第142話 神の兵士と戦う 「よし! 捕虜の尋問をはじめるぞ!」
「うおおおお――っ! てっめえええ――っ! この野郎おおおぉぉ――っ!」
俺は瓦礫の中から這い出していった。
浮遊島が落とされた。
――巨人兵士の手によって。
「ちょっとちょっとちょっと! オリオンってば! ――落ちついて!」
「バッカやろう! 落ちついていられっか! 島落とされて――! あいつ! ブッコロース!」
「倒すったって、あんな大きいの! どーすんのよ!」
俺はアレイダを指差した。
「おまえ。タンク。殴られる係。――俺。アタッカー。殴る係」
「いーやー! ああぁぁぁ――っ!!」
四の五の言ってるアレイダのケツに蹴りをくれて、前に押し出す。
巨人兵士は俺たちにさっきから気づいていて、不審そうな目を向けてきていたが――。戦闘態勢に入ったと認識して、武器を構える。
ぶうんと、槍を振り抜いて、アレイダを頭上からぶっ叩きにきた。
ビルが倒れてくるぐらいの質量が、頭上から迫る。
「ひいいいい――っ!!」
アレイダは悲鳴をあげるが、
透明な結界が数層ほど砕けはしたが、ビルの倒壊に等しい何千トンか何万トンかの質量を支えきった。
勇者業界――。体がデカけりゃ強いのであれば、しょせん人間サイズしかない勇者が無双するなんてできるわけがない。
体のデカさが戦力の決定的な違いではない。
一度でアレイダを仕留められなかった巨人兵士は、二度三度と槍で叩きにきた。
モグラ叩きか、あるいは――サイズ的にいって、虫というあたりか。
「ちょっ!! ちょおおぉ!! ちょおおおおぉぉ――っと! 持たない! 持たない! 破れる破れる! 結界破れるうぅぅ!」
アレイダが騒いでいる。うるさい仕事しろ。駄犬。
俺はいま、モーリンの胸に手を突っこんで、亜空間にしまってある俺の武器――〝魔神の金棒〟を取り出そうとしているところだった。
「フギッ!」
防御結界が全層砕ける。アレイダが直撃を食らう。
ぶしぃ、と血がしぶくが、その瞬間――。
「コンプリートヒール!」
ミーティアの癒やしの魔法が、絶妙なタイミングで入った。
肉塊だった状態から、アレイダは瞬時に再生。
巨人兵士は、たしかに潰した手応えがあったのに、槍をどけたらアレイダが無傷で立っているので、怪訝そうな顔をしている。
「よし! 準備いいぞ! ――狩りの時間だ!!」
俺は娘たちに号令を飛ばした。
俺たちのパーティと、巨人兵士との戦いがはじまった。
◇
結論からいうと、俺たちの敵ではなかった。
たしかにデカい。レベルもこれまでに見たことがないほど高い。
だが俺たちは完成されたパーティだった。
俺が選んだ女たちだ。俺が鍛えあげた女たちだ。
一対一ならともかく、全員総掛かりなのだ。こちらには勇者の俺と大賢者のモーリンもいる。負ける要素は一ミリもなかった。
俺とモーリンが出張らずとも、わりと楽勝だったのではなかろうか。街勇者となったエイティもいるしな。
巨人は地に倒れ伏している。
巨大な体躯に見合う、巨大な金属鎧を着ていたが、ぼこぼこに凹んで、いまでは単なる拘束具だ。
身動きもできないまま地に伏した巨人は、兜の下に見える目を、信じられない、というように見開らいていた。
まー、〝虫〟と思っていた相手に、フルボッコにされたんだからな。信じられないのも無理はないな。
「さて。殺すか」
俺は、冷たく言った。
倒した。屈服させた。だが殺されなけれは経験値が入らない。
この世界は、〝神〟とやらの設定で、そのようになっている。スキルだのステータスだのがあるのは、〝神〟が作ったシステムだ。
なんでも――。〝神〟が被創造物たちに伝えた言葉とは、「スタンド、アンド、ファイト」の、ただ一言であるらしい。
より強い存在を生み出すためのスキルシステムであり、ステータスシステムであり、経験値システムであるわけだ。
よって俺は、冷酷非情にも、とどめを差そうとしているわけだ。
レベル372もの生物にとどめを差せば、いったいどれだけの経験値が入ってくるのやら――。楽しみだ。
「ねえ? オリオン? ……いいの?」
「なにがだ?」
「だから……、いいの?」
「だから、なにがだ?」
駄犬がうるさい。なにが「いいの?」なんだ? わけわからん。
「だって……、この巨人……、女の人だけど?」
「……は?」
俺は口をあんぐりとあけて、アレイダを見返した。
そして、その顔を、巨人兵士に戻した。
巨人兵士は、全身鎧に包まれていた。性別なんて気にしてなかった。
いまはその鎧はぼっこぼっこに潰れて、よくわからんのだが――。
そういえば、たしかに、全身鎧の胸のところが膨らんでいたよーな……。
「うそっ」
「やっぱり気づいてなかったのね。オリオンにしてはおかしいと思った。殺しちゃうとか言うから」
「まじぇ?」
「てゆうか。なんでいままで気づいていなかったのか、そっちのほうを教えてほしいとこなんだけど……」
「マスターはお気に入りの
「そう――それだ!!」
俺はモーリンを指差した。さすがモーリン! いいことを言う!
「ま、まあ……! 女だとしてもだ! 美人かどうか、確認しないとなっ!」
俺は魔神の金棒を振るった。
ひしゃげていた鎧が、金棒を振るうたびに、パーツとなって吹き飛んでゆく。
「ああちょっとちょっと! もうちょっと丁寧にやらないと! ダメージで死んじゃう!」
「ヒールしとけ」
俺はちょっとばかりエキサイトしていた。
お? こいつ? ちょっとばかり? 美人なんじゃないか?
おや? けっこうイケるんじゃね?
ちょっとソバカスが残っているが、けっこう美形だ。
そして兵士として鍛えられた肉体は均整が取れている。
すっかり裸に剥き終わってしまうまで、金棒を振るいつづけた。
美人確認のためだったら、素っ裸にする必要はないのだが……。途中でおもしろくなってきてしまって、全部、ひん剥いた。
「くっ、殺せ……、殺すっす!」
すっぱだかで地面に横たわった女兵士は、定番のセリフを吐いてくれた。
いい! ますますいいよ! おまえ素質あるよ!
俺はだんだんとノリノリになってきた。
「さあーて……。捕虜の尋問をはじめるぞーっ!」
「ちょ――!? まさかオリオン!?」
アレイダが慌てている。俺は答えた。
「その、ま~さ~か~だ~ぁーっ!」
「やっぱりー!!」
ふん。駄犬も俺の考えがよくわかるようになってきたじゃないか。
だがまあ、まだまだだな。
モーリンあたりなど、瓦礫のなかからティーセットなどをサルベージしてきて、午後のお茶の準備をはじめている。
それが本当にわかっている者の行動というものだ。
「ちょっとよく考えてみなさいよ! ぜんぜんサイズがちがうよね! 無理だよね!」
「なせばなる」
「なんないよね!」
「俺のドリルは天を衝くドリルだ」
「ぜんぜん意味わかんないんだけど!」
駄犬。うるちゃい。
「さーて! はじめるかーっ!」
俺は尋問を開始した。
◇
「ふう……。よかったぜ」
「は、はい……♡ それは……、よかったっす♡」
全身ぐっしょりと濡れそぼった状態で、俺は言った。
巨人兵士は――エイルは、恋人のように頬を染めてくる。
てか。もうすっかり恋人関係だな。
下っ端口調の似合う巨人兵士は、すっかり俺に従順になっていた。
体はデカいが、一人の女だったようだ。そして俺は彼女に喜びを教えたはじめての男というわけだ。
「くっ殺せ」からはじまったプレイで、はじめのうちはそっちのロールプレイをしていたが、途中からはきちんと口説いた。
浮遊島を落としてくれた相手とはいえ、強姦などをするつもりはない。
じっくりたっぷりカラダに
え? どうやったのかって?
そんなもん、回転ドリル系の大技を使ったに決まってる。
ロボット物でいえば、超電磁スピンとか、そういったカンジの技である。
全身を用いてトルネードを起こし、突進する大技だ。勇者剣技の一つである。
なにしろ体格差があるので、そのぐらいで
全力で技をぶっ放した。全身でやった。サイズの違いから、
最後、ぎゅうぎゅう絞り上げられて、全身の骨が折れるかと思った。
「おいアレイダ」
おまえもこっちきて混じるか? と、呼んだつもりだったが――。
「汚いから! 近寄らないで!」
「汚くはないだろ」
ひどい言われようだな。なんだ。妬いてんのか。
しかたがないので、俺は巨人兵士の体に乗った。巨大なおっぱいをベッドがわりにして、ごろりと横になる。
「おいエイル」
「はい……♡ オリオンさん♡ なんっすか?」
すっかり従順になった巨人兵士に、俺は言った。
「巨人の街があると言ったな? そこへ俺たちを連れていけ」
「えっ? でもそれは……?」
「足がなくなっちまったからな。おまえのせいだぞ。おまえがばかみたいに島を叩いてくるからだ。だから責任を取れ」
「へんなもんが浮かんでたら、誰でもとりあえず叩いてみると思うっす。わたしは悪くないっすよー」
「うるさい。また犯すぞ」
「あーれー! ……犯してっす」
「連れていったら、毎晩、ヤッてやる」
「ほ、ほんとっすね……? まあ……、オリオンさんたちだけなら、こっそりポケットに入れて持ち帰れば……。同室のアミィにだけは話して……」
エイルのやつは、なにかぶつぶつと言っている。
巨人の街の見物といこう。
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