第3話

 「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 五月蠅いですねぇ~。

 イルアーナさん、フォングラのサポート役に任命された時は、そのようなことを言っているのですか。

 そんなに嫌だったのですか。

 本当、この人の気持ちは正直なのだけど、猫を被るのも一人前ですからねぇ~。

 ふん、有輝に対して、傲慢な態度をとるからですよ!!

 ざまぁ~みろ~。

 ということで、イルアーナさんは有輝と部長さんのいる部屋の中に五月蠅く響き渡るほどの叫び声を出し、確実に、隣の部屋に響いてしまっていることであろう。

 後に聞いた話ですと、その時、何人かの隣の部屋にいて仕事をしていた世界管理局の職員が有輝のいる部屋の方に向いたそうです。

 そして、有輝も部長さんも耳を塞いでいるのだった。

 声が止むと、部長さんは不機嫌そうな表情をするのだった。怖い表情してますねぇ~。


 「部長!! ふざけないでください!!! 私がフォングラにこんな奴のサポート役なんて!!!! 

 それに、私は、ここでの職務がたくさん残っていて、それを今すぐにでも片付けないといけないのです!!!

 それに、達観有輝のサポート役なら使い魔の方が相当に便利ですし、私は戦闘向きでも誰かのサポート向きでもないし、達観有輝の足を引っ張ってしまいます。

 そんなことは良くないですし、関数シュミレーションでも私ではなく、使い魔の方が―…。」


 いろいろ、自らの駄目な点を挙げて、いかに自分が有輝のサポート役に相応しくないか言い始めてますよ、この人!!

 理由は、よほど、フォングラに行きたくはないのですね。よほど、フォングラが嫌いなのですか?

 だけど、言わせてもらいますよ。フォングラは最低の世界かもしれませんが、それでも、良い人たちや良いものがあったりするんですよ!!

 謙虚に、頑張って、自分が取り組んでいるものを少しでも良い結果にしようとして―…。

 これ以上、愚痴になってしまうので、ここでやめておきます。

 だけどね、イルアーナさん―…、残念お知らせというものは、逆らったとしても来る時来るもんだから―…。


 「関数シュミレーションがそう弾き出している。それに、イルアーナ、お前が達観有輝君に使い魔を勧めて、フォングラに一人で彷徨わせようとしているのはわかっている。

 使い魔は優秀だが、人の言葉を喋られるのはこの本の中に一切おらず、意思疎通はかなり難しいものばかりだ。

 そういうのが安くて済むからな~。

 本当に!! フォングラという世界の未来がかかっているのだ!!! 真剣にやって欲しいのだよ!!!

 それに、人事部長およびトップから承認された判子入りの文書がちゃんとある。辞令だ。

 ということで、イルアーナには頑張ってもらう。」


 「そんな――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」


 イルアーナさんは叫ぶのだった。

 叫びたいけど、ちゃんとお仕事はしてもらいますよ。

 それに、イルアーナさんにとっては不幸というわけではないのだよ。

 人生なんて、どうやって良い事になるのかは誰も本当の意味ではわからないのだから―…。

 それに、部長さんの言葉を聞きながら、顔面蒼白していったしね。

 有輝に伝えていなかったこと、有輝にとってデメリットになることを部長さんに言われ、冷や汗を大量にかいていてもおかしくはないねぇ~。実際に、かいているし―…。

 そして、有輝はイルアーナさんという人をジトーとした感じの目で見てますねぇ~。


 (ほお~、こいつは俺を騙しているのか。まあ、この世界管理局の名前自体おかしなものなのは事実だろうが―…。

 そして、イルアーナ、このクソ女がフォングラの案内役かよ。最悪だな。

 こういうのは、優しい支えてくれる女性の方が俺個人としては嬉しいかな~。)


 有輝―…、そういうことは思ってはいけませんよぉ~。

 それに、一歩間違えると女性を一括りにしかねません。個性というものが男性の中にも存在するように、女性にも存在するのです。

 そういうところを学習して、人としての器量を大きくしていってくださ~い。

 まあ、私が語り手の側で言ったとしても、何も有輝に聞こえるわけではないんですけどねぇ~。

 見ているに過ぎないのだから、私は―…。

 そして、イルアーナさんは泣き始めるのだった。


 「うえっ………うっ……スッ………………。」


 泣き始めるイルアーナさんに有輝も部長さんも呆れるのだった。

 泣けば男性の気持ちを自分の望む方向に向けられると思っていたとしても、無駄だ。結局、男性からとってみれば、面倒くさいとしか思えないので、返って、良い印象を持たれることはない。

 イルアーナさんにそのようなことの知識というのは、………ないですね。


 「いくら泣こうが、イルアーナ、お前のフォングラ行きは取り消すことはできない。関数シュミレーションで良き結果を出し、フォングラの滅亡を救うためには、イルアーナのフォングラでの有輝へのサポートが重要になる。

 諦めろ。」


 そう、諦めるしかないんですよ、イルアーナさん。

 大人しく、フォングラで有輝のサポート役に徹するのです。

 私、ここで神々しく登場して、神の暗示のようにすれば良いのでしょうか。

 まあ、そういうことはできませんけどね。

 それに、やる気もありませんし―…。

 だって、そんなことをしなくても、事態を冷静に見たり、考えたりすることができるのであれば、有輝のサポート役というのは名誉なことだし、フォングラを救った後は、世界管理局でも一目置かれることは間違いないのだから―…。

 フォングラの消滅は、世界管理局の上層部も大分、危機感をもっているのだから―…。

 気づけ~、念を送ってみる。

 念なんて届くことはないんですけど―…。


 (…………イルアーナという奴から変更されることはないだろうな。

 それに―…、世界管理局の奴らが騙しているのなら、こいつを人質にしても良いのだからな。

 俺としては、いかに動くべきかの情報だな。フォングラに行ったとしても、生き残れば何がしかわかるかもしれない。)


 有輝は疑り深いよ。

 ゆえに、物事の本質というものを知ることもできるのだろうねぇ~。

 それでも、信じることも同時に大切にして欲しいなぁ~。


 「さて、泣いているイルアーナに構っている暇はない。それに、これは餞別だ。」


 そして、部長からイルアーナの元に投げられたのは、スマホだった―…。

 いや、投げて地面に落ちたら、画面が割れてしまうよぉ~。

 でも、そんなことはないのだ。

 部長さんは、ちゃんと画面が割れたり、壊れないようにちゃんと、フォングラで使われている魔法で地面に接触する段階での衝撃を吸収させている。

 すげぇ~。


 「これは、通信機器の「万能くん」だ。こいつは所有者が確定していて、所有者が破壊しない限り、壊れないようになっているが、今回は、まだ所有者を確定していないので、投げると壊れてしまう。

 そして、有輝―…。これは、君の世界におけるスマートフォンと同じ形をしている。その方が、有輝が使う時にもわかりやすいだろう。機能もやり方、スマホと同じようにしている。

 ……イルアーナ、「万能くん」を肘を置きなさい。」


 イルアーナさんが泣きながらも、上司の命令で、睨んだ表情をしながらも、「万能くん」に肘を置くのだった。

 そして―…。


 『登録いたしました。所有者は、イルアーナ=レイスリ。』


 「万能くん」から音声が流れ、所有者がイルアーナさんになるのだった。

 イルアーナさ~ん、後はフォングラに送られるだけですよぉ~。


 「登録されたようだ。では、達観有輝君、イルアーナ=レイスリ、双方をフォングラへと送ろう。」


 そう、部長さんが言うと、有輝とイルアーナのいる場所に魔法陣が出現する。


 「有輝君、頼む。」


 と、部長さんはちゃんと頭を下げて、有輝にフォングラを救ってくれとお願いをするのだった。


 「わかった。」


 (本当かどうかはしっかりと調べていく必要があるし、違和感があれば、そこから―…。)


 心の中では疑っているようですねぇ~。

 私にはバレバレですよぉ~、有輝~。

 それでも、有輝、君は信じるよ―…。世界管理局という存在も、フォングラの存在も、フォングラを滅ぼうとしているものをも―…。

 で、有輝が言った後に、すぐに、イルアーナが魔法陣から脱出しようとする。

 よっぽど、フォングラに行きたくはないようだ。


 「部長、お願いします~。私はフォングラなんか行きたくありませ~ん。

 私、フォングラに行かないためなら、部長の愛人でも、何でもやりますから~。」


 本当に、フォングラに行きたくないようだ。

 必死に抵抗しているし、涙目になっているし、可哀想だと思うけど、今までの態度から好感持てないんですよねぇ~。

 同情できませんし―…。


 「私は愛人を欲しない。私には、世界で愛すべき一番の人がいる。だから、彼女と彼女の子をたっぷりと愛する。

 お前のような、俗物はいらん。

 有輝をしっかりとサポートするのだぞ。

 フォングラの崩壊を防げば、世界管理局のお偉方はイルアーナのことをかなり良い評価をするかもしれない。」


 あ~、これは決定打だ――――――――――――――――――――――――。

 スポーツの実況みたいに叫んでみたよ。

 そんなことはどうでもいいから、進めろ、と―…。

 少しぐらい、セリフ以外のところで遊んでも良いじゃないですか?

 ただの語り手に徹するよりも、楽しい話をする語り手になりたいのですよ。OK?

 さて、イルアーナさんにとっては、決定打という感じになってしまいましたねぇ~。

 イルアーナさん、こういう出世とか評価されて地位が上昇するのが好きな俗物なのですよぉ~。

 まあ、地位が上になればなるほど、権限が大きくなり、できることも増えるが、それと同時に、権限を行使したことによる影響に対して責任を負わされるし、他との関係にも注意しないといけなくなるので、行動が束縛されていくのだ。

 そんなの関係ないとか思える人もいるにはいるが―…。それはほんの一部の賢人か大馬鹿の愚か者かのどちらかであろう。

 そして、イルアーナさんの答えは―…、決まっています。


 「頑張ってきます。確実に、出世させてくださいよ!!」


 「完全に約束できるかまでは保障しないが、上には掛け合っておこう。」


 と、部長さんが言っている間に、有輝とイルアーナはフォングラへと転送されるのだった。

 これから、彼らの壮大な冒険が始まるんだよ。

 そう、フォングラという世界を救う物語が―…。

 語りが長いって―…。そういうことはわかっていても心の中で思って終わるのが良いのですよ。

 だけど、その前に残った部長さんを少しだけ見てからにしましょう。


 (達観有輝―…。君がフォングラという世界を救うキーマンであるのは確かだ。

 だけど、だけではフォングラを崩壊から救う事はできない。

 フォングラという世界は、今、欲という人に元来備わっているより良くなりたいという意思が暴走してしまっているのだ。

 自分さえ良ければ良い。そんな感じでね。

 そして、それとの戦いは簡単にはいかないだろう。

 だからこそ、サポート役にイルアーナを、あの子は面倒くさがりであるが、いろいろと器用にこなすし、口先は私のようなイルアーナという人間を知っている者には通じないが、初対面なら通じるだろう。

 最後に、もうしばらくの時が経てば、もう一人、達観有輝の知っている人物をフォングラに投入しよう。

 達観有輝ともう一人、その二人が出会う時、フォングラを崩壊に導く勢力との本格的な戦いとなるだろう。

 フォングラを崩壊に導く勢力というのは、彼らにとっては違うというだろう。自らの欲に正直なだけなのだから―…。崩壊へと導いていることに気づきもせずに…か。

 この世界の最後にある木を簡単に切ってしまうぐらいのことができるし、そのような状態に追い詰めることができるのだろう。

 さて、近々、我々の世界管理局に新たな職員が来ることになっている。

 その人物を待つことにしよう。)


 そして、部長さんは、静かに部屋を去り、いつも通り、職務へと向かって行くのだった。

 イルアーナさんの分は、すでに、仕事の仕分けをし終えており、業務がなされるのであった。

 さて、フォングラでの有輝とイルアーナさんの物語でも始めるとしましょう。

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