少し僕の過去について話そう。

第2話―—―9月生まれ、天秤座、元気な人。


 僕は、色んな意味で幸福な時間と不幸な時間を繰り返し過ごしてきた。


 それが、今回の「自律神経失調症」を引き起こしたとは確定できない。もし、今までも何度か発症していたとしたら、今回みたいにクリニックに行き検査をし、診断をもらいに行動することはしなかったと思う。今回も、僕は今まで通りに全てを乗り越え、前向きに日々を送ろうと、楽しく生きようと、充実した日々にしようとしていたはずだ。




 僕は、とある日の九月末、台風直撃の日に生まれた。天秤座、O型、そして、元気な人間が誕生したのだ。

 あまり親から、子どもの時の大変だった話は聞いたことがない。自画自賛するつもりはあまりないが、僕は比較的「いい子」だったと親から言われた。また、体調に関しても幼児が経験する病気や、普段の風邪以外は健康的だったと言われた。僕は、「いい子」だったらしい。


 僕は、確かに元気「だった」。いや、過去形にすることはないかもしれないが、今の体調と比べると小さい頃は特に元気で、過去形にして言わざるをえないぐらいだと思う。


 僕は、メンタルも「強かった」。それは、周りも認めるほどの強さだった。常に前向きに考え、ポジティブにし、失敗したことでも経験として自分の中で落ち着かせることができるほど、メンタルも鍛えられていた。そして、それもまた今となって過去形になっていて、今の僕はメンタルが誰よりも弱くなってしまっていると思う。




 だから、僕は普通の人が辛いと感じたり、辛いを思ったりしそうな出来事も、ほとんどは前向きな姿勢で受容し、乗り越えるようにしてきた。


 小学生の時、数年間行われたいじめも。

 色々と言われた悪口・陰口も。

 親からの音楽に関するスパルタ教育も。

 先生からの鋭い言葉・服を引っ張られる・叩かれる出来事も。

 中学生の時、何度も一人ぼっちになった日々も。

 部活での集団いじめ・隠し事・後輩から怒られる・悪口を言われたことも。

 高校生の時、生徒会長選挙落選によっていづらくなったことも。

 そこから一年後、突然部活の部長をクビになったことも。

 部活で、誰もが自分と深く関わらなくなったことも。

 志望校が急に変更になり、少し焦ったことも。

 知り合いのいない場所で、大学生としての日々を過ごして不安なことも。

 一人の時間と、家族の時間のバランスのとり方が分からないことも。

 大学での絶妙な距離感で行われる友人関係も。

 不安になる履修登録に関しても。

 サークルでの次から次へと来る問題ごとも。


 ―—―全て、僕は乗り越えて、乗り越えて、乗り越えて、今後も元気で前向きに過ごすことのできる人間だと信じていた。




 そんな、九月生まれ、天秤座、元気な僕が変わったのは、高校二年生の夏―—―突然部長をクビになった日のことだった。

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