22.神の国を征く
第140話 浮遊大陸 「大賢者も知らんのか」
いつもの午後。いつもの空中庭園。
俺はいつものようにデッキチェアに寝そべりながら、アンニュィな午後を怠惰に過ごしていた。
昨晩は、ちと、ヤリすぎた。
〝正〟の字をいくつ書いたのやら……。
無論、前側からと後ろ側からとでは、別カウントだ。内股とヒップと、〝正〟の字を描く場所が別なのだから、当然だ。
〝正〟の字も、一つ二つ程度では絵的にしょぼいので、三つ四つと描くことになるわけで……。かけることの「両面」。かけることの全員分。
俺ちょっと頑張った。頑張りすぎた。
二、三日はしばらくヤラなくていいな……。とか、いまは思っているが、まあ、夜にもなれば、誰かの尻とか背中とかうなじとか腹筋とかにムラっときたりするのだろう。
前にバニー師匠に叱られたことがある。あまり調子に乗っていると腎虚になっても知りませんよ。――と。
ステータスの状態異常欄にも出てこない謎の状態異常というものは、確かに存在する。状態異常ではないので、治療魔法でも治すことができない。
体内を流れる気――〝内気〟に乱れがあった場合には、それを調整するための独自の技があるわけだが……。魔法が実在するこの世界では、そういう技術は進歩する余地がなかった。
まあ、きつく諫言してきても、バニー師匠は、なにかあったときには、看てくれるわけだが――。
その治療方法は――アレだ。
なのでむしろ治療は受けたい側というか。
うん。そうしよう。今夜はバニー師匠に、やさしく〝治療〟してもらうことにしよう。俺は具合が悪いので、彼女に上になってもらおう。
うん。よいな。
雲海を
上になにもないというのが、特にいい。
世界のすべては、俺の下にあり――。
――とか。思っていたとき、唐突に、影がさした。
「……なんだ?」
俺は上空を見上げた。
雲でさえ、この浮遊島の下にあるのだ。いったいなにが影を落とすというのか――?
「なんだ……、あれは?」
それはたとえるなら……巨大な〝陸〟だった。
浮遊
「浮遊……、大陸、かよ」
俺は茫然と見上げていた。
◇
「きーてない」
屋敷のリビングで、俺は腕組みをしながら、そう言った。
「もうしわけありません。世界樹の根も、浮遊大陸にまでは伸びておりませんので――。浮遊大陸があることは存じていますが、詳しい情報はほとんど入ってきていなくて――」
〝世界〟を統べる精霊が、世界の一部について、わかんねーと言っている。
開き直っている。
「大賢者つかえねえ」
「もうしわけありません」
「ちょっとオリオン。そういう言いかたってないでしょ? モーリンさんだって知らないことくらいあったって、仕方ないでしょ?」
アレイダのやつが、俺に意見してきやがった。
俺はぎろりと、アレイダを睨みつけた。
「な、なによ……? わ、わたし間違ったこと言ってないわよ……。そんな目をしてきたって……、む、無駄なんだからっ」
俺への意見をすぐに引っ込めるかと思ったのだが、まだ突っぱっている。
そのアレイダに――俺は言った。
「その通りだな」
「へっ?」
「すまんモーリン。いまのは八つ当たりだ。――ちょっと悔しくってな。
「いえ。わたくしの力不足ですので」
「な、なんだ……、ちゃんと謝れるんじゃない」
「おまえに謝ったんじゃねーよ。ばーかばーかばーか」
「ばかってなによ! いまのはどっちかっていうとあんたのほうがバカだったでしょ!」
「うるせ、ぶーす」
「ブスはそれいま関係ないよね!?」
「ぶーすぶーすぶーす」
「またゆった! 三回もゆった!」
いまアレイダは自分では気がついていないのかもしれないが……。俺のことを〝あんた〟と呼んでいた。
なんだ? 俺と対等気取りか?
はっはっは。
百年はええぞ。
ぶーすぶーすぶーす。
俺は愉快だった。さっきまでの不機嫌は、もうどこかに行っている。
「大賢者も知らない浮遊大陸なら、ぜひ、探検してみなくてはなっ!」
俺は女たちにそう言った。
【後書き】
のんびりまったりの数話が終わって、本編突入っす。
空の上の浮遊大陸編です。
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