第90話夢路には あしもやすめず かよへども

題知らず


小野小町


夢路には あしもやすめず かよへども うつつにひとめ 見しごとはあらず

                           (恋歌三659)



夢の中の逢瀬の通い路では、足を休めることはしません。

ただひたすらに逢いに通いますが、いくら夢でお逢いできても、現実に一目お逢いした時にはかないません。


実態のない夢で何度も逢っても、現実の一回の逢瀬が勝る。

夜離れが続く男君への哀願のような歌。


男は、関係を結ぶまでは熱心。

しかし、一度関係を結んでしまうと、しだいに冷淡になり、夜離れが多くなったのだろう。

通い婚の時代、待つだけの女の苦しさを詠む歌である。




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