第47話

 ………有輝とイルアーナさんは警戒する。

 急に、気配なくその姿を現した以上、警戒しない理由がない。

 そいつは敵かもしれないし、何かを隠して、有輝とイルアーナさんに近づいてきているかもしれない。

 だが―…。


 (急に姿を現して、私はアルーラファル国の者だと名乗った。

 それが事実だとすれば、こいつはかなり実力者ということにもなるし、狙いは私たち。

 アルーラファル国の政権中枢部がどうなっているかは、フロンティラ領の領主から聞いた。

 それを完全に信じるのは危険だけど、どうも簡単に、こいつの言葉には乗ってはいけないという匂いがするのよねぇ~。)


 イルアーナさんがかなり警戒しているようですねぇ~。

 そうですよ。こいつは警戒しないといけないのだから―…。

 そして、アルーラファル国の国王直属の者であり、そして、このように、姿を消すことができるので、裏の仕事をしている者の可能性はかなり高い。

 そのように疑ってかかった方が、対処がしやすいというものです。

 私のスペーグラとしての経験からも言えることなのです。

 もし、ファングラに来てしまうようなことがあれば、このことを覚えておくと、助かったりする可能性はあると思います。

 まあ、そのようなことは、まったくと言ってもいいかもしれないが、ないとは思いますが―…。

 さて、話を戻して、イルアーナさんが警戒しているということは―…。

 皆さんのご想像通りかもしれません。


 (俺のギフトが告げている。

 この目の前にいる人物の実力はそこまでではない。

 だが、国王直属というか、この国の国王自身がかなり危険な人物だと、言っている。

 この人物の言葉からは分からないけど、国王は自分への我欲というか称賛されたいという欲求が強すぎる。

 ついていくのは危険だ。)


 と。

 有輝は、自らのギフトである「摂理者」を使っている感じです。

 というか、有輝のギフトが告げているという感じです。

 アルーラファル国の国王アルーラ=タンガルドは、欲深いというか、自分が一番だと思っている人物で、かなり残酷な性格をしているんですよねぇ~。

 これから分かってくると思いますが―…。

 さて、今は有輝とイルアーナさんのことに関して進めていかないといけないんですよねぇ~。

 そろそろ、今日の語りの時間も終わりに近づきつつありますので―…。


 「一体、アルーラファル国の国王直属の方は何の用で、私たちと接触を―…。」


 と、有輝は言う。

 有輝は、すぐにでもイルアーナさんとともに、逃げられるようにするのであった。

 相手側の実力がかなりあるのは分かるし、スペーグラとしての依頼をこなしたばかりなので、なるべく戦闘にしたくないと感じるのだった。

 そして、感情を出すことのないアルーラファル王国の国王直属の者は―…。


 「そんな警戒しないでください。

 私としても、あなた方のようなギフトの能力を所有するような人を殺したりするような愚かなことは致しません。

 というか、それこそ、この世界における大いなる損失ではないですか。

 それに、用件は短く言った方が良いということですか。

 なら、言います。

 フロンティラ領の領主から離れて、我々のもとへ来ませんか。

 それなりの待遇を保障いたしますよ。」


 要は、引き抜きということだ。

 アルーラファル王国側からすれば、ギフトの能力者を殺したとしても得になることはない。

 ギフトの能力は、このフォングラという世界においてはかなり重要なものであり、場合によっては歴史の一ページに刻まれてもおかしくないほどの功績を所有者にもたらすのだから―…。

 そして、そのような能力者は、死ぬまで利用した方が良いとも考えられていたりする。

 このフォングラという世界における上流層のほとんどにおいては―…。

 簡単に言うのであれば、上流層の奴隷として、一生涯、上流層のために働けということだ。

 彼らは、自らを支配者であり、何をしても許されると思っているのだから―…。

 そんなことは絶対にありえないのに―…。

 まあ、フォングラの上流層の考えという名の身勝手を理解していただいたところで、有輝とイルアーナさんの今の状況を考えてもらいたいと思います。

 多くの人は、そういうのは許せないと思うでしょう。

 それで良いんです。

 だけど、すべてという言葉を私が言っていない以上、一部の人々の中には他者を出し抜いてでも自分が優位になることが当たり前であり、他者を蹴落とすことは当然のことだと思っている人もいたりするんです。

 例は、フォングラの上流層ですよねぇ~。当たり前の例となりますが―…。

 そういうことを理解した上で、有輝とイルアーナさんは返事をするのだろうか。

 かなり難しいことでしかありませんが―…。

 で、有輝の方が返事をしますねぇ~。


 「その話に関しては、断らせていただきます。」


 そう、有輝の返事は、アルーラファル王国側にはならないという宣言であった。

 なぜ、有輝はそのような返事をしたのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る