第4話―—―「どうした、やつれたか?」
部長を正式に十月でクビにされてしまった僕は、そこから途端に体調不調になることが多くなった。主に辛かったのは部活の時だったが、それも段々と授業中にも影響された。僕は段々と、日常生活もしにくくなってしまった。
主に辛かったのは、お腹が痛くなることだった。それまで大丈夫だった牛乳や紅茶、チョコレート、酸っぱいもの、辛いもの、その他あまり慣れていないものは、全てダメになってしまい、どんどん栄養失調になった。
僕は、段々と部活に行かなくなった。それは、部長として頑張っていた時と比べ休むことに対して申し訳なさが少なくなったり重荷がなくなったりした、という理由もそうだが、体調不良も原因としてあった。
忘れられないのが、とある日の移動授業で、廊下を友人と歩いている時に、顧問の先生と会った時だ。
それまで、あまり私のことを心配して支えることがそんなになかったその先生が、私を見るなり目を丸くして言った。
「どうした、体重減ったか?やつれたか?」
僕は当時、急激に食欲がなくなったことで体重が減っていた。「いやぁ、まぁ、そうですね。」と、その時は授業のことを気にして小走りで会話を終えて授業に向かってしまったが、「やつれたか」というその言葉は印象的で驚いてしまった。僕は初めて、「やつれた」という言葉を掛けられた。
僕はそこから何度か、早退したり休んだりクリニックに行き回復に向かおうとしたりと、かなり辛い日々を過ごした。あまりその期間の記憶はない。今思えばかなり学校生活を頑張っていたと思う。
一度だけ、とても嬉しいことがあった。午前授業が終わり、とある用事で職員室を訪れた時だった。その時はたまたま担任の先生がおらず、僕はそのまま職員室を後にして、一人で帰宅しようとしていた。
「—―—!」
そこで、僕は自分の名前を後ろで呼ばれた。振り返ると、そこにいたのは、僕にクビだと言った先生ではない、もう一人の顧問の先生だった。
「最近、部活に来ていないから心配していたんだ。」
顧問の先生は、職員室近くにある、空いた部屋に着いてから言った。
僕は、この時も心が空いたままでの状態になっており、部活にも体調不良で行かない日が多くあった。それゆえに、心配してくれたと言われても、僕は心を少し閉ざして俯いていた。
「・・・・部長のことは、とても申し訳なかった。」
僕は、次に聞こえたその言葉で顔を挙げ、初めてその先生の顔をハッキリと見た。
「あれは、顧問の先生複数人で決めたことだ。もしそのことで辛くなっているのなら、それは顧問全員の責任だ。」
「もう、大丈夫ですから・・・・。」
僕は、そう言いつつも、次の言葉を言う前に泣いてしまった。どうしても辛くてたまらない日々を、助けてくれる先生が現れたのかもしれないと気づき、次の瞬間には、僕の抑えていた全てを、その先生に話していた。
涙が枯れ、それでも泣き続け、話し続けた僕は、ふと自分が感じていた重荷が少しばかり楽になったことに気づいた。時刻も数十分は経過しており、そろそろ帰宅しなければいけない時間だった。
「そんなに辛かったのか。何も分からず、すまない。話してくれてありがとう。」
僕の全ての話を聞いた先生は、最後に大きく頷いて言った。「また困ったことがあったらいつでも相談に乗るから、しっかり頼れよ。」
この瞬間、僕にはその先生が自分の最大の味方になってくれていると感じた。
「あ、この話したことは内緒な? 実は、部員に何かを話すときは決まって、事前に話し合いをするようになっているんだけど、ずっと話したいと思っていた時に会えたから、今日は思わず声をかけてしまったんだよ。」
僕は思わず笑ってしまった。そして、少しだけ特別に感じて声をかけてくれたその先生に、深く感謝した。お陰で、少し前を向けるようになったと思う。
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