第107話大幣の 引く手あまたに なりぬれば

ある女の、なりひらの朝臣を所定めずありきすと思ひて、詠みてつかはしける



大幣の 引く手あまたに なりぬれば 思へどへこそ 頼まざりけれ

                          (恋歌四706)

※大幣の:「引く手あまた」にかかる枕詞。「大幣」は」大祓の儀式の時に、陰陽師が立てる大きな榊へ、多くの幣を垂らしたもの。祓いの祝詞が終了すると、人々はその幣を引き、身を拭う。(身につもった罪、穢れを幣に移して、清浄になる)


ある女性が、業平朝臣が、所定めず(様々な)女性の家に行って(愛を語らっている)と察して、詠んで送った歌。


引く手あまたになってしまったのですね、そんなご様子ですから、私がどれほどあなたのことを思っていても、あてにはならないということなのですね。

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