第8話

 さて、シャルーラに到着したのだから、その中へと案内をしないとね。

 ということで、私は、有輝とイルアーナさんにシャルーラの街中を案内するのだった。

 ちゃんと、城門の衛兵さんには、旅の人だと説明したし、有輝とイルアーナさんは自らの身分証を見せましたよ。

 あの身分証が後に、世界管理局によって造られたことを私は知りましたが―…。

 世界管理局の技術は侮れない。


 「シャルーラは、グラアルラ国にある中規模程度の町で、最果て方面における化け物たちの領域と接するために、彼らの侵略を防ぐための防衛基地でもあるんだ。」


 そう、シャルーラの南側は、化け物、ナメッキーのような生物がうじゃうじゃいる領域というものが存在し、そこでは人が住んでいないとされ、化け物たちは時々、人の領域への侵攻のための密偵ではないかと思われるかのようにやってきたりするんですよね。

 あんまり、群れを形成して来たというのは、ここ数十年ほどはないですね。

 まあ、その程度の状態なので、ここでは気にする必要もないことですし、いつかはあるのかな?


 「じゃあ、スペーグラ行、シャルーラ支部に入っていきましょう。」


 目の前にある、三階建ての建物の中に入っていく。

 シャルーラの中ではかなり大きな建物であることに間違いなく、シャルーラでも一つの名物となっている場所。

 国の首都にあるのよりは、小さいのは仕方ありませんが―…。

 そして、私、有輝、イルアーナさんがスペーグラ行シャルーラ支部の中へと入っていく。



 ◆◆◆



 シャルーラ支部の中。

 最初に見えるのは、大きなフロントと同時に、受付のための五か所ほどの窓口がある。

 有輝の住んでいる世界の小説、漫画、アニメなどの異世界を扱っている作品では、窓口の受付をしてくれる人は、若い女性で、受付嬢なんて呼んで、綺麗な人だったりするのが定番のようです。

 だけどね、フォングラのスペーグラ行の受付をする人が若い女性とは限らないんですよ。

 というか、有輝の住んでいる世界の小説、漫画、アニメで出てくる冒険者ギルドの受付嬢何て、どこのお酒をお姉さんに注いでもらえるお店か何かって思うんですよ。

 だって、そんな綺麗な女性がいるのなら、私だって、私だって―…、何回だって口説いていますよ。

 その作品に出てくる冒険者の主人公は何で、口説かないんですか? お前は本当に男か? って問いたくなるんですよ―…。

 本当に―…。私だったら、最初の一言に口説き文句を入れて、良い所で食事をして、宿屋で一夜―…、夢のような時間を、テクニックとともに提供しますのに~。キィ~。

 ………………えっ、そんな嫉妬はいらないから、物語を進めろ。そして、暴言をいろいろと吐いているので、謝罪をその前にしろと―…。

 一体、どこに暴言が!!

 ……………………………。



 ※分からせる必要があるので、少々お待ちください。



 【数分後】


 

 パシャパシャ。

 私は、いくつものカメラに囲まれていた。

 そして、私は壇上の上にいて、これからおこなわれるのは私が吐いてしまった暴言に対する謝罪会見だ。

 そう、カメラを構えている人と同じくらいの数の記者がいる。

 彼らは、私のこの謝罪会見を記事にするだろう。

 私という失敗を犯した者を祭り上げ、自らの稼ぎにして―…。

 マスコミとはそういう生き物だ。

 彼らの印象一つで、人々は簡単に、私の味方にもなれば、敵にもなりうるわけだ。

 人が思っている私の印象など、切り取られたものでしかなく、一部しか見えていない。

 だけど、私はここで、自らの味方を増やすために、誠意を示すのだ。

 世間の人々が大好きな展開になるように―…。


 〈私は数分前に、受付嬢をお酒が注ぐお店のお姉さんと同じだと言い、双方に大変に失礼なことを言ってしまい、かつ、受付嬢を口説かない主人公を男性でないという言葉を言ってしまったこと、誠に申し訳ございませんでした。〉


 ここで、私はカメラに向かって、頭を下げるのだった。

 このシーンを、カメラはパシャパシャと取る。

 こうやって、誠意あるような感じの謝罪をおこなうことで、世間から印象は悪くなることはないだろう。

 そして、私の謝罪会見と、その暴言を吐いてしまった経緯とその時の気持ちを話して、質問を受けるのだった。

 その質問は鋭いものであり、最近、政治に関してツッコメないことがあるせいか、容赦というものがなかった。まさに、第四の権力の犬のような所業だ。

 だけど、本当の意味で、第四の権力で、人々に取材して、調べた上での結論を述べる素晴らしい人たちもいることを私は知っている。

 だからこそ、この第四の権力の犬たちどもには言ってやりたいのだ。


 〈権力の犬に成り下がった奴らに、鋭い質問されてたまるか――――――――――〉


 その後、どうなったかは、言う必要もない。



 ◆◆◆



 さて、謝罪会見は済みましたので、話を進めましょう。

 ということで、スペーグラ行における受付をする人は、人当たりの良い人が多かったりします。

 なぜか?

 スペーグラという人々は、有輝のいる世界の冒険者とか言われる小説、漫画、アニメなどに出てくる作品の中のと同じように、荒れくれ者が多かったりするのですよ。

 まあ、割合が多いというので、全員がそういうわけではないんですけどね。その中には、かなりの理知的な人もいるので、そういう人は女性から人気があったりするんですよ。

 汗、大量にかきますからね―…。

 そういう人に不躾な態度をとると、日々の職務をこなすことができないので、スペーグラに憎まれにくい人が選ばれたりするのですよ。私もうろ覚えですが、ちゃんと正確に思い出しながら、さらに、世界管理局にあるスペーグラに関する本を読みながら言っていますので、安心してください。

 というわけで、スペーグラ行の受付を担当する人は、女性だけでなく、男性もいるということになるんですよ。

 後、重要なことなので言っておきますと、綺麗な女性が受付を担当すると、スペーグラの人たちが無理矢理口説いたり、襲ったりする可能性があるので、あまりさせたりしないんですよ。S級とか、SS級の特別専任だと違ったりしますし、王国の関係者だと…ね。

 理由は、ろくでもないことなので、聞かない方が良いですよ。

 まあ、S級、SS級に関しては、スペーグラの中でも優れているので、悪い人はそこまでいなかったりするんですが、受付をする女性の方が抱かれようと積極的になったりするんです。

 自らを襲おうとする最悪な男たちから守ってもらうために―…。

 さて、フォングラの受付に関する話はここまでにして、進めていきましょう。

 シャルーラにおけるスペーグラ行は、三階建ての建物であり、一階はさっき紹介したようにフロントと受付スペース、二階はスペーグラ行の職員の作業がおこなえる部屋や会議室など、三階はスペーグラ行の幹部の職務部屋と上級ランク者の受付専用部屋があったり、講習部屋があったり、スペーグラ行のトップの部屋もあるのです。

 ちなみに私は、三階の上級ランク者の受付専用部屋に入れるほどのランクは持っていますから―…。


 「すごく広いですね。」


 「ああ、そうと、君たちはスペーグラを知らないようだし、スペーグラの登録の仕方も勿論―…。」


 「わかりません。教えていただけると助かります。」


 有輝は広いという感想を漏らしながらも、私の言葉で、スペーグラのことも、スペーグラ行のこともわからないので、スペーグラ登録に関して教えて欲しいとお願いするのだった。


 「では、あそこに受付があるだろう。そこに、さっきシャルーラに入る時に見せた、身分証を見せるとすぐに、スペーグラ登録に必要なことをしてくれたりするよ。

 君たちが書かないといけないこともあるので、そこには注意して欲しい。」


 そう、スペーグラ登録は、フォングラの世界においては難しいことではない。

 スペーグラになるような人の中には、文字の読み書きができない人がいるので、その人たち向けの支援や講座もあり、ここで文字の読み書きを覚え、雑学を学び、教養を身に付ける人がいる。

 貴族の中のボンクラ息子に比べるのが烏滸がましいぐらいに、知っていたりする―…。まあ、そのような人は、自力でスペーグラランクを上へ上昇させていく能力に長けていたりするんですよぉ~。

 私のように―…。

 それに、有輝とイルアーナさんは、このフォングラにおける言葉は話せるようですが、それでも、フォングラの言葉を書くことができない以上、書くための講習は必要なのは確か。

 だけど、二人ならすぐに習得できると思います。

 理由は、有輝は現実世界での教育を受けているので、少しぐらい難しいことも理解できるであろうし、イルアーナさんに関しては世界管理局における学業成績は優秀の分類に入る方だと記録で確認しているので、物覚えは良い方であるのは間違いないでしょう。

 むしろ、フォングラの学者たちよりも知識を持っていたりするかもしれないし、フォングラだとオーバーテクノロジーの分野でも理解できたりするかもしれません。

 そして、二人は受付スペースに向かいましたね。


 「あの~、スペーグラ登録をしたいのですが―…。」


 二人が相手にしているのは、中年ぐらいの愛嬌のある女性のようだ。

 スペーグラ行の受付でも丁寧な受付をしてくれる人に当たったようですね。

 まあ、二人も出世していけば、新人のような見た目だけの子とかにも当たったりするようになりますからね。

 勿論、ろくな意味ではないし、私はそのようなことには騙されたりはしませんが―…。


 「ほお、二人でよろしいですか。」


 「はい。」


 と、受付の人に言われ、有輝は答える。

 有輝とイルアーナさんの二人であると―…。


 「では、身分証をお見せください。」


 そして、受付の人に言われると、有輝とイルアーナさんは、自らの身分証を受付の人に見せる。

 それを見た、受付の人は、すぐに二人の素性を理解し、スペーグラ登録へと申請の方へ移行していくのだった。

 仮に、ここで、身分証を持っていない場合は、スペーグラ行が身分証を発行してくれるのだ。

 そこに、記入するか、受付の人の口頭で言う事になる。

 その項目が多いのであるが、それでも五分ほどで終了するのだから、意外に時間というものはかからない。

 だけど、スペーグラ登録になると、少しだけかかる時間も長くなるのだよ。

 それは、これからの会話で見ていくことにしましょう。


 「うん、達観有輝さんとイルアーナ=レイスリさんですね。達観有輝さんは和奈倉国、イルアーナ=レイスリさんはマルワーラ国の出身ですね。

 それぞれ身分は、有輝さんが下級魔法武士、イルアーナさんが格闘家、ということですね。

 以上で、よろしいでしょうか。」


 そして、二人の出身国と身分を確認する。

 この身分というものが重要ではないが、スペーグラ以外の職業に就く場合は、確実に必要になってくるのだ。

 身分によって優遇を受けられたり、その職業に就けなかったりするのだ。フォングラでは、職業選択の自由が制限されていたりするということです。

 なので、その確認はしておかないといけない。


 「はい。」


 「はい。」


 と、有輝、イルアーナさんの順で返事をする。

 間違いはなかった。


 「では、スペーグラに関する説明を開始させていただきます。」


 ここからですよぉ~。長いのは―…。


 「スペーグラ…。この役職は、このフォングラという世界が創造神ファナティナによって創られたことは知っていますね。

 その創造神が数々の生物を想像し、最後に人を生み出しました。

 人の中で特に優れた者を勇者と呼び、彼にはファナティナが創った世界のあらゆる場所を冒険するように言いました。

 勇者は世界中を、モンスターが大量に住まう場所も冒険し、この世界に人が住むことができる場所をもたらしたのです。

 その勇者、スペーグラの名に因んで、冒険をしたり、依頼を受けて仕事をこなす者をスペーグラと呼ぶようになりました。

 ゆえに、スペーグラは誰もが敬意を払うようになったのです。

 そして、その勇者スペーグラと同じ職業に就くことになる、達観有輝さん、イルアーナ=レイスリさん、そのスペーグラの名に恥じぬように仕事に励んでください。

 これがスペーグラの名前の由来と始まりに関してです。

 次に、スペーグラはどういう仕事かということに関する説明に移ります。

 スペーグラは、さっきも言いましたが、依頼を受けて仕事をこなす者です。その依頼は千差万別、家事手伝いからベビーシッター、農作業の手伝い、荷運びの手伝いなどのような街の中でおこなわれるものから、野草採集、狩猟、モンスター対峙などの街の外での依頼というものもあります。

 専門的なものもしくは難易度が高ければ高いほど、危険度が高いほどスペーグラ行のスペーグラ行の依頼ランクは上昇し、受けられるのもスペーグラランクが高い者が対象となります。

 そして、達観有輝さん、イルアーナ=レイスリさん、お二人は最初、一番下のランク、ランクFから開始してもらいます。

 ランクの上昇に関しては、簡単です。依頼をおこない、依頼完了の受諾を我々に提出してもらえば、それを確認し、ポイントにしていきます。

 そのポイントをある程度満たした場合、ランクが上がります。

 さらに、一定の技量を示せる場で示した場合も、ランクが上昇します。ランクが上昇すると、難しい依頼も受けられるようになり、それとともに報酬も増加します。

 ランクを上昇させるように頑張ってください。

 最後に、登録に当たって、重要なものをお渡しします。」


 そして、有輝とイルアーナさんに何かが渡されるのだった。

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