第44話
………数十分後。
有輝とイルアーナさんは、ゴブリンのいる場所へと近づき、草陰に隠れながら、ゴブリンたちの様子を窺う。
(ゴブリンどもは、合計で八匹だな。
進化している系統ではなく、F級のスペーグラでも倒すことのできるゴブリンということか。
こいつらをどうにかすることは簡単にできるが、周囲にゴブリンの仲間が近寄っていないか注意しないといけないな。)
と、有輝は慎重に周囲を見張るのだった。
気を張りすぎて、ゴブリンに気づかれないようにしながら―…。
有輝もだいぶ、手慣れてきましたねぇ~。
物語の開始の中で、このようなスペーグラの仕事を取り上げることができなかったので、そろそろ取り上げてみることにしましょう。
有輝は慎重に周囲を見張りながら、イルアーナさんとこそこそと会話をするのだった。
「ゴブリン八匹いるけど、周囲にはいないか。」
「ええ、いないわ。ここから百メートル範囲では―…。」
イルアーナさんも仕事モードに入っているので、変なことや我が儘を言わなくなっていますねぇ~。
理解力はあるんですが、自己中心的な性格が宜しくないイルアーナさんはこういうところを続けていけば、自身の評価が上がっていくことに気づいて欲しいものです。
そして―、数分様子を見ると―…。
「良し、いくか。」
「ええ。」
と、有輝とイルアーナさんが返事をし合うと、二人は一斉に行動に移す。
有輝は、剣を持ちながらも、魔法を展開して準備する。
(イルアーナが陽動しているうちに、倒せなかったものを倒す!!!)
と、有輝は心の中で思いながら、すぐに、ゴブリンに気づかれないように行動する。
一方で、イルアーナさんは―…。
(さて、一発ビックリさせましょうか。)
と、心の中で思いながら、素早く移動して、ゴブリンの腹部に攻撃しながら、魔力を纏って、ゴブリンに攻撃を当てると―…。
「魔力棘。」
と、いう技を発動させる。
これは、イルアーナさんのような使い方をする人はかなり珍しい。
「魔力棘」という技は、魔法陣を展開して、対象のいる場所に向かって、魔法陣から棘を発生させるような使い方が一般的だ。
その方が相手からダメージを受けるということがなく、しっかりと遠距離で攻撃することができるからだ。
一方、イルアーナさんはゴブリンに攻撃を当てた時、瞬時に「魔力棘」を発生させて、その棘でゴブリンの腹部を貫いたのだった。
そのような使い方をすれば、ゴブリンが素材としての価値を下げるかもしれない恐れがあるが、それを躊躇わずに使う。
一応、亜空間バックの中には入れるかもしれないが、入れられる量が決まりきっているので、それに達することも考えた場合、ゴブリンの死体を燃やして、捨てないといけない。
そういうことになることを想定しての行動であろう。
次のゴブリンからは頭部を破壊するのではないかと思われるほどの威力のパンチをイルアーナさんは、ゴブリンに与えていくのである。
二匹、三匹、四匹。
と、ゴブリンの動きを予測しながら、次から次にゴブリンが想定しているのは違う攻撃を入れて、絶命させていく。
一方の有輝も魔法を展開し―…。
「火の玉。」
を、発動させて、ゴブリンの腹部を狙う。
この時、大きな火の玉ではなく、より小さくして、ピストルから発射された弾丸のように、スピードを速くした攻撃をする。
そのことにより、ゴブリンが避ける動作をする前に当てて、ゴブリンの内臓で特に命に関わる部分を燃やして、絶命させる。
そのような光景を見た、生き残っているゴブリンはすぐに逃げようと考えるが、そうなってしまえば、有輝の領分だ。
すぐに、同様の魔法を発動させて、残りの三匹のゴブリンに当てて、絶命させていく。
ゴブリンが喚き声を出す暇すらも与えずに―…。
二人とも連携もあるけど、強くなったねぇ~。
嬉しいよ。
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