第131話 エピローグ

「うわぁ……、いい景色ー」


 眼下に雲が流れる。

 風が、アレイダの赤い髪をさらってゆく。

 しょっちゅう頭部が吹き飛ぶような大ダメージを食らって、全再生を受けたりするせいか、こいつの髪は、生まれたばかりの赤ん坊のようにサラサラで――。

 俺は不覚にも、風に流れるその髪を目で追いかけてしまった。


「ふふん……、欲情した?」


 こいつも女なんだよな。そういう目線には、ひどく鋭敏だ。


 俺たちはいま、空にいた。


 いわゆる「空の乗り物」というやつである。

 乗り物と呼ぶには、すこしばかり語弊があるのだが……。まあ、乗り物は乗り物である。

 魔大陸の先のルートは、天空が舞台となる。

 空を飛ぶ乗り物を手に入れないことには、先に進めない。


 五十年前の勇者行では、別ルートで空にあがった。しかし密林の奥のハイエルフの国ルートでも上がれたようだ。一本道でもないらしい。


 復活(?)した四天王を倒し、脅威を退け、国を救った褒美に、その「乗り物」を貰えることになった。

 宝物庫を開いて、武器防具を勝手に拝借したことも、不問にされた。

 勇者三点セットは、エイティの装備となっている。


 そしてもうひとつ、変わったことはといえば――。


「ダーリン! どこに行くのだーっ!」

「ついてくんなよ」


 俺は竜少女――リムルに、そう言った。

 しばらく前から全速力で乗り物を飛ばしているのだが、ぜんぜん振り切れやしない。

 竜人は背中に羽がある。飛行能力がある。空を飛ぶ乗り物でも逃げ切れない。


「我とダーリンは、どこまでも一緒だ! なにしろ交尾したのだからな! つがいとなったのだーっ! 一生! 一緒なのだーっ!!」

「なってねえよ。おまえなんかヤリ捨てだよ」


 なんなの、こいつ? 所有感まるだしなの?

 いっぺんヤッたくらいで、いきなり女房気取りなの?

 俺が苦手とするタイプだった。あんなのに手を出すんじゃなかった。


「ねえ――リムル!」


 並行して飛翔するリムルに、アレイダが微笑みかける。


「なんなのだ!」

「交尾だったら――わたしたち、全員、してるわよーっ!」

「えええ――っ!!」


 リムルの叫び声が、天空に響き渡った。






【後書き】

魔大陸編、完結しましたー。

またしばらく連載はお暇をいただくことになるかと思います。再開は、「この小説は○ヶ月更新されていません」が出たあたり……。


竜少女はレギュラー入りです。累計作品にわりと出てくるポンコツ・ロリドラゴンのヒロイン、大好物なんス。

そういや、どの作品にも出したことなかった。

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