第89話限りなき 思ひのままに よるも来む

題知らず


小野小町


限りなき 思ひのままに よるも来む 夢路をさへに 人はとがめじ

                       (恋歌三657)


(日々)限りなく様々な思いを抱えながらも、夜も来るのですけれど、せめて夢の中の通い路まで、世間がとがめることなどはありえないでしょうから。


日々、限りなく、恋する人を思いながら(今宵は来てくれるのか、また、来てくれないのか、では、いつになったら来てくれるのか)、そんな思いを抱えながらも、夜はお決まりで、来てしまう。

でもせめて、私の夢の中だけで、あの人のところに通う路があったとしても、世間にはとがめられることもない、と思う。


元歌

人の見て 言とがめせぬ 夢にわれ 今宵至らむ 屋戸さすなゆめ

                   (万葉集巻12-2912)

人の見て 言とがめせぬ 夢にだに やまず見えこそ 我が恋やまずむ

                   (万葉集巻13-2958)




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