第108話おおぬさと 名にこそ立てれ 流れても

かえし

なりひらの朝臣


おおぬさと 名にこそ立てれ 流れても つひによるせは ありてふものを

                          (恋歌四707)


私が引く手あまたの大幣などと噂が立っているようですが、その川に流された大幣も、最後には必ず寄る瀬があるということを、おわかりください。


前の歌(大幣の 引くてあまたに なりぬれば おもへどえこそ たのまざりけれ)への返し。


あちこちの女性に情けをかけることはありますが、果ては(最後には)(あなたという)瀬に寄り添いますよ、それをわかって欲しい、と詠む。


身勝手な男の歌と思うかもしれない。

ただ、業平の時代は、一夫多妻の時代。

余程魅力が無ければ、妻の一人となっていても、寄ってもらえることもなかったのも現実だった。

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