第45話

 …………ゴブリンの中で状態の良いものを、亜空間バックの中に入れていく。

 有輝とイルアーナさんは―…。


 「本当、ゴブリンを倒すのに、二分もかからないとはねぇ~。

 私たちも随分と成長したものね。」


 「ああ、だけど油断は禁物だ。

 ゴブリンは他にもいるかもしれない。

 ゴブリン八匹では、今日の稼ぐべき金額に到達することはできないな。」


 二人とも成長しました。

 偉い、偉い。

 何度だって言ってやりますよ。

 私が育てたみたいなものですから~。

 ………………そういう自慢は時間の無駄だから、ちゃんと、語りを進めろ。

 久々の合理厨だと!!!

 そんな馬鹿な!!!

 最近は合理厨が出てくるような展開に一切、していなかったのに―…。なぜ?

 ………………そんな細かいことはどうでも良いから、ちゃんと、語りを進めろ。

 はい。

 私は返事をするしかなかった。

 合理厨が―…。

 …………(数十秒後)………。

 私としては、意識を失いかけていました。

 では、語りに戻りましょう。

 有輝とイルアーナさんの二人はそのような会話をしているが、気持ちとしては随分、落ち着いた印象を私に与えていますねぇ~。

 そして、ここで一回、ゴブリンの解体の値段を減らした分の買い取り額は、部位の保全状態にも関係ありますが、だいたい相場では500ペンアルマルである。

 グルアルラ国と同じ通貨単位であり、十二国はだいたいペンアルマルで通用したりします。

 一方で、各国の独自な通貨単位があったりします。

 まあ、詳しい各国の通貨単位は別の機会で、説明するかもしれませんので、割愛させていただきます。

 そして、ゴブリンを八匹全部狩ることができたとしても、合計は4000ペンアルマルにしかならない。

 生活していく上では、1万ペンアルマルが必要であり、その額に到達するためには、ゴブリンを20匹狩る必要があるのだ。

 そういうことです。

 後は、自分の力でどれぐらい足りないか計算をしてください。

 できるよね?

 あなたがたの計算能力を信じることにします。

 さて、話を戻して、有輝とイルアーナさんは、この八匹のゴブリンでは今日の稼ぎとしては悪いと判断したのか、さらに、ゴブリンを探そうとするのだった。


 「ええ、そうね。まだ、時間もあるし―…。」


 と、イルアーナさんの言葉の後、二人はゴブリンを探す。




 ◆◆◆



 それから、一時間の間、ゴブリンを探す。

 その結果、最初の八匹とその後に発見した五匹を含め、合計十三匹を倒すことができた。

 そして、今は、昼の時間である。

 フォングラでは、昼食という概念はかなり珍しいものであったりする。

 大体、昼食をとることができるのは、貴族だけであり、貴族ではない試験を受けたり、貴族のコネで登用されたりした役人は、昼休みはあるが、昼食を食べられるほどに贅沢な暮らしをしているわけではない。

 私が世界管理局の中で、フォングラに関する事項を調べていく中で、そのような研究の論文を発見したりしました。

 それに、私の経験談から言わせてもらうと、合っているように感じますので、このように語っています。

 そういうことを念頭におきながら、有輝とイルアーナさんはこういう危険な場所でもいつもと変わらずに昼食をとるのであった。

 他のスペーグラから見れば、ふざけているのか、と怒鳴られてしまいそうなことですが―…。

 他のスペーグラが言っていることは二人も理解することができるが、ちゃんと昼食を食べないと、自分達のペースが乱れてしまうという感じなんでしょう。

 私と一緒に行動していた時は、イルアーナさんが我が儘のような感じで言っていたので、当時の私は呆れかえっていたし、他のスペーグラと同様に苛立ちを感じてしまいました。

 有輝の方は、我慢していた感じなのでしょう。郷に入れては郷に従え、というような感じで―…。

 そして、私が亡くなった以上、このように昼食を我慢する必要はないと判断し、重要な時以外は昼食をとるようにしている感じですねぇ~。


 「他のスペーグラ達から恨まれるだろうけど、ちゃんと栄養をしっかりととっておかないと、後々、体に不調をきたしてしまうのよ。

 長生きしたくば、栄養から―…。健康に生きるためにもね。」


 すでに、健康志向を確立しているイルアーナさんであった。

 イルアーナさんに上司によると、イルアーナさんが健康志向を見せているのは、表面上のものであろうという感じで、私に言ってくれていました。

 だけど、そういう感じではないのでしょう。

 イルアーナさんの心の中では―…、解析した感じによると、こんな感じです。


 ―健康で長生きしないと私を馬鹿にしやがった奴らに復讐できる機会もなく、終わってしまうじゃない。そんなのは許せないわ!!!―


 そんな感じです。

 自分に正直だと、私は思ってしまいましたよ。

 そういう意味でイルアーナさんは、ちゃんと考えることができるけど、そのエネルギーの向け方は見直した方が良いと思いますよ。

 まあ、ここで私が言ったとしても、イルアーナさんに聞こえるはずもありませんし、実際に私が生きて残っていて、同様の場面に遭遇したとしても、聞こうとはしないと思いますね。

 ということで、話を進めていきましょう。


 「だな、スペーグラは健康と生き残ることが特に、大事だからな。」


 ということで、有輝とイルアーナさんはそれぞれ持ってきたお弁当箱を開け、食べ始めるのだった。

 フォングラでの弁当箱は、有輝の住んでいる世界のように保温機能が優れている者はなく、あくまでも弁当箱に使われている素材の保温機能で性能というものが決まってくる。

 スープとか入れられるようなものはありませんし―…。

 世界管理局にはあるんですが―…。

 それを私が知った時、なぜ、フォングラではそのような発想やアイデアが実現しなかったのか。

 もし、実現していれば、スペーグラの食事事情はかなり改善して、より効率的に獲物を狩ったりすることができていたであろうに―…。

 ふざけるな!!!

 ギフトの中に「創作者」か、「弁当箱者」を入れておけよ!!!

 まあ、ちなみに、「創作者」というギフトはあるのですが―…。

 ということで、弁当箱はフォングラでまともな機能を持ち合わせたものになることを私はお祈りしたいと思います。

 ………………祈るぐらいしかできないだろ。

 何か、真面なことを言われたような気がしますが―…。

 それを気にせずに再度進めていかないと―…。昼食を食べるだけで今日の語りが終わってしまうよ。それは良くない。

 そして、二人は昼食を食べ始めるのだった。

 今日の昼食は、おにぎりと簡単な炒め物であり、腐りにくいものを選んだという感じだ。塩分はそれなりありそうな感じだ。

 それに炒め物は、今朝の残りものであることは確かだ。

 二人ともフォングラに来てからは、食べ物の管理にはかなり詳しくなった。冷蔵庫というものがありませんから、食べ物の保存に関しては気をつかうのだ。

 亜空間バックがあると言っても、そこはあくまでも時間の経過を遅くするぐらいで―…。

 やっぱり、亜空間バックはもっと、世間に広めることができれば、冷蔵庫の変わりになるのは間違いない。

 だれか、フォングラの人でそのような発明をして欲しいです。

 そうすれば、食糧の保存事情が改善するのに―…。

 フォングラよ、その支配者よ。自分の欲望よりも、そういうことを優先して欲しいよ。本当に残念な世界、それがフォングラだ。

 二人は食べながらも、味は普通という感じだ。

 フォングラでは、砂糖はかなり希少品という感じで、なかなか手に入れることはできないし、値段が高い。

 有輝は時々、サトウキビをマジで探そうとしているぐらいだ。

 それ以外にも砂糖になりそうな種を探したり―…。

 執念に近いものはないが、それでも、甘い物が欲しくなる時はある。

 塩に関しては、日常から必要とされているのか、しっかりとした流通網が敷かれていたりする。

 そして、この物語は、フォングラの崩壊を阻止するものであり、成り上がる物語ではないので、こういうところで苦労したりするんだよねぇ~。

 まあ、頑張れ、としか私の方では言えませんが―…。



 ◆◆◆



 昼食後。

 有輝とイルアーナさんの二人に会話というものはなく、黙々と食べていたので、ある意味でスペーグラなのだなぁ~、私は感じてしまうわけですよぉ~。

 声なんて出していたら、匂いにひきつけられたモンスターによって、食事中に狙われて、最悪の場合は、お陀仏という結末も十分にあったりしますから―…。

 ということで、二人は弁当箱を亜空間バックの中に仕舞うと―…。


 「少し休憩を挟んだ後は、ゴブリンをさらに探していくことにしますかぁ~。

 ゴブリンシリーズというのなら、ゴブリンだけでなく、オーガ、ゴブリンの派生した進化モンスターがいてもおかしくはないからな。」


 「そうね、昼食後からはより強いゴブリンの個体を相手にすることになりましょうね。

 運による要素があるけど―…。

 それと、フォングラを崩壊から救う方法って何か思いついた?」


 イルアーナさんが珍しく質問する。

 イルアーナさんとしては、なるべく早めにスペーグラを救うことによって、世界管理局の中で出世したいと思っているのでしょう。

 イルアーナさんを有輝の案内役にさせた私とイルアーナさんの上司とかを扱き使おうと考えて―…。

 絶対に想像していますからね、このイルアーナさんという人は―…。

 さて、有輝の今のところの答えについて聞いてみましょうか?


 「一応、俺のギフトの能力で、個人だけの欲望を最大限にしようとしていることがフォングラの崩壊へと進めている原因なのではないかと思うんだ。

 だけど、どうして、そうなるのかを理解することができない。

 そんな感じだ。

 フォングラ崩壊を阻止できているわけではないし―…。」


 そう、有輝は何となくだけど原因と思われることが分かっているような感じだけど、朧気と言った方が正しいのかもしれませんね。

 個人だけの欲望を最大化―…、それが意味することは何なのだろうか?

 私にとっても、疑問にしか感じませんし、個人の欲望の最大化とフォングラの崩壊がどういう関係にあるのか、まるで見当もつきません。

 関係あるの? それ、って思った方が正しいのではないかと思えるぐらいには―…。

 ここは物語を進めていきながら、有輝のギフトの能力がより扱えるようになるのを期待することにしましょう。

 人が成長するためには、時に、いろんな人の経験を知る必要があるのですから―…。

 知ること、理解すること、そして、そこから組み合わせることで想像すること、それが創造になること、それが重要なのかもしれませんが、今、皆さんが聞いたとしても頭の中で理解できることはなく、頭の上にハテナマークを浮かべるだけですね。

 さて、そろそろ有輝とイルアーナさんが動くようですね。


 「さて、休憩はここまでにして、ゴブリンでも探すとしますか。」


 「そうね。」


 ということで、有輝とイルアーナさんは立ち上がり、シートを亜空間バックに仕舞って、ゴブリンを探しに行くのであった。

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