第16話 私と日常のお兄ちゃん

 「むぅ…」


 お兄ちゃんと旅の話をしてから2日経った今日。なんだかお兄ちゃんとカナリアさんが、怪しい。


 昨日、私の姿を見て、こそこそと私に隠れて2人でどこかに行くのを見かけた。


 いや、私も師匠と魔法の修業をお兄ちゃん隠れてやっていたのだけど。でも、私を見るだけで逃げるようにしていたのは明らかにおかしい。


 そこで今日の私は、尾行して2人が何をしているのか確かめることにしました。


 と、いうわけで現在、朝食を食べながらお兄ちゃんとカタリナさんをを睨み付けています。


「じー…」

「なんだリリ、昨日は眠れなかったのか?」

「別にそういうんじゃないですー」


 そう、これは絶対に目を離さないぞという意思表明です。


「リリちゃん。あんまりそういう顔してると、可愛い顔が台無しよ?」

「えっ…可愛い…えへへ…」


 カナリアさんにそう言われると顔がにやける。私の意思表明の何と脆いことでしょう。


「本当にコロコロ表情が変わるな…」

「えへへ…えへへ…」


 お兄ちゃんの呆れた表情に私は目もくれず。朝食の時間は過ぎていった。




そんなわけで、恒例のカナリアさんのお話を村の皆さんと聞いた後、私はコソコソと物陰からお兄ちゃんを尾行し始めました。


どうやらカナリアさんとは別行動をしている模様。まぁ、ずっと付けていれば、いつか合流する事でしょう。

 

そんな事を思っていると、どうやらお兄ちゃんに動きがあった見たい。


「おばさん、こんにちは」

「あらタカサ君、どうしたんだい珍しい」


どうやら話しているのは、良く私たちにお菓子を作ってくれるサユおばさんのようです。


普段はお花をモチーフにしたアクセサリーを作って、町に売り出してる人。


そんな人にお兄ちゃんがなんの用でしょう。まさか、アクセサリーを作ってもらいたいだなんてそんな事じゃ無いだろうし。


私は、もっと近くで話を聞こうと、物陰から体を出そうとする。


「…誰もいないよな?」


そのタイミングで辺りをキョロキョロと見回すお兄ちゃん。私は慌ててさっきまでいた壁の後ろへと戻る。


「危なかった…急に振り向くのやめてよね…」


早くなった心臓を落ち着かせて、私はもう一度2人がいた方をのぞき込む。


しかし、そんなに時間が経っていないにも関わらず、2人の姿は既に無かった。


「いない…どこ行ったんだろ」


辺りを見回すと、サユおばさんの家が近くにあった。


もしかして家の中に入ったのでは?そう思った私は家の方へと駆け寄り、窓から中を覗く。


そこではお兄ちゃんとサユおばさんがおしゃれなデーブルを囲んで話していた。


テーブルの上には花を模したブローチや高台の花をそのまま使った髪飾りなどの可愛らしいアクセサリーが並んでいる。


話している内容は聞こえないが、その様子から品定めしているようにも見える。


「うーん…見ていても何してるかわかんないな…」


 お兄ちゃんがアクセサリーを欲しがる理由なんてあるとは思えない。


 普段だってカッコいいものが好みだし、私が新しい服を見せた時も淡泊な反応だったし。


「だからと言って、このまま見ていてもなー…」


 私は窓の下に座り込む。しょうがないのでお兄ちゃんが出てくるまでこのまま待つことにする。


 その間、特にすることも無いので、お兄ちゃんの様子がおかしい原因を考えることにしました。


「そういえば、一昨日位から既に様子がおかしかったような…」


 一昨日、つまりはお兄ちゃんと旅に出る約束をした日。あの後家に帰ってから夕飯の時間になってから2人はそわそわしだした気がする。


 最初は旅に早く出たいからぞの準備をするのが楽しみなのかなー。と、思っていた。


 でもそうだとしたら女性もののアクセサリーなんて必要ないだろうし。他にやるべきことがあると思う。


「ダメだ、頭で考えても分からないや。」


 そう呟いたタイミングで、お兄ちゃんが家の外から出てきた。その左手には、小さな紙袋が握られている。


「じゃあ、おばさんありがとう!」

「別にいいんだよ。こんな用事ならいつでもおいで?」

「はい!」


 元気の良い返事をするお兄ちゃん。持っている紙袋の大きさから、あそこにあったアクセサリーをもらったのだと思う。


 アクセサリー…何に使うんだろう。正直お兄ちゃんには似合わない。私には似合うだろうけど。


 そんなもの言いたげな目をしているけど、お兄ちゃんは気づかない。そのままどこかに歩いていく。


「あわわわ、見ている場合じゃないや。早く追いかけなくちゃ」


 私は立ち上がって、心なしか少しうれしそうなお兄ちゃんの後を追いかける。

 


 

 


 





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