第5話 決断したら
彼にラインする。
『お別れがしたいの。合鍵返すね。荷造りするからしばらく時間頂戴』
ピロン♪
『なんで駄目なんだ? 両家にあいさつしたろ? 子供も欲しいって言っていただろ?』
『あなたと子供を育てている関係をイメージできない』
『はぁ? こっちは仕事でいっぱいなんだよ。早く靴を買ってくれよ』
いい加減に新しい靴くらい買ってほしいものだ。
『私も仕事している。キャリアをあきらめたくない』
もうここら辺からメールで納得してくれる気がないのが分かったので電話にした。
「別れて。無理」
「だからおふくろも手伝ってくれるって」
「お姑さんと協力してもでも子供2人を幸せに育ててているイメージがつかないわ。あなたの身だしなみの用意と汚れた部屋を見るとね」
「え?」
「私がきれいにしないといけないでしょ? 大きい子供の世話はしたくないわ」
「そんなことない。オレだって子供ができたならちゃんと父親するよ」
「信用できなくなったからさよならね」
「きっと振り向かせて見せる。考える期間をもとう」
「わかったわ」
あきらめてほしいものだ。
電話を切って終了だ。
これ以上彼に時間をとれない。
美容は肌から。
肌のためには心配事も夜更かしも天敵だからだ。
「私のことはわかってくれないのね」
別れるために。これで何とかなればいいな。
妥協期間に入った私たち。
私物は全部運び込んだ。新しい部屋に。手続きも滞りなく済んだ。
「今が冬でなくてよかったわ」
冬になると引っ越し費用がかさむかもしれないから。
今日も彼からのLINE。部屋を映した写真付き。
「前よりはきれいになっただろ?」
ソファの端に女もので黒色のストッキングが写っている。
私は肌色しかもっていないし、
そもそもソファの上に肌着は置かない。
彼の前では女でいたかったから。
間違って部屋の中にある状況は一つしかないだろう。
「詰めが甘いのね」
美容系にくくられる仕事をしているから見間違えるはずはない。
仕事の状況的にはけないものがあり、
私用でも買ったことのないかなり薄いストッキングのように見える。
多少、画像が雑でも見間違えることはない。
「画像に写っているストッキング。それ誰の?」
「え? おまえのだろ」
「私のじゃないよ。黒いストッキングは職業柄持たないようにしているの。
しかもそのデニール数だとすぐに破けちゃうし、
私の肌色にいあわないものが多くて。もう少し丈夫なものを選んでます」
仕事をしていればいい出会いはあるだろうか?
少し不安は残るが、あの男よりはいいはずだ。
働く自分をいたわりながら、好きなカレーをたべ、杏仁豆腐を食べる。
とても幸せだ。
この幸せを共有できる人が現れるまで今しばし。
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