第4話 モヤモヤ

 思いやりもない人とは続かない。

 相手は自分の写し鏡。

(私が至らないのかしら?)

 自分のモヤモヤした感情と彼の態度が幸せに亀裂を入れていく。

「……私のこと好き?」

「もちろん」

 しかし、彼は私のことは見ていない。テレビに釘付け。

 自分のことのほうが大切。同じくらいに妻を置くつもりはない。



(まだ引き返せるかもしれない)

 なぜ自分は冷めかけているのか?

 彼のへの態度が変わりつつあるので、イヤになりそう。

(彼の幸せと自分の幸せ)

 どちらも大切で優先したいもののはずだ。


 それらも優先順位があわない。

「靴は自分で用意してね。わたし、しばらくあなたと距離を置きたい」

「はぁ?」

 気づかなければよかった。自分と彼との価値観の違いに。

 とりあえず、新しく荷物をまとめて出ていく。


 今日はビジネスホテルでもいいし、ネットカフェでもいい。

 彼の顔を見ていられない。

 何かイライラする。

「俺の支度どうすんだよ? 飯だって」

「自分で何とかしてよ。子供じゃないんだし。またね」

 マリッジブルーなのだろうか?


 不安がこみあげてきて彼の顔を見ることも切なかった。

 ビジネスホテルに泊まることができた。

 2泊3日。

 一人ではどこまでもメンタルが沈んでしまいそうで、SNSで助けを呼ぶ。

 本当は会ったことのない人たち。

 でも趣味は一緒の人たち。

「彼の言動が嫌になった。別れたほうがいいのかな?」


「子供が欲しくないなら別れたほうがいいのでは?」

(ほしいんだよねぇ。これが。彼と協力していける自信ない)


 きっと彼はどこまでも仕事が優先で。子育てを放棄するだろう。

 バカンスから帰った時、乱雑に荒れている部屋を見た。

 子育てとか同居とかイメージがすべて吹き飛んだのだ。

(きっと、私がすべてこなす羽目になる)


 専業主婦よりも今の仕事のほうが好きだ。

 またきっと、恋の相手は見つかるよね。

「引っ越し、しないと」


 まだ、リカバリーできる。

 私の人生、まだ大丈夫。


 そう思うのに、なんで涙が止まらないんだろう。

 明日は勤務日なのに目が腫れてしまう。

 瞼を冷やしても冷やしても流れ出てくる涙を止められない。


 誠実なふりをしている彼氏ではなく、もっと協力してくれる男性をえらぼう。

 もう、決心は揺らぎそうにない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る