自律神経失調症の僕。
キコリ
僕の物語の始まりについて。
第1話―—―診断。
自律神経失調症ですね。
―—―その言葉をいきなり言われて「そうなんですね。」と納得してしまう人間は、今の所、世界に僕だけかもしれない。
僕は、その漢字が多い症状の名前を聞いて、一番初めに「頑張らなくていいのか。」という、安堵にも、逃げにも近い思いが浮かんだ。診断がついた時に安心する、というのは、こういうことを言うのかもしれないと、僕は初めて感じた。
僕の目の前には、今日担当してくださっているお医者さんがいて、僕の顔をちらりと見ながら、説明を続ける。
「えー、今回は、動悸の激しさや立ちくらみの症状で来院されたと思うのですが、これには二つ考えられることがあります。一つ目は貧血です。今回は血液検査を行い、また結果が出た際に、今後のことを考えようと思っています。もう一つは、自律神経が乱れていることです。」
スラスラと、何か教科書を読むように話すと、お医者さんは僕の顔をしっかりと見てきた。「最近、寝つきが悪いことや、食欲がないことなどはありますか?」
「確かに、寝るまでの時間は長くなったと思います。」
僕は、嘘偽りなく正直にそう言った。寝つきに関しても困っているし、食に関しても明らかに減った。
お医者さんは、僕の言葉に大きく頷いた。
「今回の動悸の症状や、寝つきの悪さなどは、自律神経の乱れが起こしている・・・・自律神経失調症が考えられます。」
なるほど、そういうことか。僕はまた納得し、首を縦に曲げた。
「神経には、日中活動をするための交感神経と、休んだりリラックスしたりする時に切り替わる副交感神経があります。それが、生活習慣によって乱れたり、日々のストレスによって上手く切り替わらない時に、不調を起こしやすくなります。」
お医者さんは、医療に関してど素人の僕にも分かるほど、丁寧に説明してくれた。
―—―なるほど、僕は自律神経失調症らしいな。
僕はそこから、お医者さんから「基本的な生活を心がける。食事・睡眠・運動はなるべく意識する。しっかり休む。」ことを言われ、最後に血液検査を行い、その日の診察が終わった。
一緒に来てくれた父は、「俺も見ていて分かる。」と、僕にそう言った。父は医療系の人で、ある程度の知識はある。
僕は、「なんとか回復するよ。」と呟き、そのまま帰りの車に乗った。
そんな、8月のある日常だった。
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