瞬間に、勝利を確信していた。僕はこいつを殺せると思った。
──だけどそれは、油断って言うんだ。ゴルドンは発狂し、暴れるように腕を振り回した、そして、背腕の渾身の一撃が僕の頭に直撃した。
「──ッ?! ぐあっ……!!」
僕はゴルドンの肩の上から吹き飛ばされ、血を吐く。ま、まずい……メイスによる打撃じゃなかったから、死なずに済んだけど……意識が飛びそうだ……
だけど、勝てる、勝てるぞ! このまま、少しずつゴルドンの体を千切って壊していけば、僕は勝てるんだ!
「──う、美しい……仮面の鬼が……あ、ああラインマーグ! あああああ!」
ゴルドンは動きを止めていた。戦っている最中に、呆けていた。ゴルドンの足元には、僕の仮面が落ちていた。真っ二つに割れた、僕の仮面……ゴルドンは僕に魅了されていた。ゴルドンだけじゃない、まわりを見渡すと、敵も味方も、僕を見て呆けていた。
「なんでだよ……なんでだよ!! 僕は、一人で、こんな呪いの力なんてなくても勝てたんだ! なんでだよおおおおおおおおお!!!」
その日、僕は初めて、本当の意味で、怒りと悲しみの情を知った。己の戦いを穢したのは、自分ではどうしようもない、生まれながらにあった呪い。
僕は怒りのままに、呆けたゴルドンを殺した。ゴルドンはロクに抵抗することもなく、僕にその首を引きちぎられた。
僕はゴルドンの死体からマントを剥いで、僕の素顔を隠した。皆、正気に戻った。敵も味方も……僕は正気に戻った敵の中を走り、敵大将の首をすぐに落とした。
戦いには勝った。でもこんなのは望んだ勝利じゃない……穢れた勝利だ。なんでだ……初めて、僕よりも強いヤツと戦えたのに……戦士として勝ちたかったのに……
偶然だってことは分かってる。だけど、納得いかない、ダンスマン傭兵団のみんなには仕方のなかったことだと言われたけれど。僕の怒りは収まらなかった。
どうしようもないこと。僕が強く生まれて、家を追い出されたことも、魅了の呪いを持って生まれたことも、そのせいでゴルドンを戦士として倒せなかったことも。
全部仕方のなかったこと。だけど、理不尽だと思った。そして、僕も……誰かにとっての理不尽であったことに気づいた。
殆どの人は僕に勝てない、敵と会えば必ず負ける。例え僕を追い込んだとしても、素顔を見れば敗北する。僕が軽い気持ちで勝ってきた戦場には、敗者もいたんだ。そして、彼らは……今の僕と同じような気持ちだったのかもしれない。
悪いことをした。
戦争だからと、僕は僕を許すことができなかった。他者を踏みにじったこと、そのことに自分が気づかなかったこと。殺すことに覚悟がいらなかっただけで、覚悟を持っていたわけじゃない。意味を分かってなかっただけ。
武人の子として生まれたなら、戦で敵を殺すのは当然のこと。その程度の認識しかなかった。
僕はゴルドンを殺し、戦の勝利を王子に捧げた後、その報酬を受け取ることもなく、立ち去った。ダンスマン傭兵団を抜け、トランダークとまた旅を始めた。
僕の魅了の呪いの原因、命の神に会うために。
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