第040食 秋田への扉を抜けてカレキャン△:Cafe&Bar BASE CAMP(C04)

 九月最終日の昼、書き手は、後楽園駅でメトロを出てから、東京ドームを抜けて、JRの水道橋駅方面に向かった。


 水道橋駅界隈にも、今回の『神田カレー街食べ歩きスタンプラリー』への参加店が幾つかあり、この九月の末日に書き手が訪れんとしているのは、JRの水道橋駅に隣接している「Cafe&Bar BASE CAMP」であった。

 この店は、繁華街がある側とは逆側のガード下、靖国通りや神田川方面に位置している、いわば、神田川河畔にある店、否、キャンプ地なのだ。

 というのも、この店、「Cafe&Bar BASE CAMP」は、この店名が端的に表わしているように、「アウトドアをコンセプトにしたカフェ」だからである。


 来店の前に、書き手は、何故に、飲食店が軒を連ねているサイドではなく、ビルが立ち並んでいる、飲食店が少ない側に店があるのか、と疑問を抱いたのだが、店の〈キャンプ地〉というコンセプトを知ると、神田川の川沿いをキャンプ地とする、という事なのではなかろうか、と考えたくなる。

 たしかに、店のホームページには、「川の見える気持ちのいい店内で、山の中気分でお茶なりお酒なりを召し上がっていただければと思います」という言説を認める事ができるので、川の近くという立地への拘りも、あながち、書き手の勝手な憶測ではないようにも思える。


 さらに、来店した直後に、書き手が面白い、と思ったのは、店内への入り口の扉を潜ってすぐの所にネットが張られていた点であった。

 最初は「なんだこの網? 蚊帳かっ!」とも思ったのだが、店のコンセプトを思い出して直ぐに察した。

 この入り口のネットは、つまり、テント△への出入り口なのだ。

 まさに、キャンプ場の如く、というコンセプトが、出入り口にさえ反映されているのであろう。


 さて、このメッシュの入り口を潜るや否や、瞬く間に、キャンプ地への空間転移を果たした書き手は、席に着いて注文品を選ぶことにした。


 店のホームページには、「季節や気分?に合わせて毎日のようにメニューを変化させています」と書かれており、この点にも非常に興をそそられたのだが、カレー・スタンプラリーのための来店という目的上、書き手が注文したのは、「BASE CAMPカレーセット」であった。

 

 このセットメニューの構成は、「3種のサラダの総菜」と「デザート」、そして「カレー」であった。

 店のメニューによると、BASE CAMPのカレーは、「トロトロの牛すじカレー」で「7種類の野菜もついている」とのことであった。

 三種類の惣菜が固定なのか、週替わりなのか、日替わりなのかは分からないのだが、この日提供されていたのは、キュウリとニンジンとキャべツで、デザートは、カウンターにあるものをセルフで取る形式であった。

 書き手は、シリアルと梨のデザートを取ってきたのだが、カレーが出てくる前に、ちょっとだけよ、のつもりでデザートを口に入れたところ、これが好みの味過ぎて、カレーが来る前に完食してしまった。

 書き手の食べ方は、甘い物はカレーの後の口直しというのが基本方針で、先に甘い物を口にするのは珍しいのだが、甘味完食というのは、それだけ、この店の梨のデザートが美味だった、という事であろう。


 やがて、書き手の前に運ばれてきたカレーは、ご飯は、白米ではなく、〈雑穀米〉で、皿の縁には、メニューの説明文にあったように、数種類の野菜が添えられていた。

 それらは、ブロッコリー、トマト、ナス、カボチャ、ジャガイモ、キノコ、それと、馴染みのない食材であった。おそらく、これがメニューに書かれていた〈いぶりがっこ〉なのかもしれない。


 後日、調べてみたところ、いぶりがっこ、とは秋田県の郷土料理で、「燻製干しのたくあん漬け」、つまり、大根なのだ。ちなみに、いぶりは〈燻した〉、がっこは〈漬物〉という意味なのだそうだ。


 上記の事柄は、後でネットで調べた事なので、カレーに付いてきた野菜を食した時は、なんだこりゃっという、平凡な感想しか抱けなかったので、次に食す機会があったら、しっかりと、口にする食べ物が〈いぶりがっこ〉だという事を意識したうえで味わおう、と思った書き手であった。


 それにしても、何故の、敢えての〈いぶりがっこ〉なのであろうか?

 店は、季節や気まぐれでメニューを変えているそうなので、もしかしたら、付け合わせの野菜もその例に漏れず、この日この時は、秋田の郷土料理のいぶりがっこを提供していたのかもしれない。


 だから、きっと、メッシュの入り口を潜り、いぶりがっこが付いているカレーを食した者は、水道橋の神田川沿いの店ではなく、秋田県の、例えば、雄物川(おものがわ)の河畔に、いつの間にか移動させられてしまうにちがいない。 


〈訪問データ〉

 Cafe&Bar BASE CAMP:水道橋

 C04

 九月三十日・金曜日・十二時

 BASE CAMPカレーセット:九八〇円(QR)


〈参考資料〉

 「Cafe&Bar BASE CAMP」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十三ページ。 

〈WEB〉

 『BASE CAMP』、二〇二二年十二月十四日閲覧。

 「いぶりがっこ 秋田県」、『農林水産省』、二〇二二年十二月十四日閲覧。

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