第7話
「さっきのナメッキーとか言っていたモンスターは何なんですか?」
有輝がさっき、私が倒したナメッキーというモンスターについて知りたいようですね。
ギフトを知らないということは、このフォングラという世界についてもほとんど知らないということでしょう。
ならば、私がちゃんと説明してあげないといけませんね。
私は、そのような性格なのですから―…。
「あ~、さっきのナメッキーね。ナメッキーは体中にねばねばした粘液を纏っていて、それに触れると滑ったりしますね。
さらに、ナメッキーは、移動スピードがそこまで速いというわけでもないから、スピードに関してはそこまで気にする必要はない。
だけど、酸の水による攻撃には注意かな。」
(確かにナメッキーというモンスターは、フォイリとかいう人の言う通りだ。それを俺は実際に、目撃しているのだから―…。)
有輝は私のさっきまでの説明にそのようなことを思っているのですね。
ちゃんと経験から理解できるぐらいには、しっかりとした知性を持っているのですねぇ~、ここでの評価は普通ですね。
まあ、高い評価を得たいのであれば、理解した上で、何かを考えることですね。真理みたいな?
まあ、そんなことよりも、話を進めていきましょう。
「酸の水に対処するのは、フォイリさんのような戦い方をするのですか?」
有輝が質問してくる。
「う~ん、私の戦い方は、一例でしかないんだよ。だから、有輝が私のような戦い方ができるかというとそうでもないと思っていた方がいいですよ。
ナメッキーの体の中は酸が混じっている体液があるから、それを魔法で無効にしていって、そこから、直接攻撃で倒すのが一番の手かな。
有輝はスペーグラに興味があるのかい?」
その時、私は有輝がスペーグラに興味があるのだと思っていました。
というか、フォングラという世界では、モンスターに興味のある人は研究者になるか、スペーグラになるかということぐらいしか選択肢はありませんから―…。
ちなみに、研究者でスペーグラという人はこの世界にはたくさんいると思います。私の知り合いにもいますし―…。
研究者は国に雇われない限り、良い待遇を受けられませんから―…。
特に、国に雇われるのは武器や武器に関する科学に精通しているか、それを専門にしている人だけですね。
文学やら歴史、そんなものは役に立たないとして、一番にいらないもの扱いされていますからねぇ~。
だけど、人は現在、過去、そして、過去から得られる過去の見た人の選択による結果とその過程というものを知り、他者の考えを知らなければ、同じ過ちをより大きな確率で繰り返し、最悪の場合は、とんでもない結果をもたらすかもしれません。
それに、役に立たないとされるものを国の都合が良いのようにするために、国が雇って、彼らに発表させたりすることもあるので、国に雇われるというのはあまりお勧めできませんが、彼らが社会にとって必要なのも事実だと思うんですよねぇ~。一定数は―…。
今のフォングラの国々の上層部には理解されないことでしょうけど―…。自己都合でしか物事を考えられない人たちが多いようですから―…。
全員がそういうわけではないのが救いですけど―…。
それに、長く余計なことを言って済まないねぇ~、私の癖みたいなものだからご容赦してくれるとありがたい。
さて、進めよう。
「スペーグラにですか? というか、スペーグラというものは何ですか?
私のいた所はかなりの田舎で、外からの情報がなかなか入ってこなくて、外に出たのも外を旅して知りなさいということで―…。」
有輝は、普通の表情をしながら言う。
「そうなんです。私たちは、知らないことが多すぎて―…。お願いします、フォイリ様。
今、私たちが頼れるのはあなたしかいないのです。」
「わかりました。」
有輝の言葉に覆いかぶさるかのように、イルアーナさんが言い始めるのだった。
そして、なぜか私に対して、上目遣いでお願いしてくるのだった。うるうるとさせながら―…。
小さくて可愛い生物のいる世界の人物ではないのだから、通じませんよぉ~。
それでも、彼らにスペーグラのことに関して、説明しておく必要があると感じたのは事実ですが―…。
(この二人とも―…。本当にかなり田舎の出身なのか怪しいですねぇ~。それでも、悪い人たちという感じはしません。
私の勘でしかないけど―…。)
当時の私も有輝とイルアーナさんがこの世界の出身ではないかとはいかなくても、かなり怪しんでいました。
まあ、悪い人たちではないということは理解できたので、親切丁寧にこのフォングラという世界のことに関して、質問があれば、ちゃんと教えますよ。
そして、私は、スペーグラについて説明するのだった。
詳しい説明は、また後でするので、概要でも理解していってください。
「スペーグラは、依頼を受けて、その依頼を達成する仕事全般のことを指しているんだが、特に、スペーグラ行という組織が入っている施設があるので、そこに貼ってある依頼を受けて、仕事をする人を指すんだ。
それに、スペーグラ行という組織が、スペーグラの教育、管理、依頼の斡旋を担っており、初心者、中級者、上級者にも優しい感じになっていると思うよ。
だから、有輝がスペーグラとなるとしても、変なところで苦労する可能性は低いと思うよ。」
そう、スペーグラ行は立派な組織であり、システム自体はかなりフォングラの中ではしっかりとしているほうだ。
だけど、それぞれの圧力に対して、決して強いというわけではなく、圧力の前に屈することも多かったりする。最近は特に―…。
そして、有輝やイルアーナさんのようなどこの誰だかわからないような人たちができる仕事は、スペーグラしかないのだ。
職人に関しては、昔堅気のやり方や身分保障が確実にされている者でなければ就職することができないし、職人の中でも重要な役職は血筋によって決まってしまっているのだ。
このフォングラという世界で良い職を得ることはかなり難しいことであり、そのことを知っているのかどうかはわからないが、職人の息子や娘たちが露頭に迷わないように役職を世襲にしているのだ。
それでも、技術面に関しては、職人としての技量が必要なので、身分保障されている者であれば、職人としての修行ができるようにしているのであるが―…。
まあ、国のお抱えになると、いろいろと胡散臭い柵というものに縛られることが多くなり、優秀な職人があまり良い待遇を得られないし、奴隷のような扱い、逃亡すれば装着された首輪が爆発なんて噂があるくらいだ。
商売に関しては、職人よりも緩いが、ある場所を仕切っている者たちにお金を払わないといけないんだよねぇ~。それも、場合によっては、高額になったりするし、払わないと酷い目に合わされたするとか―…。
私もそれに関しては見たことがあるけど、もう少し公平にした方が売り上げも良く出て、仕切っている人の収入も増加するし、信頼も獲得できるんだけどなぁ~。
その商売よりも一番緩いのがスペーグラで、誰でも登録することができるのだから―…。グラアルラ国では、「貧民の最終就職場所」とか言われていたりするんですよ。
だけど、スペーグラがいないと、都市や農村の外、道路も迂闊に通ることが難しかったりするんです。
有輝やイルアーナさんが出会った「ナメッキー」のようなモンスターと遭遇してしまうので―…。
「そうですか。」
「あれ、スペーグラになりたいのかと―…。」
有輝の素っ気ない反応に、この時の私は、有輝がスペーグラになりたいとかと思っていたのですが、違ったのでしょうか?
「スペーグラになりたいかはわからないのですが、他の職業についても―…。」
有輝の言葉に残念なお知らせをするとしましょう。
私の語りを聞いている人は、さっき言ったので、知っているでしょうが、もう一度復習のために聞きましょう。
確認大事。
「君とイルアーナさんの素性が分からないし、身分がどうかもわからない以上、スペーグラ以外に就ける職業はないと思うよ。
商人をするにしても、商品を持っていないと意味がないし、芸術やら芸能に関しては、そんな需要がないし、人もいないから、あまり―…。」
そう、芸術や芸能というものは、国や領主、有力者を相手にしないと生活のためのお金を稼ぐことができないので、元々のコネというものがないと無理だし、庶民にはそもそも需要がない。
というか、日頃の仕事が忙しく、そのような時間がそもそもないのだ。
フォングラの国々の税金は、ある国を除いて、生活するのがやっとという状態になるほどの税金の額にされているのだ。
いや、生活すらままならいほどの量になっている人々もいるほどだ。
フォングラという世界の有力者、貴族、国の中枢は欲深い奴らで、自らは努力をしたから国のトップになれたとか、貴族になれたとか、妄想も大概にしろよ、的なことを言っていたりする。
地位というものは、本人の功績というものもあろうが、お前らの地位は代々の先祖が頑張ったか、そのような地位になることができる運を持っていたかだけで、お前の功績など微塵もないのが事実だろうに―…。
口が悪くなってしまいました。
思い出しただけで、多くの有力者どもはクソとしか言いようがねぇ~。
さっさと、フォングラにも変革が起こってもらいたいものです。
「そうですか。」
有輝はさっきから、そうですかが多いですねぇ~。
(………俺らができる仕事はスペーグラだけというわけか。
ここにスペーグラの先輩がいると考えると、教えてもらうしかないな。スペーグラとしての知識や実践を―…。
スペーグラ行というものでもできるだろうが、実践という場では、今、話している人のアドバイスが重要なのは確か。)
有輝は心の中で思う。
有輝はすぐに、自分がこの世界、フォングラではどういう職にしか就けないのか理解したようだね。
その賢さは良いものだ。
さらに、イルアーナさんの方は―…。
「スペーグラね。冒険者と同じか。それにしか職に就けないのはあまり好きではないが、それでも、生きていくにはお金が必要。
この世は、金がすべてなのよ。
それにスペーグラの稼ぎはどれぐらいになりますか?」
イルアーナさんは、お金好きだよねぇ~。
本当、イルアーナさんの体は、お金で出ているのかもしれません。
実際には、そうじゃないでしょうけど―…。
「稼ぎですかぁ~。また、人それぞれという感じですけど。最高ランクの
だけど、数はかなり少ないですし、そのような人たちは、どこかの国に勝手に所属させられるような感じになります。」
そうなんですよぉ~。
スペーグラの稼ぎは人によって、まちまちだし、どれくらい稼いでいるかなんてあまり公表されたりしないのだよ。
私でも、スペーグラで稼いでいる時は、一応、人生が三回ぐらいあったとしても、贅沢な暮らしができるだけの稼ぎはありますが、それでもSS級ではありませんでしたし、それに、私は国家に所属する気も、国家のために使われる気もありませんでした。
フォングラにおける国は、大抵、最低な君主しかいませんし、私のところにろくな依頼は回ってこないと理解していますから―…。
それに、自分の生活ができ、少しだけ贅沢ができれば十分なんです。それ以上の収入は、余計なものだという面もあります。
それでも、それ以上に稼いでいるのは、別の目的のためですし、それに、慈善活動家に寄付もしたりしているんですよ、私―…。
金というものは回し続けるためにあるものであり、それは、お金を欲している貧しい人たちが、彼らの人生を貧乏から脱し、社会で成功するために、または、社会にとって素晴らしいことを、発展するためにしている人たちのために使わないと―…。
まあ、フォングラの国々の首脳部にはそれがわからないのですよ。自分のものをより増やすことにしか興味がないのだから―…。
たとえ、それが他者や自らの国の多くの国民の富を奪うことであったとしても―…。
あ~、ちなみに、おまけなんですが、世界でSS級は、十二の国に一人ずつしかいませんから―…。これ、世間で知られている情報なのですよ―…。フォングラにおいて―…。
そして―…。
「辿り着きましたよ、シャルーラに―…。」
私は、有輝とイルアーナさんをシャルーラへと案内することができました。
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